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ゼルグラン

ルール

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「今回も出るんだろ?」
「ええ、出たいのですが…。」
「出場者がいないんだね。」
「はい。この前みたいに自分で出ても間違いなく性能を発揮出来ずに負けてしまうのがオチなので。」

どうやらロックさんは自身で大会に出てボロ負けした事があるらしい。

「この子に装備を提供してくれないか?」

ソラちゃんが前に出る。

「この子に…ですか?確かに僕の作る装備なら軽量化も出来ますしティターニアの子でも扱えますけど。無理に出なくてもいいんですよ。」
「勘違いしているのかも知れないけど、ロックの為に連れて来たんじゃないんだ。この子が出たいって言うからね。」
「ソラ。宜しく。」
「僕はロック。ドワーフの国で鍛冶師をやってる変わり者だよ。よろしくね。」

自分で変わり者って言っちゃったよ。

ロックさんは元々エリストで鍛冶屋さんをしていたらしい。もう亡くなってしまったけど、ロックさんの師匠はドワーフで、エリスト一の鍛冶師として知られていた。師匠が老衰で亡くなってからゼルグランに一人渡り、こうして鍛治師として頑張っているのだとか。ただ本場のドワーフの武具の方が圧倒的に人気があり、ロックさんの作った武具は全然売れないのだそう。

「最近は新しい技術で武具を作り始めた事で余計に売れなくなってしまったんだよ。」
「また余計な事を。で、どんな方法なんだい?」
「錬金術を使うんです。」
「変な事を思いついて…。」
「しかしこれは凄い技術なんです!武具製造の革命なんですよ!」
「…まあ受け入れてくれるかは使い手による訳だからさ。」

錬金術って化学の話かな?

[この世界の錬金術は魔法を用いて物質を変異させたり加工させる技術の事を指します。]

ファンタジーな錬金術なんだね。

「等価交換?」
「そっちの錬金術に近いんじゃない?」

それなら知ってる!ってそれは取り敢えず置いておいて。

「ソラに使える武具を用意出来るなら大会に出られるよ。できるかい?」
「勿論!武器はどんなのが好みかな?取回しの効く小剣とかがいいかな?」
「ハルバードがいい。」
「なるほど、でも君が持てる様に軽量化すると威力が随分と下がってしまうから槍にするのはどうかな?」

ソラちゃんはインベントリから自分のハルバードを取り出して振り回して見せて、ロックさんに渡した。

「これは……!!分かった。普通通りの重量の物を用意するよ。鎧や他の防具の準備もしなくちゃいけないから採寸させてもらうよ。」
「ん。宜しく。」

今回の大会は出場者もそうだけど装備も主役で、大会は予選はブロック別のバトルロイヤル、決勝は一対一のトーナメント方式。対戦のルールは相手の戦闘不能か降参。または装備武具のうち2つを破壊もしくは脱落させられたら敗退。それから大会が開始されたら装備のメンテナンスは一切出来ない。
装備は3点以上身につけなければならないのと、攻撃は必ず装備を介して行わなければいけない。つまりパンチやキックで攻撃するには手甲や足甲が必要で、投げや関節技、射撃、投擲攻撃は禁止。武器を投げて攻撃した場合は拾っての再使用は不可。最後まで残るには武具が壊れない様に戦い抜かなければならないらしい。

あの石も投げられないしソラちゃんは結構不利なんじゃない?

「じゃあ、装備は丈夫さ重視のハルバードと鎧、両手足の防具だね。」
「あい。」
「早速製作に取り掛かるよ。」

ロックさんとソラちゃんの打ち合わせは終わったみたい。

「大会は3日後だけど間に合うの?ソラに合う防具だと一から作らなきゃいけないだろう?」
「大丈夫。僕のやり方なら直ぐに完成出来るよ。ただ、大会用のミスリルを買いに行かないといけないけどね。」
「大会用のミスリル?」
「うん。この大会は指定の材料があるんだ。三ヶ月前から売り出されていてそれを使って武具を作らないと出場出来ないんだ。」
「材料の仕入れで差が出ない様にするためですか?」
「その通り。資金の差でライバルに差をつける事もできない様になっているんだ。」

金属はミスリル限定らしい。製作者の腕と出場者の能力だけで勝負するものなんだね。

「もし今からミスリルを買いに行くなら同行させていただいてもいいですか?」
「うん。いいよ。早速行こう!」

急遽だけどロックさんの材料の仕入れに同行させて貰うことになった。
材料は鍛治ギルドに行けば買えるそうなのでみんなで移動する。

中はエリストの冒険者ギルドみたいな作りになっていて、ロックさんは受付の人のいる所へ歩いていく。

「おう、ロック、今回は出ないのか?」
「はい。出場者が決まったので材料を買いに来ました。」
「そうか。そいつは良かった。俺はお前の武具気に入っているんだ。頑張れよ!」
「ありがとうございます。」

受付の人はロックさんの事を評価してくれているみたい。快くミスリルを売ってくれた。

「なんだぁ?お前まだ鍛冶屋やっているのか?」
「とっくに破産して帰ったと思っていたんだがな。」

受付から離れた直ぐでドワーフ2人組に声を掛けられる。

「ははは。まだ諦めきれずに細々とやっています。」
「大会に出るのか?」
「お前じゃ無理だ。やめとけやめとけ。」
「出るのは僕じゃないんです。」
「私が出る。」
「は?……はっはっはっ!!何でティターニアの子供が出るんだよ!」
「無理だ無理!ティターニアが扱える武器じゃ大会で勝ち残るなんて無理だぞ!それにロックの作った武具だろう?怪我させるだけだぞ!」
「む、そんな事ない。」
「そうですよ。僕はソラさんに怪我を負わせる様な半端なものは作るつもりはありません。」
「半端者がよく言うぜ!」
「やめんかバカモン!!」

何か面倒な人達に絡まれたかなと思っていたら違う方向から怒声が聞こえて来た。あまりの声の大きさに思わず全員が静かになった。見たらグリエールさんだった。

「この大会は誰が出ても良い大会だ。くだらん固定観念にとらわれて他人にちょっかいなどかけるな!ドワーフ族の恥だ!」
「なんだと!」
「やるなら相手になってやるぞ。かかってこい!」
「大会に出たければやめておけ。グリエールと殴り合った奴で、3日以内に復帰出来た奴はいない。」

受付のドワーフさんが言うと、2人組はすごすごと逃げていった。
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