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特別編3:異世界

帰郷

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あとで聞いた事だけど、私達が行方不明になっている間に虚空の覇者ヴォイドマスターさん達が気を利かせてくれて、地球で待っている美咲お姉さん達に事情を説明しに行かせてくれていたらしい。
一通り片付いたら報告に行かなくちゃね。

宴会も終わり、それぞれを送り返して私達もアスティアに帰って次の日、虚空の覇者ヴォイドマスターさんにあるものを届けにやって来ていた。

「これを使えば良いのか?」
「はい。それで分身が作れます」

私が用意したのは改造したクリエイトアバターリングだ。
これは分身を作り出して指示を出せるものだけど、その分身に自分が入りこんで動かせる様にしておいた。

分身の作成についても自分の好みで作り替えられるので普通の人を作成してもらって、その身体で一緒に地球に行こうという事だ。

「なるほど、これは面白いな」
「私も作りたい」

そう言い出したのはほのかさん。

「ほのかさんはそのままでもいいですよ?」
「うん。でも何となく作ってみたくて。ダメかな?」
「いいですよ」

余分に幾つか作っておいたのでそれを渡す。

因みに本体の方は眠っているのと同じ様な状況になるので、虚空宮ヴォイドパレスでアバターに入れば大丈夫。

虚空の覇者ヴォイドマスターさんはどこにでも居そうな40代くらいの男の人に。ほのかさんは…

「何でそうなった…?」
「面白そうだったから」

ソラちゃんの質問に答えるほのかさんが作ったアバター。
目の前には私がいた。

「いやいやいや、私が2人いたらおかしいじゃないですか」
「じゃあミナちゃんは私そっくりのアバターに入ると良いよ」

ニコリと笑いながら私…じゃない、ほのかさん。
あ、私の顔なら笑うんだ?

「ややこしくなるからやめなさい」

リオさんに止められた。

「なるほど。ミナにソックリなアバターを作って…ひらめいた!」
「悪戯はダメですよ」

何をひらめいたのかなソラちゃんは。
ユキさんに嗜められているけど、まあ変な悪戯じゃなければ多少はいいよ。

ほのかさんのアバターは作り直して14、5歳の女の子になっていた。

てっきり大人の女性を作ってくるのかと思ったけど。

「これならいいよねー?」
「はい。完璧です」

今回は私、ユキさん、リオさん、ソラちゃん、テュケ君、カゼインさん改めユートさんが虚空の覇者ヴォイドマスターさんとほのかさんに付き添う事に。あとはどうしても行きたいと言っていたレフィさん、アニエスさん、アンネさん。念の為ついて行くと言って来てくれたのはマティアスさんとセラさん。

「チキュウという所に行くのは初めてだ。どんな所なんだい?」

マティアスさんが聞いてきたので答える。

「ええと、私達の国は日本という所で、基本的には武器の所持が禁止されている安全な国です」
「つまり剣を持ってはいけないんだね」
「はい。置いていってもらうかインベントリやアイテムボックスにしまっておいてもらう必要があります」
「俺達はそういう能力を持っていないから置いていくよ。何かあっても剣がなくても戦えるしね」

マティアスさんはアーネスト流と呼ばれる流派の最高師範らしく、大体の武器も格闘術は使えるらしい。

若く見えるけど実は結構年配の人なのかな?

因みにセラさんも魔法使いだけど剣術を使えるらしい。

そっちの世界は魔法使いも物理戦闘をする文化なのかなぁ?

「魔道士と言っておきながらガチガチに物理戦闘する漫画みたいな?」
「妖精の尻尾ね。レフィ達の世界って面白そうね」

ソラちゃんとリオさんはいつものネタ話をしている。興味があるなら今度一緒に行こうね。

「そういえば虚空の覇者ヴォイドマスターさんは何て呼べばいいですか?」
「人間だった頃の名前で呼んでもらおう」

ほのかさんと話していた時に聞いたけど、川本さんだったね。下の名前は孝司こうじというらしい。

お父さんと同じ名前だ。年齢はずっと上だけどね。

予め虚空宮ヴォイドパレスで私の作った地球の服に着替えて出発する。
目指すはほのかさん達の生まれ故郷。

「おー同郷」
「そうなのか?」
「ソラちゃんだっけ。この辺りなの?」
「私はもっと北の方だけど、こっちの方にも来たことあるよ」

ソラちゃんの育った市は有名自動車企業の本社があるど田舎だと教えてくれた。

ど田舎って…。

「田んぼと工場しかないよ」
「またまたー」
「これは本当。ビックリするくらい田舎だよ」

一方でほのかさん達の育った市は海に面した田舎だという。

「こっちの方が田舎でしょ?」
「そんな事ない。うちの方が田舎」
「何を競っているのよ…」

ソラちゃんとほのかさんが話し合っているのを見てリオさんが笑っていた。

私の地元も田舎自慢じゃ負けないよ?

「では俺の実家からで良いか?」
「はい。行きましょう」

認識阻害を掛けて飛んでいく。
虚空の覇者ヴォイドマスターさん…川本さんの実家は海に近い一軒家だった。

「昔は周りには田んぼしかなかったんだが、随分と家が増えたな」

空中で静止して眺める川本さん。

人気の無い所に着地して家を目指す。

「…ここなんだが」

一軒の家の前に立ち止まる。表札は川本ではなかった。

「川本君の家じゃなくなってるの?」
「みたいだな。これでは何も分からんだろう。ほのかの家を見に行こうか」
「せっかく来たんだから手掛かりを探そうよ」

ほのかさんはそう言って躊躇いなくインターホンを押す。

「はーい、どなた?」

出て来たのは年配の女性。

「私達、以前ここに住んでいた川本さんという方をご存知でしょうか?お父さんの友人を訪ねてきたんですけど」
「お父さん…」

確かにその姿のほのかさんなら川本さんをお父さんと呼んでも違和感ないね。

まさかそれを狙ってその姿にしたのかな?
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