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魔王
意図
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捕らえたハーフデビル達はレイファードの者だった。
魔王が同地で誕生して、レイファードは傘下に入ったという事は間違いないらしい。しかしそれは単純に人間と敵対しただけではなかった。
「人間共の事を許しはしない。村を焼き妻と娘を殺した。俺は魔王と共に戦い、人間共を根絶やしにする。」
彼らは人間に強い憎しみを抱いていた。
「それは確かなんですか?どこの国がそんな事を…」
「アブレスは魔物の排除を名目にレイファードに侵攻してきた。セロムザードもレイファードが先制してきたと捏造して攻撃を開始した。人間は汚い…俺達を騙し、全てを奪い取るつもりだ。」
それが本当なら、アブレスとセロムザードが攻撃されているのは当然の報いだって事…?
「でもそれが獣人族を攻撃する理由にはならないわ。」
リオさんが冷たく言い返す。
「そうね。人間相手だけならその理屈は通るわ。平穏に暮らしていただけの鼠人族達を襲っておいて、それでは理屈が通らない。」
「獣人族は我らが人間に襲われていても助けようともしなかったではないか!」
「でも鼠人族は人間にも加担はしていない。逆の立場でも何もしなかったはずよ。あなた達の争いに巻き込まないでもらいたいわね。」
「学校内のイジメじゃあるまいし、助けなかったから加害者扱いはないよな。」
ショウ君は興味無さげに言っている。
「あなた達には同情するわ。でも無辜の民を攻める理由にはならない。」
ジュンさんの言う通りだけど……
「巻き込まれた民はたまったものじゃない。国の思惑なんてどうでもいい。一番の犠牲者はどの国でもない、この大陸に住む全ての民。」
私が思っていたモヤモヤした気持ちをソラちゃんが言葉にしてくれた。
そうだよ。国とか種族とかで括るから、戦う相手を間違うんだよ。
「戦いの中心にいる魔王をどうにかしないとな。その魔王だって犠牲者かもしれない。周りの情報に惑わされるなよミナ。君のやりたい事はなんだった?」
ルーティアさんに言われてハッとなる。
私はここに人を助けに来た。
人間だけじゃない。理不尽な力に押し潰されようとしている全ての人を。
「そうでした。私は人を助けに来たんです。行かなくちゃ。」
「その為にはまず柱の破壊とこの混乱のど真ん中にいる魔王に会いに行かないとな。俺達はお前についていくぞ。」
ダキアさん達は私をそばで支えてくれるし迷った時も導いてくれる。
リオさん達は私にできない事を沢山してくれる。
私は、私のやるべき事をやる。それだけだ。
「捕虜は丁重に扱う様に私から話しておくわ。」
村の獣人族にはカオリさんが話しておいてくれるらしい。
「まずは情報を集めてもらうから今日はこの村で休んで行きなさい。」
お言葉に甘えさせてもらおう。
ーーーー
とはいえ……
この村も良い状況とはとても言えない。
怪我人や病人も多く、食料も足りていない。
「こういう時の為の救援物資よね。」
「はい。」
「インベントリの食料を出す。」
「私は怪我人の回復をしますね。」
「では私は病人を診てみます。」
村の人達は疲れ切っていた。栄養状態もかなり悪い。とにかくやれる事をやっていこう。
私はラッキーシュートをかけた《スターヒール》で村にいる全員を回復した。
続いて病気の治療。元々衛生面が悪い事と戦闘による怪我人の増加による更なる衛生面の悪化がこの村の状態をさらに悪くしている。
「ミナ、オーバーブーストと《フォルトゥナ》で支援して。試してみたい事がある。」
「はい!」
リオさんに考えがあるらしい。
私は《フォルトゥナ》を起動してオーバーブーストをリオさんに掛ける。
「いくわ。《キュアディジーズ》!」
リオさんが使ったのは病気を治す魔法。
これは症状に応じて細かく変化をさせて作用させる魔法らしい。それを範囲で使っても病気の治療はできない筈だ。
でもリオさんがやっているんだ。信じよう。
「あれ…身体が…軽い。」
「ホントだ。」
「一体何が…?」
病気で苦しんでいた獣人族の皆さんが回復していく。
