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特別編3:異世界
レギュイラ改革
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もう一つ気になった事があった。
「アガートラームって2本あるんですか?」
「飛ばした方が本物でミナさんに攻撃した方はコピーなんですよ」
そう言って左手にしてある腕輪を見せてくれた。
腕を軽く振ると腕輪が短杖に変化した。
「腕輪とワンドの状態は同じ効果なんですけど、近くにある武器をコピーする事もできるんです」
そう言ってもう一度ワンドを振るとダインスレイヴに変身した。
「面白いですね」
「アンネさんも同じものを持ってますよ。お揃いなんです」
アニエスさんとアンネさんは仲良しなんだね。
次の日は新たにやって来た子供達の受け入れをしたり、冒険者ギルドから派遣されて大人の人に設備の使い方を教えたりした。
ギルドは引退した冒険者にここの管理を依頼したみたいで、いろいろな人が孤児院にやって来た。
代官についても処分が決まったらしい。
男爵の遣いの人を追い返す為に遣いを出したのだけど、街に向かって来ていたのは男爵本人だったそう。
男爵はレギュイラへやって来てシャーナさんに街の実情を確認、教会と癒着して私腹をこやしていた代官を拘束した。
魔石については孤児院の為に使ってもらうという事で構わないので、リムちゃんや幼い子の面倒を見ていたリーダー格の子達に管理を任せる事に。
この街の孤児の環境は劇的に変わる事が出来た。
「お姉さん達は何処かに行ってしまうの?」
心配そうに聞いてくるリムちゃん。
「うん。私達この街の者じゃないし、帰らなくちゃいけない所があるから」
「そうですか…」
「とは言っても帰る方法が分からないから、まだ暫くはここにいると思うよ」
そう言うと笑顔になるリムちゃん。
「魔法も教え始めたばかりですしね」
「はい!」
アニエスさんも子供達に魔法を教える気でいるみたいだ。
瘴気に晒されていた子供達は魔力が大人よりもずっと多いから、努力すれば優秀な魔法使いになれそう。
冒険者ギルドの指導の下で、希望者はギルドに所属するための訓練も受けさせてくれるし、全員に読み書きを教える事になったらしい。
「男爵様がみんなに会いたがっているけど、会ってくれるかな?」
シャーナさんに聞かれて少し戸惑う。
実は貴族の人はちょっと苦手。
みんながみんなそうではないけど転生したばかりの頃にひどい目に遭っているからね。
「孤児達の事を任せられる人かを見に行こうよ」
ほのかさんはいつもの調子で言っていた。
うん。そうだね。ギルドの人達が見てくれるから大丈夫こもしれないけど、男爵様が庇護してくれるなら奴隷商にちょっかいを出される様な事も無くなるだろうしね。
私達は招待を受ける事にした。
シャーナさんに代官の住んでいた屋敷に案内され、大きな広間に通されると立派なお髭を蓄えたおじさんが出迎えてくれた。
「君達がこの街の孤児達の為に尽力してくれたのか。私はレギュイラを統治するスタンフォードと申す」
みんなそれぞれ自己紹介する。
「私の留守を任せていた代官があの様な勝手な振る舞いをしているとは思わなかった。迷惑をかけてしまった、すまない」
「謝る相手が違うよ。一番の被害者は街の子供達。これからは男爵様の力で奴隷商なんかに連れて行かれない様にしてあげて?」
「無論だ。子供は宝、私の出来る限りの事はすると約束しよう」
ほのかさんに言われて大きく頷く男爵様。
いい人みたいだね。ちょっと安心した。
「それで、君達は何処から来たのだね?シャーナからはとても遠くから来たと聞いているが」
遠く、としか言いようがないんだよね。
「私達はこの世界の者じゃない」
アンネさんがハッキリと事実を言う。
…通じるかな?
「ふむ…それはどういう意味だね?」
「そのままの意味。私達はここではない他の世界から飛ばされて来た。自分達の世界に帰る方法を探している」
アンネさんをじっと見つめて何も言わない男爵様。
「分かった。嘘を言っている様には見えないので信じるとしよう。君達が帰る為に必要なものはなんだろうか?用意出来るものがあれば協力しよう」
突飛な事を言ったのに協力すると言ってくれた。
本当に良い人だね。
「何がいる?」
アンネさんは私達に聞いてくる。
「何と言われても…世界の情報を教えてもらいましょう」
「私の知っている限り話そうじゃないか」
私達はこの世界の事をほとんど知らない。教養の高い男爵様なら色々な事を知っているだろう。
一番に聞きたかったのは神様の事。
大地の神として祀られているファルシーネ様については本当に信仰しているみたい。この国が建国される前から崇められているそうなので『偽物の神』という事実は知らないみたい。
「御伽噺にかつて神々が争ったと言う話がある。その時に半数の神は悪魔に身を窶したのだと子供の頃に聞かされたな」
ということはラウト・オセアーンも神様なんじゃないかな?
「今は船乗りに恐れられる海の悪魔だよ」
やっぱり神様同士のいざこざがあったんだろう。
「悪魔といえば、世界に瘴気を発生させている魔王の存在だ」
「魔王…詳しく教えてください」
「奴の名はジャヴォール・オルグ。この世界に瘴気を放ち、地上を魔物で埋め尽くさんとする悪魔の王だ」
もしかしてその悪魔も神様なんじゃ…?
