上 下
272 / 763
ディルロード帝国

控室

しおりを挟む
ディルロード帝国の面々と会場に転移してきた。

「こ、これは……!」
「おお…なんと煌びやかな…」
「この様な城がリリエンタにあろうとは…」

神国の人達と同様に凄く驚いている。

「失礼だが、この城は元々リリエンタに存在していたのであるか?どの部族が所有しているのか?」
「昨日みんなで作りましたので、このお城に持ち主はいませんよ。全てが終わったら取り壊すつもりです。」

帝国に圧力をかけるために作ったんじゃないので心配しないでください。

「取り壊す…のか…。」

何だか残念そうな皇帝陛下。
壊さないと帝国にとっては嫌だよね?

控室をご用意していますので、ご案内しますね。

部屋には飲み物や簡単な食事も用意しておいた。
警戒して利用してくれないかと思っていたけど、護衛の人が毒味をしてから其々に配っていた。

「ミナさん…少しお話宜しいですか?」

話しかけてきたのはレア皇女だ。やっぱり雰囲気が違う。《アドラステア》が作動していないからかも知れないけど、記憶障害が直っているのならこの交渉に支障が出るかも知れない。

「はい。私もお聞きしたい事があります。」
「そうですか。ミナさんからどうぞ。」

部屋の隅に移動して話をする。

「皇女殿下は記憶が戻っておられますか?」
「…はい。先日はお見苦しい所をお見せしました。」
「今回の戦争を指示したの皇女殿下だとお聞きしていますけど本当ですか?」
「はい…私がお話ししたい事はその件です。」

戦争の発端が自分にあったと認めるレア皇女。何やら思い詰めた表情をしているけど…

「私の出来る事ならお手伝いします。話してください。」
「私は時折記憶が曖昧になるのです。今回もその類の事だと思っていたのですが、様子がおかしくて……」

元々記憶障害があったって事かな?詳しく話を聞いてみよう。

レア皇女が言うには時折、数日の記憶が無くなっていてその間に指示した事が恐ろしい内容なのだとか。

「私は皇女殿下から神リヴェルティアを憎んでいると聞きました。それは本当ですか?」
「はい。私がミナさんにお話しした記憶は残っています。」

ユイさんから聞いた事を思い出しながらレア皇女に今までの事で自分自身でやってきた事といつの間にか指示していた事を区別していく。
どうやら大陸統一までは全て自分でやってきたらしい。それ以降、転生者集めやアフターギフトの使用、魔王のギフトを奪う計画と今回の開戦は記憶が曖昧になっている事が分かった。

これはもしかすると…。

「皇女殿下、少し身体を調べさせて頂いても宜しいですか?」
「…はい。何か分かるならお願いします。」

《アドラステア》を起動してオーバーブースト付きの鑑定でレア皇女を調べる。
アウラさんにもサポートをしてもらって不審な点が無いか探す。

[神の残滓を検知しました。解析……女神リヴェルティアです。]

つまりリヴェルティア様がレア皇女の身体を乗っ取っていたって事だ。
事実をレア皇女に伝えよう。

「そうだったのですか…私はリヴェルティアを憎むあまりに人格が破綻していたのかと思っていました。」

それでもリヴェルティア様に復讐できるのなら構わないとさえ思っていたと彼女は言った。

「リヴェルティア様を憎む理由を教えてもらえますか?」
「はい。ただ…ここでは話辛いので場所を変えられませんか?」

空いている部屋は結構あるので、近くの空き部屋に行こう。

「ミナ殿、先程から何をされておられるのか…?」
「まさかレア皇女に危害を…」
「違う。ミナさんに相談したい事があったのだ。長年の謎が解けた。詳しく話をしたいので部屋を変える。」

レア皇女が厳しい口調で私を咎める護衛達を叱責する。

「相談も無しに申し訳ありません。護衛の方も数人お越し下さい。ウルちゃんとオル君はここに置いていきます。」

護衛はサトルさん、ナオトさん、リサさんが来る事に。
転生者の方が都合がいいのかな。

隣の部屋に移動してさっきの話を再開する。

「私はリヴェルティアに無理やり転生させられてアスティアに来たのです。」

この時点でヴェルトラオム様が取り決めた事と話が違う。
彼女は神界に連れて来られた時、記憶を失っていた。リヴェルティア様からは地球で不幸な目に遭って死亡した事とアスティアで新しく人生をやり直せると教えられる。何不自由の無い豊かな暮らしの出来る境遇に生まれ変わらせてくれると。

この辺りは私達とほとんど変わらない。

生まれたのはディルロード帝国。皇帝の実子だった。生まれた頃から後継者争いに巻き込まれて兄弟達と命のやり取りをさせられた。本人達が直接争った訳ではないけど、毎日何かに怯えて暮らす生活に、心が少しずつ壊れていくのを感じたとレアさんは語る。

転機が訪れたのは6歳の頃、ユイさんが教えてくれた他国侵攻だ。
敵国の攻撃は激しく帝国は敗戦を重ねていった。帝国が負ければ皇帝は勿論、その娘であるレアさんもただでは済まない。兄弟の中には他国に亡命する者も現れて、いよいよ帝国が滅びる一歩手前まできていた。

父親である皇帝に落ち延びる様に言われるも、この時失っていた記憶が戻る。
優しい家族に囲まれて幸せに暮らしていた前世、転がる様に転落していった辛く悲しい過去。
戸惑いはしたものの現状をどうにかしなければこの世界でも未来はない。

前世の知識を総動員して敵国の猛攻を凌ぎ切り、押し戻す事に成功した。

「多大な被害を出してしまいましたが、そこからは私が指揮をとる事で何とか勝ち続ける事ができました。今でこそ常勝の帝国などと言われていましたが、その実苦難の連続でした。」

軍の再編成から内政に到るまで、生き残る為に全てのことをやってきたとレアさんは語った。

「それと前世の記憶で府に落ちないことが幾つもある事に気付きました。ある時私は天啓を受けました。」

そこでリヴェルティア様に知らされたのは、レアさんが意図的に死ぬ様に仕向けられたという事だった。

「父の事業の失敗、母の病死、兄の事故死まで…あれが仕向けたものだと笑いながら言っていました。」
「そんな…アスティアの神様が地球に干渉できるんですか?」
「分かりません…。リヴェルティアは空間を司る神と言っていました。もしかしたら直接干渉できるのかも知れません。」

それが事実なら何でそこまでしてレアさんをアスティアに連れてきたのだろう?
これはリヴェルティア様に直接聞かないと分からないかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。