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地球

散り散りの仲間達3

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~side ネネ~

日本に飛ばされて私は技能の全てを失っていた。
きっと仲間は全員同じ状況になっているのだろう。

これから起こる事は大体分かる。技能を失って散り散りになった私達を1人ずつ始末する気なのだろう。
元々強いミナやマサキ達は何とかなるかも知れない。ハナだけは危ない。

直ぐに見つけないと。

魔法についても私は技能を失っている。
その上地球にはマナが無いから魔法が使えない。

普通なら。

ポケットに入れていたマナタブラウルを取り出す。
これはマナの結晶。これを使えばマナは補充できる。

あとは技能。

そんな事、私には問題ない。
ミナに呪いを解いてもらってから、魔法を全て使える様にした時、私は1つずつ覚えていた詠唱を全部実行してきた。
技能なんて無くても魔法は使える。

次にどうやってハナを探すか。
探知するしかない。
《フライト》の魔法を掛けて空を飛ぶ。
飛びながらハナの波長を探すのだ。

絶対に見つける。私達の娘を必ず見つけるんだ。

私が飛ばされたのは山奥だったので、人里に近付くまでは飛行して探し、民家が多くなったら歩いて探す。

ここまで来るのに2日も掛かった。
諦めはしない、必ず見つける。

身体が軽い。どうやら身体能力が段違いらしい。走って探していると、庭先でオロオロと話し合っている老夫婦を見掛ける。

「どうしましょう?あの子、様子がおかしかったわ」
「あの男、親では無いだろう。警察に連絡するか?」
「今すぐ行ってあの子を助けましょう」

「あの!その子って、白い髪の小学生くらいの子ですか?」
「そうだが…あんたは一体?」
「その子の母親です!」
「男と一緒に向こうに行ってしまったんだ。ごめんよ」
「いえ、ありがとう!」

人目など構っていられるか!《フライト》で飛んで探す。

川に出たので低空で周りを見渡す。

…いた!

橋の下で剣を突きつけられて…

あれは、マサムネ!

「《ライトニングボルト》!」

雷撃でマサムネを撃つ。

「お待たせハナ!」
「お母さ…ネネ!」

今お母さんって呼ぼうとした?
それは後で聞くとして……

「うちの娘を橋の下に連れ込んで何をしてるの?変態さん」
「ちっ…お前、なんで魔法が使える?」
「さて、何でだろうね?娘を痛ぶられた怒りで覚醒したのかしら?」

本当の事を教えてやるつもりは無い。
この卑劣な男を倒して私はハナと一緒にマサキを探す!

「まあいい、マサキとやり合う前にお前も殺しておきたかったからな!」

マサムネは私に向かって斬り掛かってきた。

ハナは…?

その場に崩れる様に座り込んでいる。
服はあちこち引き裂かれ、血が滲んでいた。
怖かっただろうに…私の方を見て安心し切った笑顔を浮かべていた。

許さない…!

「《ディグライトニング》!」

突進してくる位置に地面から迫り上がる雷撃の魔法を撃って牽制する。足元から雷撃を受けて蹈鞴を踏んでいる所に追撃を加える。

「《ヴィーガスガイア》!」

巨大な岩の槍を生成してぶつける。

まともに食らって大きく吹き飛ばされていくマサムネ。

「ぐはっ…!!」

まだだ!ハナを痛めつけた分を何百倍にしても返してやる!

「《ブリクセム》!」

河原に倒れたマサムネの直上から光が降りてきて彼を焼く。

「はぁっはぁっ…く、くそ…」

焼け焦げながら逃げようとするマサムネ。
逃す訳ないでしょうが。
どうせここで逃したらさらに憎悪を膨らませて復讐に来る。
ここで息の根を止めさせてもらう!

「覚悟なさい。《アーク…

次の瞬間、マサムネが私に向かって何かを投げていた。それは私のポケットの位置に命中していた。

パリンとガラスの砕ける音がしてそこを見ると、短剣がマナタブラウルを粉々に砕いていた。

「なっ!?」
「魔法の秘密はそれだよなぁ?」

ヨロヨロとこちらに向かってくるマサムネ。

この男…意外とキレる。

「ネネ!」
「ハナ、逃げなさい!直ぐにマサキが来てくれるわ!それまで身を隠していなさい!」

魔法が使えないとなるとマサムネには勝てないだろう。

「それじゃあまずは倍返しだ!」

私が回避動作に入るより早く左脚を斬られていた。

血が溢れ出てくる。かなり深くやられてしまった。手で押さえて止血を行うけど、その場に座り込む様な形になってしまう。

「本当なら指を一本ずつ切ってやりたいんだがな、娘も逃すわけにはいかないからな…身動きを封じて親娘仲良く殺してやるよ!」
「待ちなさい!ハナにはこれ以上手は出させないわ!」

這いずりながらマサムネに近付く。
それを見下ろして『フッ』と笑うと私の左肩に剣を突き込んできた。

「あ…ぅ…」
「やめろ!ネネにこれ以上…」
「お前が逃げるとお母さんがもっと苦しい目に遭うぞ。どうする?」
「…分かった。逃げないから、だからもうネネには手を出さないでくれ…」

ハナは逃げようとしなかった。
駄目よ…この男は私達2人を生かしておくつもりは無いわ…

「ハ…ナ…逃げて…」
「うるせぇ母親だ」

剣を更に深く突き入れてくる。

「あ、ぐっっ……!!」
「やめろ!もう!やめてくれ…」
「親娘揃ってムカつくぜ…早くこっちに来い!」

駄目よ…来たら…殺されてしまう…!

次の瞬間、突風が起こった。
いや、突風じゃない。
それはマサムネを殴り飛ばして私を抱きかかえてくれていた。

「よく頑張ったな、ネネ!」
「マサキ…遅いわよ。でも助かったわ…」
「ハナ、ネネを頼む。すぐに済むからな」
「あ、ああ!」

剣を私の肩から抜いて、ハナに止血をさせてから遠くに殴り飛ばされているマサムネの所に歩いて行く。

「さてさて…お前、うちの嫁と娘に何してくれてんだ?」
「はぁっはぁっ…もう少しでぶち殺せたものを…まあいい。元々お前を殺す事が目て…「やかましい!」

マサキの右拳がマサムネの頬にめり込んでいた。

「うぐ…何だよお前…技能が無いんじゃないのかよ…」
「無ぇよ?だからどうした?俺は技能なんかに頼らなくても強えんだよ!」

そこからはマサキがマサムネを素手で滅多打ちにするだけだった。

顔の原形が分からなくなる程殴り続け、マサムネが「もうやめてください」と言ってもまだ殴り続けていた。

マサキはマサムネが完全に動かなくなったのを確認してからこっちに戻って来る。

「マサキ…」
「ネネ、大丈夫か?」
「ええ…何とか、ね」
「2人が来てくれなかったら今頃私は死んでいたよ…」

ハナは震えていた。大粒の涙を溢しながら言っていた。

「来ないわけないだろ?」
「どこに居たって見つけるわよ。だって…」
「俺の」「私の」
「「娘なんだから」」

「お父さん…お母さん…怖かったよ……」

暫く3人で抱き合っていた。
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