「狙い通りね。ミナの非常識な能力ならまとめて治療が可能よ。でもこのままじゃまた病人が出るから衛生指導が必要ね。私とユキがやるからミナはソラと一緒に食事をなんとかしてあげて。」
「はい!」
他の人達もそれぞれ手分けをして手伝ってくれて、食事も衛生面の改善もすぐにできてしまった。
私とネネさんで《建設》を使って家も建ててしまおう。
「あなた達…とんでもないわね。まさかずっとこんな事をしてきたの?」
獣人族の代表達と話をつけて戻ってきたカオリさんが驚いている。
「聖国の難民の救済やリリエンタ…東の国の復興とか、色々やってきましたから。」
「なるほど…流石の手際って事ね。休ませるつもりが助けられてしまったわ。本当にありがとう。」
「いえ、この為に来たんですよ。私は人を殺す為に来たんじゃない、助ける為に来たんです。」
役に立てて良かったよ。
食料と医薬品も多めに渡しておいたのでこれで暫くは大丈夫だろう。カオリさんから聞いたけど、今晩中には偵察に出た人達が戻ってくるらしい。
私達も夕食をとってここで休ませてもらうことにした。
みんなが寝静まった頃、誰かが外で話をしているのに気付いた。
ユキさん、リオさん、ソラちゃんは眠っていて気付いていない。
起こさない様に建物を出て様子を見にいく。
「へえ…それがあなた達の本当の目的なの?」
「本当の、ではないがサンプルが欲しい。魔王の生体を知る大切なものだ。」
話しているのはカオリさんと、マサムネさん?
「見返りは?」
「相応の金と、他に望むものがあれば聞こう。」
「今あれを手放す気はないわ。私に戦闘力はない、私の武器は彼だけなの。」
「そうか。残念だ。」
「あら、意外に素直に引き下がるのね。てっきり私を殺して奪い取るかと思ったのに。」
「そんな事をしても怒り狂ったあの魔王が俺達を殺すだけだろう。それに、俺の呼び出しに何の用意もなく来るわけもないだろうからな。」
「察しが良くて助かるわ。形だけとはいえ、ここで味方同士が殺し合うのは良くないわ。」
カオリさんの背後に魔王が現れる。
いつの間に…?
「暫くは味方同士。仲良くやりましょう。」
カオリさんは戻っていく。マサムネさんもだ。
私も自分の部屋に戻ることにした。
魔王が同地で誕生して、レイファードは傘下に入ったという事は間違いないらしい。しかしそれは単純に人間と敵対しただけではなかった。
「人間共の事を許しはしない。村を焼き妻と娘を殺した。俺は魔王と共に戦い、人間共を根絶やしにする。」
彼らは人間に強い憎しみを抱いていた。
「それは確かなんですか?どこの国がそんな事を…」
「アブレスは魔物の排除を名目にレイファードに侵攻してきた。セロムザードもレイファードが先制してきたと捏造して攻撃を開始した。人間は汚い…俺達を騙し、全てを奪い取るつもりだ。」
それが本当なら、アブレスとセロムザードが攻撃されているのは当然の報いだって事…?
「でもそれが獣人族を攻撃する理由にはならないわ。」
リオさんが冷たく言い返す。
「そうね。人間相手だけならその理屈は通るわ。平穏に暮らしていただけの鼠人族達を襲っておいて、それでは理屈が通らない。」
「獣人族は我らが人間に襲われていても助けようともしなかったではないか!」
「でも鼠人族は人間にも加担はしていない。逆の立場でも何もしなかったはずよ。あなた達の争いに巻き込まないでもらいたいわね。」
「学校内のイジメじゃあるまいし、助けなかったから加害者扱いはないよな。」
ショウ君は興味無さげに言っている。
「あなた達には同情するわ。でも無辜の民を攻める理由にはならない。」
ジュンさんの言う通りだけど……
「巻き込まれた民はたまったものじゃない。国の思惑なんてどうでもいい。一番の犠牲者はどの国でもない、この大陸に住む全ての民。」
私が思っていたモヤモヤした気持ちをソラちゃんが言葉にしてくれた。
そうだよ。国とか種族とかで括るから、戦う相手を間違うんだよ。
「戦いの中心にいる魔王をどうにかしないとな。その魔王だって犠牲者かもしれない。周りの情報に惑わされるなよミナ。君のやりたい事はなんだった?」
ルーティアさんに言われてハッとなる。
私はここに人を助けに来た。
人間だけじゃない。理不尽な力に押し潰されようとしている全ての人を。
