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特別編2:神様はじめました

マサキの里帰り

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~side マサキ~

「そんじゃ、行くか!」

俺達はミナ達と別れて俺の実家を目指す事にする。

時刻はまだ朝。

「マサキ、その前に寄りたい所があるんだ」

そう言って来たのは娘のハナ。
以前リヴェルティアに地球に飛ばされた時に、助けてくれた老夫婦の家に行きたいらしい。

「言葉も分からない私を保護してくれて、優しくしてくれた2人に改めて礼を言いたいんだ」
「分かった。娘が世話になったんなら俺達も礼を言いに行かないとな」
「その家を知ってるから転移するわね」

あの時、妻のネネは俺よりも早くハナを見つけてマサムネと戦ってくれた。
彼女が時間を稼いでくれなければハナを助け出す事は出来なかっただろう。

ネネの《テレポート》で移動する。

目の前には農家らしい家。平屋建てで庭も広い。

門を通って玄関へ。

「こんにちはー!」

引き戸を開けて中に入り大きな声で挨拶をする。

この辺りの古い家にはインターホンが付いていない。
何だったら玄関の鍵も掛かっていない。

「おい…勝手に入って大丈夫なのか?」
「ここらへんはいつもこんな感じだから大丈夫だよ」

心配そうに聞くハナに笑いかけ、人が出てくるのを待つ。

「はいはい…どなた?」

やって来たのは老婦人。田舎のお婆ちゃんのスタンダードみたいな人だ。

「以前ウチの娘がお世話になったと聞いて、お礼に伺いました」

なるべく大きな声で用件を伝える。

「あの…」

後ろにいたハナが俺の横を通って前に出る。

「あらあら…あなた。良かったわあ…元気そうで」

そう言ってハナの手を取り顔を綻ばせるお婆さん。
ハナも再会出来て嬉しいらしく、瞳を潤ませながら笑顔を作っていた。

「その節はお世話になりました。私の様な何処から来たのかも分からない者に衣服まで貸してくださって…本当に助かりました」
「あらあなた、日本語上手になったわね。若い子は物覚えが早くて羨ましいわ」

「おーい、お客さんかえ?」

お爺さんもやって来た。髪は真っ白で腰も随分と曲がっているが足取りは確かだ。

「お爺さん、この前の子ですよ」
「この前の…?おお!言葉が話せなかった外国の女の子か!」

お爺さんも覚えていてくれたようだ。

「助けていただいてありがとうございました」

そう言ってお辞儀をするハナ。
敬語を話すハナって新鮮だな。

「無事で良かった。儂らの所為でお父さんとお母さんに会えなかったんじゃないかと心配しとったよ」

うんうんと頷きながら言うお爺さん。

「さあさあ上がって」

断ろうかと思ったが、人の良い2人に「用事がある」とは言い切れずにお邪魔する事に。

お茶とお菓子を出して貰い、お礼を言いに来たつもりがもてなされてしまった。

それだけでは申し訳ないので、何か困っている事は無いかと聞いてみたら、建て付けが悪くなっている所があると言っていたので直す事にする。

技能も無しに自給自足をやってきた俺達にとって、建て付けを直すくらいは造作もない。家中の悪い所を直していく。
俺は大工道具を借りて、ネネは魔法で全部完璧に直した。勿論ハナも手伝った。

「ありがとうねえ」
「いえいえ、娘が世話になったせめてもの恩返しですよ」

2人はお礼にと食事を用意してくれた。
5人で食卓を囲み楽しく食事をした。
俺達の事を外国人だと思っている2人は気を遣ってナイフとフォークまで用意してくれたが、箸が使える所を見せるととても驚いていた。

ーーーー

「そうか。お前さんの実家に帰る途中だったのか。態々寄ってくれてありがとう」

お茶を飲みながら今回の目的を話す。お爺さんは嬉しそうに頷いていた。

「これで心配事がなくなりましたよ。これからも家族で仲良くするんだよ」
「はい。」

お婆さんも優しい笑顔で話してくれる。

2人と話していると両親が恋しくなる。

「長いこと引き留めてしまってすまんかったね。そろそろ行かにゃ、日が暮れてしまう」
「お世話になりました」
「いやいや、世話になったのはこっちの方だよ。久し振りに楽しくて、時間を忘れてしもうた。気をつけて行くんだよ」
「はい。ご飯ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「うんうん。またいつでもおいで」

名残惜しいがそろそろ出発だ。
ハナは瞳を潤ませて2人が見えなくなるまてま手を振っていた。

「いいお爺さん達だったな」
「ええ。ハナ、また来ようね?」
「ああ。是非また来たい」

長い寄り道になってしまったが、今度こそ実家だ。
ネネにおおよその位置を教えて《テレポート》してもらい、あとは歩いて向かう事に。

実家にはすぐに着いた。
門扉に取り付けられているインターホンを押す。

「2人とも驚くかな?」
「私、緊張してきたわ」
「私もだ」

当然だが、ネネとハナはうちの両親とは初めて会うのだ。緊張しない訳がないだろう。

…出ないな。出かけているのか?

「あなた達、相田さんにご用?」

声を掛けてきたのは多分近所の人だ。

「はい。留守みたいですね」
「今朝、奥さんが救急車で運ばれたのよ。旦那さんも一緒に病院に着いて行ったわ」

母さんが…倒れた?

「ありがとうございます。出直します」

そう言って足早に自宅を去る。

この辺りで救急を扱っている病院はそんなに多くない。多分あの病院だ。

「ネネ、ハナ、病院に行く」
「場所がわかるなら教えて。転移するわ」

ネネに教えると直ぐに《テレポート》で移動してくれた。

この辺りで一番大きい総合病院だ。
受付に行き母がここにいるか聞いてみる。

「あなた…その方とはどの様な関係?」
「家族です」
「身分証明が出来るものはお持ちですか?」

…ダメだ。疑われている。

教えてくれそうにないので一度受付から離れて考える。

〈私の力が役に立ちそうだな〉

そう言ってきたのはペンダントになっている俺のパートナードゥーム、フィレムレアだ。

「俺の母親がここに運ばれてきたかを確認したい。何か良い方法はないか?」
〈過去を遡ってみるとしよう〉

フィレムレアは過去の情景を映し出す事ができるそうだ。
俺達は救急入り口の方へ行き、到着してくる救急車の様子を見せてもらう。

何台か救急車の到着を見ていると、搬送されていく患者に付き添って中に入る父親の姿を見つけることができた。

「間違いない。母さんはここにいる」

どうやって病室まで行くか。
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