「アガートラームって2本あるんですか?」
「飛ばした方が本物でミナさんに攻撃した方はコピーなんですよ」
そう言って左手にしてある腕輪を見せてくれた。
腕を軽く振ると腕輪が短杖に変化した。
「腕輪とワンドの状態は同じ効果なんですけど、近くにある武器をコピーする事もできるんです」
そう言ってもう一度ワンドを振るとダインスレイヴに変身した。
「面白いですね」
「アンネさんも同じものを持ってますよ。お揃いなんです」
アニエスさんとアンネさんは仲良しなんだね。
次の日は新たにやって来た子供達の受け入れをしたり、冒険者ギルドから派遣されて大人の人に設備の使い方を教えたりした。
ギルドは引退した冒険者にここの管理を依頼したみたいで、いろいろな人が孤児院にやって来た。
代官についても処分が決まったらしい。
男爵の遣いの人を追い返す為に遣いを出したのだけど、街に向かって来ていたのは男爵本人だったそう。
男爵はレギュイラへやって来てシャーナさんに街の実情を確認、教会と癒着して私腹をこやしていた代官を拘束した。
魔石については孤児院の為に使ってもらうという事で構わないので、リムちゃんや幼い子の面倒を見ていたリーダー格の子達に管理を任せる事に。
この街の孤児の環境は劇的に変わる事が出来た。
「お姉さん達は何処かに行ってしまうの?」
心配そうに聞いてくるリムちゃん。
「うん。私達この街の者じゃないし、帰らなくちゃいけない所があるから」
「そうですか…」
「とは言っても帰る方法が分からないから、まだ暫くはここにいると思うよ」
そう言うと笑顔になるリムちゃん。
「魔法も教え始めたばかりですしね」
「はい!」
アニエスさんも子供達に魔法を教える気でいるみたいだ。
瘴気に晒されていた子供達は魔力が大人よりもずっと多いから、努力すれば優秀な魔法使いになれそう。
冒険者ギルドの指導の下で、希望者はギルドに所属するための訓練も受けさせてくれるし、全員に読み書きを教える事になったらしい。
「男爵様がみんなに会いたがっているけど、会ってくれるかな?」
シャーナさんに聞かれて少し戸惑う。
実は貴族の人はちょっと苦手。
みんながみんなそうではないけど転生したばかりの頃にひどい目に遭っているからね。
「孤児達の事を任せられる人かを見に行こうよ」
ほのかさんはいつもの調子で言っていた。
うん。そうだね。ギルドの人達が見てくれるから大丈夫こもしれないけど、男爵様が庇護してくれるなら奴隷商にちょっかいを出される様な事も無くなるだろうしね。
私達は招待を受ける事にした。
シャーナさんに代官の住んでいた屋敷に案内され、大きな広間に通されると立派なお髭を蓄えたおじさんが出迎えてくれた。
「君達がこの街の孤児達の為に尽力してくれたのか。私はレギュイラを統治するスタンフォードと申す」
みんなそれぞれ自己紹介する。
「私の留守を任せていた代官があの様な勝手な振る舞いをしているとは思わなかった。迷惑をかけてしまった、すまない」
「謝る相手が違うよ。一番の被害者は街の子供達。これからは男爵様の力で奴隷商なんかに連れて行かれない様にしてあげて?」
「無論だ。子供は宝、私の出来る限りの事はすると約束しよう」
ほのかさんに言われて大きく頷く男爵様。
いい人みたいだね。ちょっと安心した。
「それで、君達は何処から来たのだね?シャーナからはとても遠くから来たと聞いているが」
遠く、としか言いようがないんだよね。
「私達はこの世界の者じゃない」
アンネさんがハッキリと事実を言う。
…通じるかな?
「ふむ…それはどういう意味だね?」
「そのままの意味。私達はここではない他の世界から飛ばされて来た。自分達の世界に帰る方法を探している」
アンネさんをじっと見つめて何も言わない男爵様。
「分かった。嘘を言っている様には見えないので信じるとしよう。君達が帰る為に必要なものはなんだろうか?用意出来るものがあれば協力しよう」
突飛な事を言ったのに協力すると言ってくれた。
本当に良い人だね。
「何がいる?」
アンネさんは私達に聞いてくる。
「何と言われても…世界の情報を教えてもらいましょう」
「私の知っている限り話そうじゃないか」
私達はこの世界の事をほとんど知らない。教養の高い男爵様なら色々な事を知っているだろう。
一番に聞きたかったのは神様の事。
大地の神として祀られているファルシーネ様については本当に信仰しているみたい。この国が建国される前から崇められているそうなので『偽物の神』という事実は知らないみたい。
「御伽噺にかつて神々が争ったと言う話がある。その時に半数の神は悪魔に身を窶したのだと子供の頃に聞かされたな」
ということはラウト・オセアーンも神様なんじゃないかな?
「今は船乗りに恐れられる海の悪魔だよ」
やっぱり神様同士のいざこざがあったんだろう。
「悪魔といえば、世界に瘴気を発生させている魔王の存在だ」
「魔王…詳しく教えてください」
「奴の名はジャヴォール・オルグ。この世界に瘴気を放ち、地上を魔物で埋め尽くさんとする悪魔の王だ」
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