上 下
290 / 763
平穏

尻尾

しおりを挟む
私は奴隷の人達に説明する。

「私達はまだやる事がありますので暫くはここで生活してください。」
「待ってくれ…いや、待ってください!ここで生活ってどうすればいいんですか?」
「ここにいるアウラさんが皆さんの身の回りのお世話をしてくれますのでご安心ください。」

多少の混乱はあったけど、困りごとがあればアウラさんに相談してもらえれば大抵の事は解決できるのでお任せする事に。
食事から着ているものの交換までアウラさん達がテキパキとこなしてくれている。
今回の仕事が終わったら改めて身の振り方を決めてもらおう。

情報も手に入ったし、一度マサキさん達と合流して次の行動を決めようと思う。

お昼ご飯も兼ねてレストランの一室を借りて情報を整理する。

私達が手に入れたのは違法な取引を斡旋してくれる組織の情報。金属でできた割符を使って取引相手を確認する様にしているそうで、割符を購入する方法も教えてくれた。

マサキさん達は他の奴隷商からある貴族の使いがかなりの頻度で奴隷を買いに来ていて、自分の所に長く置いていないという話を聞いてきたそう。

それでその貴族の身辺を調べてみたら最近随分と羽振りが良く、珍しい鉱石を高く売って大儲けしているとか。その鉱石はアダマンタイトと言って、今までに見た事もない鉱物なのだとか。

「定番の鉱石ではあるけどアスティアには無いのかと思っていたわ。」

リオさんがそう言うと、マサキさん、ネネさん、ソラちゃんも頷いていた。

有名なんだ?

[アダマンタイトはオリハルコンに次ぐ硬度をもつ魔法金属で、現在中央大陸では産出されていません。]

アウラさんの説明は全員に伝わる様にしておいた。

「確かにアダマンタイトという金属は聞いた事はないな。」

ルーティアさんがそう言うなら本当に希少な鉱石なのかも知れない。
ちょっと現物を見てみたい気もするけど、今は奴隷の話が先だ。

「さて、奴隷を大量に買って行く貴族と、この辺りで手に入らない希少な金属を取り扱う様になったと言う話、結び付けるならどういう筋書きが必要かしら?」
「まさか奴隷を材料に?」

ソラちゃんそれは流石に無理があるかな。

「アフターギフト因子みたいにですか?」
「そんなどこぞの賢者の石じゃあるまいし。」

ユキさんが言ったけど私もそれを思い浮かべた。幾ら何でも突飛過ぎるかな。
マサキさんの言っているのは某錬金術師の物語の事だよね?

まあ今はそれはいいとして。

「はあ…私とした事が最も安全で簡単で早い方法があったのになんでこんな回りくどい事をしていたのかしら…」

突然頭を抱えるリオさん。

どうしたの?

「ミナ、オーバーブースト鑑定でリアード国内を調べて。奴隷の分布と、何か変わったものがないか探してみて。」
「なるほど!分かりました!」

そうだよね。聞き込みしなくても自分で調べられるんだ。

「……私は意図的にやらない様にしていたのかと思っていたのだけど違ったんだねぇ。」

苦笑いをしながらルーティアさんが呟いていた。

気を取り直してオーバーブーストを掛けて鑑定をしてみる。

特に変わった所はない様な…おや?

「東の海上、奴隷を大量に乗せた船がいます。これは…座礁してる?」

イメージをここにいる全員にリンクさせて見せる。船はかなり大型みたいで船員が20人、労働奴隷が20人、奴隷が…180人。労働奴隷というのは操船を行う奴隷らしい。
更に詳しく調べると船員20人の内16人は竜人族ドラゴニュート4人は半竜人族ドラゴンハーフだった。

半竜人族ドラゴンハーフってどんな種族ですか?」
「ミナ達は見た事ないか。名前の通り竜人族ドラゴニュートと人間のハーフだよ。見た目は人間にかなり近い。違うのはドラゴンの尻尾が生えているくらいで、華奢な容姿の者が多くて非力だけど恐ろしく頑丈で魔力が高い。北の村にも数人いるけど、容姿の美しさのせいで拐われる心配があるから人前には滅多に現れないぞ。」

マサキさんが丁寧に教えてくれた。
竜人族ドラゴニュートとの間に子供ってできるんだ…。全然違う生き物に見えるから無理だと思ってたんだけど。

「北の村は人と交わった竜人族ドラゴニュートがいるのね。」
「ああ、元々あの村の者じゃないらしい。東の国から逃げて来たとか言っていたような。」

話を戻そう。今、岩礁で立ち往生している船はその東の国から来た可能性が高いと言う事だよね。

「リアードは奴隷を外国に売り渡すのは合法ですか?」
「禁止はされていない筈だ。だが東のエジダイハン…竜人族ドラゴニュートの国とは交易自体を禁じているな。」

クロウさんが答えてくれた。流石大手クランのリーダーだけあって詳しい。

「じゃあその船を拿捕してもいいって事でしょうか?」
「船員と船を国に返せばいいんじゃない?」

ユキさんの質問にリオさんが答えている。

「一応国王には言っておこうか。事後で。」

マサキさんは笑いながら言う。事後でいいのかな?最悪戦争にでもなったら大変だよ。

「俺達を利用したその仕返しみたいなもんだ。それにリアード国内では違法な行為だしな。」
「私達を利用すると想像の斜め上どころか捻りまで加えてくるのだと思い知らせてやればいい。」

ソラちゃんも乗り気だ。
最悪そのエジダイハンが攻めてきたら私達が何とかしよう。

ご飯も美味しくいただいて午後からはどうしようか?

「それじゃ、お昼も済んだし船に行ってみる?」
「そんな散歩に行くみたいな言い方…結構好きよ。」

リオさんが軽い口調で言うとネネさんが反応していた。

2人は結構仲良いよね。

奴隷を大量に乗せた船を調べにいく事になった。

予め《レビテーション》を全員に掛けて、私は念の為《アドラステア》を作動させてから《ハイパークレアボイアンス》と《テレポート》で転移する。

転移した先は船の上空。見ればかなり大きな帆船が大陸からかなり離れたところにある浅瀬に乗り上げて危険なほど傾斜していた。甲板には竜人族ドラゴニュートや船員と思しき人間や尻尾の生えた人、半竜人族ドラゴンハーフ達がマストや縁に掴まって必死に堪えていた。

「あのままじゃ転覆しちゃいます。助けましょう。」

私は《リージョナルテレポート》で船を浅瀬から転移させた。

「助かったのか…?」
「何者だ!」
「私達はリアード国の命により奴隷の売買について取締りを許可されている者よ。あなた達の船にリアードから買った奴隷が乗っているわね。臨検させてもらうわよ。」

「おい!今はそれどころじゃあないぞ!船底に穴が空いた!」

それはマズい。

《ラッキーシュート》を掛けて《修復リペアー》で修復する。

「船は直しました。これで話は聞いてもらえますか?」

更に混乱する船員達。
しおりを挟む
感想 1,506

あなたにおすすめの小説

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30) 小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。 ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。 それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。 そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。 とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。 ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。 冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。 今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。 「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」 降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決! 面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。 これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。