転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

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特別編3:異世界

山賊討伐任務

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ギルド職員の青年は冒険者達の言う事を黙って聞いていた。

全員がある程度落ち着くと話し始める。

「まず瘴気の拡大の状況だが、このショルカの街から西に3日の所まで来ている。今は停滞しているが、拡大が再開すれば平野部のこの街を飲み込んで更に東進するだろう。つまり東のサイオラに逃げても瘴気から逃れる事は難しい」

どうやら瘴気は地面に沿って動いてくるみたい。
昨日みたいな突発的なものは、地面から積み重なってできた上層部が風に飛ばされて遠くに運ばれてくる珍しい現象なのだとか。

「距離にしても南の山脈を越えてレギュイラの港町まで避難するのが確実だ」
「で、山脈を根城にしている賊どもを俺達が討伐して道を開けってか?」

カウンターの目の前にいた体格の良いおじさんが半分笑いながら言う。

「そうだ」
「簡単に言うなよ!」

近くにいた小柄な少年が文句を言う。

「あの山脈の厳しさを知らない訳じゃないだろう?山道の高い所は年中雪が積もってる様な所だぞ。そんな所を女子供を連れて越えるなんて無理じゃないか?」

肩に弓を掛けたエルフ耳の青年が計画を否定する。

「瘴気の拡大はいつ始まるか分からん。多くを助ける為にはこれが最善だと代官も判断した」

ちなみに私達が目を覚ました地点は北部の丘陵地帯。こちら側は北側に行くにつれ勾配が厳しくなっていて街は無く、その先にある山にはドラゴンの巣があるらしい。

つまりギルド職員の青年が言う通り南に逃れるのが最善なのだ。

山は険しくてもみんなで協力すれば何とかなるんじゃないかな?

「何をガタガタやってやがる?」

カウンターの奥から職員の青年より更に一回り大きな男の人が出てきた。

褐色肌でスキンヘッド。山で会ったら山賊だと間違いそうな鋭い目つき。左目には刀傷の様な跡がクッキリと付いていた。

「ギルマス、今冒険者達に今回の仕事を説明していた所です」
「いつもは適当に仕事をやってやがるクセに、ちっと危険があるだけで文句ばかり垂れやがって。お前らは何だ?チンピラか?街にこびり付いているクソッタレの集まりか?」

ギルドマスターさんが鋭い目付きで冒険者達を睨み付けると、騒いでいた人は口を噤んで目を伏せた。

「街のモンはお前らが居なけりゃここで死を待つだけだ。お前らだけが山賊どもを蹴散らせる戦士なんだぞ!」

…そういえばこの街には他に戦力は無いのかな。兵士的な。

「お前らは何だ?」
「…冒険者です」

目の前にいた冒険者の青年に聞くギルドマスター。萎縮して小さな声で答える青年。

「テメェ、タマぁ付いてるのか?ハッキリ答えやがれ!」
「冒険者です!」
「そうだ!俺達は冒険者だ!自由に生きる冒険者だ!あんなクソ瘴気に黙って殺される俺たちじゃあ無ェ!!」
「その通りだ!」

ギルドマスターさんが吠えると周りの冒険者達も同調する。

…何か映画のワンシーンを見てるみたい。

「そこのお前!お前はやれるのか?」

こっちを見て聞いてくるギルドマスターさん。

あ、え…私?

「やりますけど、報酬はいくらですか?」

シンと静まり返る冒険者達。

やば…やっちゃったかな…?

「素晴らしい!聞いたかお前ら?あんなお嬢ちゃんでもやると言っているぞ!その上報酬の話だ、女にしておくのが勿体無ぇ!前金は20万出す!討伐を終えたら50万上乗せだ!それでいいか嬢ちゃん?」
「食料や必要な物資も付けて?」

私の横でほのかさんが注文を付ける。

「はっはっは!!いいぞ気に入った!全部こちらで手配する。この条件で仕事が受けられないタマ無し野郎はギルド証を置いて帰りやがれ!!」

タマ無しって…女の子もいるんですが。

隣に立っているギルド員の青年が、突然の報酬の吊り上げに顔を青くしている。

「あんな子供がやるって言ってるんだ。俺達が逃げられるかよ!」
「そうだぜ!やってやらぁ!!」

ホールから出て行く冒険者は1人も居なかった。

「上手く利用されちゃったね」
「やっぱりそうなんですね」

ホールの隅でほのかさんと話す。

「嬢ちゃん達、2人なら俺達と組まないか?」
「待てよ、俺達が誘うつもりだったんだぞ」
「早い者勝ちだろ?」

幾つかのパーティが私達の所に来て誘ってくれる。

確かに2人だけで動くのは心許無い。
でも知らない人達に着いて行くのも気が引ける。
せめて女性のパーティだったら入りやすいんだけど見当たらない。

さっきのワイルドな女の人はいつの間にか居なくなってるし、どうしようかな?

「おい、どいてくれ」
「なんだよ?」

人集りを押し退けてやって来たのはルーカスさん達だった。

「俺達とはどうだ?嬢ちゃん達の実力はよく分かっているし、邪魔にはならねえよ」
「ほのかさん、いいかな?」
「うん」
「よし、決まりだ!この2人は俺達がパーティに加える。さあ、帰った帰った!」

文句を言いながら他のパーティの人達は散っていく。

「ありがとうございます。助かりました」
「いやいや、俺達の方こそ一緒に行ってくれるのはありがてぇよ。2人ともメチャ強えからな」

ルーカスさん達と一緒にカウンターに行って仕事の登録を済ませて前金を受け取る。

1人20万ルド。マスターさん太っ腹だなぁ。

「嬢ちゃんさっきは助かったぜ」

お金の入った袋を大量に抱えてやって来たギルドマスターさんが声を掛けてくる。

「いえ…でも急に振られて驚きました」
「まあ、何を言っても担ぐつもりだったんだがな!」

そう言って豪快に笑うギルドマスターさん。

「名乗ってなかったな。俺はグラッド。サムは知ってるよな?」
「はい。名前は聞いていませんでしたけど」

ギルド職員の青年はサムさんと言うらしい。

「サムはギルドに待機してもらうが俺は山賊退治に行くからな!」

グラッドさん自ら討伐に行くらしい。
サムさんも止めるのは無理だと分かっているのだろう諦めた顔をしていた。

「サムから聞いてるぞ。昨日ルーカス達をボコったらしいじゃねぇか。その歳でルーカス達に勝てる奴なんざ初めて見たぜ」

ルーカスさん達も中堅冒険者くらいの実力者なのだそう。

「出発は明朝だからな。今日はゆっくり休んでおくんだぞ!」

そう言ってサムズアップするグラッドさん。

急な仕事になっちゃったけど、前金も貰ったし、ルーカスさん達と行動を共にする事になったので心配はないかな。
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