「そうでした。私は人を助けに来たんです。行かなくちゃ。」
「その為にはまず柱の破壊とこの混乱のど真ん中にいる魔王に会いに行かないとな。俺達はお前についていくぞ。」
ダキアさん達は私をそばで支えてくれるし迷った時も導いてくれる。
リオさん達は私にできない事を沢山してくれる。
私は、私のやるべき事をやる。それだけだ。
「捕虜は丁重に扱う様に私から話しておくわ。」
村の獣人族にはカオリさんが話しておいてくれるらしい。
「まずは情報を集めてもらうから今日はこの村で休んで行きなさい。」
お言葉に甘えさせてもらおう。
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とはいえ……
この村も良い状況とはとても言えない。
怪我人や病人も多く、食料も足りていない。
「こういう時の為の救援物資よね。」
「はい。」
「インベントリの食料を出す。」
「私は怪我人の回復をしますね。」
「では私は病人を診てみます。」
村の人達は疲れ切っていた。栄養状態もかなり悪い。とにかくやれる事をやっていこう。
私はラッキーシュートをかけた《スターヒール》で村にいる全員を回復した。
続いて病気の治療。元々衛生面が悪い事と戦闘による怪我人の増加による更なる衛生面の悪化がこの村の状態をさらに悪くしている。
「ミナ、オーバーブーストと《フォルトゥナ》で支援して。試してみたい事がある。」
「はい!」
リオさんに考えがあるらしい。
私は《フォルトゥナ》を起動してオーバーブーストをリオさんに掛ける。
「いくわ。《キュアディジーズ》!」
リオさんが使ったのは病気を治す魔法。
これは症状に応じて細かく変化をさせて作用させる魔法らしい。それを範囲で使っても病気の治療はできない筈だ。
でもリオさんがやっているんだ。信じよう。
「あれ…身体が…軽い。」
「ホントだ。」
「一体何が…?」
病気で苦しんでいた獣人族の皆さんが回復していく。
「狙い通りね。ミナの非常識な能力ならまとめて治療が可能よ。でもこのままじゃまた病人が出るから衛生指導が必要ね。私とユキがやるからミナはソラと一緒に食事をなんとかしてあげて。」
「はい!」
他の人達もそれぞれ手分けをして手伝ってくれて、食事も衛生面の改善もすぐにできてしまった。
私とネネさんで《建設》を使って家も建ててしまおう。
「あなた達…とんでもないわね。まさかずっとこんな事をしてきたの?」
獣人族の代表達と話をつけて戻ってきたカオリさんが驚いている。
「聖国の難民の救済やリリエンタ…東の国の復興とか、色々やってきましたから。」
「なるほど…流石の手際って事ね。休ませるつもりが助けられてしまったわ。本当にありがとう。」
「いえ、この為に来たんですよ。私は人を殺す為に来たんじゃない、助ける為に来たんです。」
役に立てて良かったよ。
食料と医薬品も多めに渡しておいたのでこれで暫くは大丈夫だろう。カオリさんから聞いたけど、今晩中には偵察に出た人達が戻ってくるらしい。
私達も夕食をとってここで休ませてもらうことにした。
みんなが寝静まった頃、誰かが外で話をしているのに気付いた。
ユキさん、リオさん、ソラちゃんは眠っていて気付いていない。
起こさない様に建物を出て様子を見にいく。
「へえ…それがあなた達の本当の目的なの?」
「本当の、ではないがサンプルが欲しい。魔王の生体を知る大切なものだ。」
話しているのはカオリさんと、マサムネさん?
「見返りは?」
「相応の金と、他に望むものがあれば聞こう。」
「今あれを手放す気はないわ。私に戦闘力はない、私の武器は彼だけなの。」
「そうか。残念だ。」
「あら、意外に素直に引き下がるのね。てっきり私を殺して奪い取るかと思ったのに。」
「そんな事をしても怒り狂ったあの魔王が俺達を殺すだけだろう。それに、俺の呼び出しに何の用意もなく来るわけもないだろうからな。」
「察しが良くて助かるわ。形だけとはいえ、ここで味方同士が殺し合うのは良くないわ。」
カオリさんの背後に魔王が現れる。
いつの間に…?
「暫くは味方同士。仲良くやりましょう。」
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