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魔王

アドラステア

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私はみんなに3つのギフトが統合されて《アドラステア》になった事、アウラさんでも解析が出来ない事を説明した。

「見る限り禍々しい感じはしないな。」
「邪気どころか神々しさすらある。」
「何にせよ身体が治って良かったよー。」

ダキアさん、クロウさん、アリソンさんは私の姿を見て安堵している。

「タイヤ付き?」
「クリーン作戦だっけか?」

ソラちゃんとマサキさんは名前について何やら話をしているけどいつもの通り分からないよ。

「何かおかしな所があればすぐに教えてくれ。ミナが気付かなくてもアウラが何か気付いたらみんなに知らせてくれよ。」

「分かりました。」

ルーティアさんに言われてアウラさんも了解してくれた。

「それであなた達、さっき聞き捨てならない事を言っていたわね。」

リオさんは支援デバイスを展開したまま帝国の人達を睨み付けている。既に魔法の詠唱をデバイスで完成させていて、いつでも魔法を放てる状態だ。

「弱ったどちらかを捕まえるとか言っていたな。魔王を捕らえて何をする気だ?」

ルーティアさんに言われてたじろぐ4人。

「もう根元の魔王はいなくなりました。ここで争うのはやめましょう。」

そう言って4人を見ると、彼らは私を見て怯えていた。

…ちょっと傷つく。

「まずは下の皆さんに魔王が討伐された事の報告と怪我人の手当てなどをしませんか?」
「そうだな。ここでもう一戦というのは不毛だ。」

一時休戦という事で救助を始めることになった。

まずは私がオーバーブースト付きのスターヒールで辺り一帯の怪我人の治療を行う。

《アドラステア》は作動したままだったんだけど、魔法の範囲や威力が上がっている気がする。

[範囲、効果共に200%上昇しています。]

《アドラステア》にそんな効果があるんだ。その他についてもどんな効果があるのか調べていかないとだね。

みんなを傷付ける様な事があったらいけないし。

「ミナ、声を拡張するから話してもらえる?今のあなたならみんな話を聞いてくれると思うのだけど。」

リオさんがそう言ってくる。

ああ…この姿って天の使いみたいだもんね。

「分かりました。」

背中の翼を羽ばたかせて上空へ。

「皆さん聞いてください。この地に居た魔王は討伐されました。」

そう言ってハッとなる。
魔王ってこの国の人達にとっては味方だったんじゃないかと。

だとしたら討伐した私達は憎むべき敵なんじゃ……

迂闊だったかな?

暫く町の様子を見ていた。それぞれが私を見上げていた。
そして静まり返っていた町に歓声がまき起こる。

「女神様だ!女神様が魔王を討伐してくれたんだ!」
「女神様!幼き女神様万歳!」

えぇ…女神様って…

まあでも、ここの人達が魔王信奉者じゃなくて良かったよ。

「これより皆さんに復興の為の支援を行います。様々不自由があるとは思いますが全員を救うつもりですので落ち着いて指示に従ってください。」

町の復興はもう何回目だろう?
みんなで手分けしてやっていく。

[《アドラステア》による機能拡張を検知しました。《建設ビルディング》の応用で破壊された建造物の修復が可能です。新たな魔法は《修復リペアー》です。]

じゃあそれで町を直していこう。

近くにあった半分崩れた建物に《修復リペアー》をかけてみると、瓦礫が元の位置に戻っていって直ってしまった。亀裂も残っておらず、新築の建物みたいだ。

よし、これをオーバーブーストで範囲を広げて…

「《修復リペアー》!」

町の瓦礫が全て元の建物に戻っていく。

「な、何だこれ!?」
「俺の家が元に戻った!」
「安心してください。建物を修復しただけです。」

あとはこの町の代表を探して統治体制を確立する。

残念ながら根元の魔王が発生した時にこの国の代表と側近達は全員亡くなってしまったそうなので、有力者を集めて代表を決めてもらおうと思う。

集まったのは10人ほど。全員ハーフデビルだ。
こう言った話はルーティアさんがいれば私はいらないんじゃないかとも思ったけど、さっき私が討伐の宣言をしてしまったので席を外すわけにはいかなかった。

話し合いはルーティアさん主導でサクサク進んでいく。
それで、統治についての所で困った事を言い出す人が出てきた。

「女神様に統治していただけないでしょうか?」
「ええと…まず、私は女神ではありません。エルジュ国エリスト所属の冒険者です。なので国を治めるとかは出来ないです。」
「そこを何とか……形だけでも良いのです。ファルファーデとシュピルツァは心配ないでしょうが、セロムザードとアブレスは間違いなくレイファードに攻め入って来ます。このままでは多くの民の血が流れる事でしょう。」

なるほど…私が統治宣言すれば周辺国の侵攻は止められると。

いや、形だけでもそれは出来ないよ。

困っていたら犬の姿のオル君が私の隣で喋り出した。

「ミナ様は統治などに興味はない。しかしこの地の民を救いたいというお気持ちである。ならば我、オルフェリキタスがこの国を保護しよう。外交上ではアヴァロン神国が保護する事になるが、我も我が国もミナ様に付き従うものである。」
「おお!それはありがたい!是非お願い致します!」
「女神様は神竜様の主でしたか!」

オル君、私の気持ちを代弁してくれたのはすごく嬉しいけど、何気にすごい事を宣言しちゃってない?

でもそれでこの国の人達が脅かされないのならいいかな。

話がある程度まとまった所で聞きたい事があったので聞いてみる。

あの魔王について。
彼はアブレス国境に近い村の青年で、不当な侵攻を受けて村は壊滅。家族を失いその絶望から魔王へと変貌したらしい。

…どこかで聞いた話だよね?

「アブレスは他国に侵攻はしないとゼルグランと契約を交わして武具の輸入をしていた筈だ。それなのに侵攻したとなると軍部の暴発か。」

ルーティアさんは眉間にシワを寄せながら呟く。

「今回はアロートが絡んでいるから誘導された可能性もあるわね。」

リオさんの言う通り、あの神様ならアブレスの軍を誘導して今回の事件を起こさせたかもしれない。

本人はもういないので確認のしようはないのだけど。

「アブレスでこの事を知っている者がいないか聞いてみるとしよう。」

それなら私は直接神様に聞いてみようか。
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