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武具大会

暗殺、ありえない。

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それは一瞬の出来事だった。

「ミナさん!」

ユキが叫んだ時にはミナの喉元を掻っ切られていた。
パキンとガラスの様な物が砕ける音がしてミナの喉の切り傷が消えていく。

護身のアミュレット、着けていたんだ。

直ぐにダキアさん、クロウさん、アリソンさんが男に攻撃をする。

ミナも無意識に使ったのか、アクセラレーションを作動させて、椅子を跳ね飛ばして男と距離をとっていた。間にウルとオルが割って入った。

私も無詠唱で攻撃魔法を放つ…つもりだった。

一瞬で男はミナに詰め寄っていた。
ミナの足元には大量の粘度のある赤い液体が溢れ落ちていく。

そんな……!

「ミナ!」
「ミナさん!」
「ねーちゃん!」

ソラ、ユキ、テュケが叫ぶ。
私は回復魔法を準備する。

奴は速度特化か…。アクセラレーションよりも圧倒的に速い。鑑定を仕掛けたら敏捷は65535と出た。

最悪だ。

ミナは力無く男に寄りかかると最後の力を振り絞って男の頬に爪を立てる。
そしてそのまま床に崩れ落ちた。

風が巻き起こる。
ルーティアさんは一瞬で男の後ろに現れると蹴りを放っていた。
が、やはり男は躱していた。

いつの間にか部屋の隅に移動している。

「任務は完了…か。簡単なもんだぜ!」

ウルとオルが飛び掛かる。どう動いたのか全く見えない位の速度で。
それでも男は捕らえられない。

「安心しろよ!お前ら全員、殺してやるからなぁ!」

男が消える。次の瞬間ルーティアさんの前に現れていた。
まさかルーティアさんまで…?

いや、短剣が喉元に届く寸前の所で止まっていた。

「何ぃ…?俺の動きについて来れる奴がいるのかぁ?」
「ルーティアさん!離れて!」

アリソンさんが自分の短剣を投げて男の攻撃を逸らしたのだ。
慌てて下がるルーティアさん。

「女ぁ、お前…チートも無ぇ癖になかなかやるじゃねぇかぁ…。」

アリソンさんは応えない。一本になった短剣を構えて険しい表情で睨みつける。

多分、攻撃を予測して短剣を投げたんだろう。狙ってやれる事じゃない。

つまり、次は誰かが死ぬ。

[サポートします。目的は達成しました。対象のギフト《????》他《ヘルプ機能》、《アイテムボックス》、《情報隠蔽》を強奪しました。]

ヘルプ…何を言っているの…?

「《ヘルプ機能》だぁ?随分とお優しいギフトを持ってるじゃねぇか。」

[サポートします。現在一番脅威となるのは銀髪の女性、ユキです。あらゆる攻撃が効きません。]

「目を潰してもかよ?」

[効きません。]

「そりゃスゲェな。その能力、頂いちまうか!」

[無効。ギフト《強奪》は対象者にダメージを与えなければ作動しません。]

ギフト《強奪》…?それでミナのギフトを奪ったって事?ヘルプまで……。

「私が押さえます!誰かミナさんを!」

ユキが男の前に飛び出していく。

「遅ぇよ!」

一瞬で何箇所も服に切り込みが入る。何十箇所もだ。

「ははっ!本当に効かねぇじゃねぇかよ!」
「私はどんな事をされても死にませんよ。」
「それなら他の奴から順番に殺すだけだ。」

先輩達が次々と攻撃を仕掛けるけど全て当たらない。速度特化、どんだけ強いのよ…。

[2番目の脅威は褐色の肌、銀髪の少年テュケ。ステータスが全て最大値です。]

「じゃあソイツからだなぁ!」

ヘルプ!完全に奴のギフトになってしまったの!?
いや…なんで態々私達に聞こえる様にしている?
まずはミナの手当てだ。即死の可能性が高いけど私には魔法がある。

《レイズデッド》

死んだばかりならこれで生き返せる。

注意を引かない様に慎重にミナの所へ移動する。

「おい、何やってんだ?」

背筋が凍る。

今、私の後ろに奴がいる。

殺される…。

「お願い…殺さないで…。」
「ああ?」
「目的は果たしたんでしょ?もういいじゃない。私は地球で滅多刺しにされて死んだの。ここで自由に生きていきたいの…ギフトが欲しいならあげるわ…だからお願いよ…。」

精一杯か細い声で懇願する。

「リオ!今助ける!」

ソラが男に向かって石を投げた。それは簡単に躱されてしまう。

「駄目だな。」
「そんな…なんで…?」
「俺は殺しが好きなんだよ。前世は死刑囚。史上最悪の殺人鬼と言われていたんだぜ?メシを食うよりも女を抱くよりも殺しが好きなんだ。だから殺す。お前みたいな女は好きだぜ。両手足を切り取って泣きながら死んでいくのを見届けてやるよ。」

この男…イカれてる。

[目の前の女性、リオは魔法を全て使用できるギフトを有しています。しかし貴方には魔法を全て使い熟せるだけの知力と精神力が不足しています。]

「うるせぇよ!…この女のギフトはハズレか。」
「やめて…お願い…。」
「そう言われちゃ、余計に殺したくなるなぁ!」
「やめろ!!やるなら俺からやれ!!」

テュケが飛び出してくる。武器も無いのに…。

「殺されたい奴は後回しにしてやる。まずはこの女からだ!」

……時間は、稼いだわよ。
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