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戦争

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「そんな事より最近変わった事はありませんか?西側の国、ゼルグランとか。」
「特には無いわよ。強いて言うなら山を越えて聖国の民が来ている位かしら?」

マイナさんが教えてくれた。

「難民の受け入れで北部の村は大変みたいね。エリストからも援助物資を輸送しているわ。」
「俺たちも輸送隊の護衛任務で行ったよ。人が物凄く増えていた。」

レイアさんとエルクさんが付け足してくれる。

考えられるとしたら、北部の難民受け入れで領内の守りが手薄になるくらいかな。元々兵士の数も足りてないし、南沿岸部には帝国の船が来て人攫いなんてしていたし、南部の守りを強化しないと危ないんじゃないかな。

「ミルドさんに相談した方がいいでしょうね。」
「そうだね。会いに行こうか。」

『黒鉄の刃』のみんなとエルクさん達にお礼を言って、辺境伯の屋敷に行く事にする。

門でミルドさんに話したい事があると伝えると、門衛さんは直ぐに屋敷の中に通してくれた。

正直この屋敷は良い思い出がない。記憶が殆ど無いとはいえ、入るのにはちょっと気が引ける。

「ミナ様。どうかご安心を。元凶はもうここにはおりません。」

ウルちゃんが私の足元で言う。
そういえば領主様って何かあったの?

「先代領主は既に亡くなっております。現在は嫡男が後を継いでいますね。」

ウルちゃん、何で詳しいの…?

客間に通されて待っていると、すぐにミルドさんが来てくれた。

「早速訪ねてくれて嬉しいよ。何かあったのかい?」
「今、南部の守りってどうなっていますか?あと、人攫いの事件から結構経ってますけど、その後帝国の船は現れたのかなって。」

ミルドさんが言うには、私達が撃退した後は不審な船が近くに来たという報告は無い。ただ、他の漁村でも誘拐事件が発生していたそうで、後の調査で分かったらしい。
今現在も沿岸部の警備を強化していて、足りない所は冒険者にも依頼を出して対応しているとか。

「隣のレーヴェ男爵、シュヴァイエ伯爵とも連携して沿岸部の守りを固めているよ。」
「それなら安心ですね。」
「それがそうでもないんだ。レーヴェ男爵には幾つか不審な点があってね。もしかしたら帝国と繋がっている恐れがある。」
「マズいじゃないの。」
「うん。今内偵を進めているところなんだ。もしも帝国と通じていて謀反の可能性がある場合は直ぐに鎮圧出来る。中央とも連携済みだ。」

前の領主様の時よりもずっとしっかりしているみたい。嫡男って長男の事だっけ?確かあのキノコの貴族だった筈…あの人意外とスゴい人だったんだね。

「兄はああ見えて強かでね。父なんかよりもずっと領主に適しているよ。」

凄く意外です。

「何か聞きたい事があったら何時でも来てくれて構わないからね。君達が来たら必ず通す様に言ってあるから。」
「ありがとうございます。」

ミルドさんにお礼を言って早々に屋敷を後にした。

「以前よりもしっかり回っていますね。」
「うん。これからも頑張ってほしいね。」
「ミナはここでもやらかしたんだっけ?」
「ここでもって…ここでは完全に被害者です!ユキさんに助けられましたけど。」

その事はあまり思い出したくない…。特に宿に戻ってからの事は。

「さ、さあ!町の案内がまだ出来てませんでしたね!行きましょう!」

それから一通り町を案内してギルドに戻ってルーティアさん達に挨拶をして、ルブルスリウムに戻る事にした。

「とりあえず部屋を用意しようか。私達が使う専用のをね。」

転移した先は樹海の迷宮の孤児院エリア。孤児院の空いている所で寝ようかと思ったけどリオさんに遮られた。

「子供達が怯えるからやめておきなさい。」

怯えるって…。

『ミナ!おかえりー!』

フィオレさんが飛んできた。私達の住まいを作る話をしたら『もうあるよ!』と指を差す。
そちらを見ると孤児院の半分位の大きさの屋敷が建っていた。

「気が効くじゃない!ありがとフィオレ!」
『いやいや!マスター達の住まいぐらい用意しないとだよ!あたし達も使うけど!』

フィオレさんの用意してくれていた屋敷は本当に大きくて、貴族の屋敷の様に調度品まで置かれていた。

「これをフィオレさんが?」
『うん。ティナとか子供達や竜達にも聞いて参考に作ったよ!』
「ありがとうございます。」

私達の部屋は個室で用意してくれていた。部屋はまだまだ沢山空いていて、大きなキッチンにお風呂まであった。

夕食はルサルカさんが作ってくれていた。元々料理はできなかったらしいけど、子供達の世話をしながら一緒に作っているうちに出来る様になったそう。

「ユキの為に愛を込めて作ったのよ?」
「隠し味?」
「そんな隠し味はいらないです。」

ユキさん、まだルサルカさんが苦手なんだね。

夕食もご馳走になってお風呂も使わせてもらう。
辺境伯の所のお風呂、まではいかないけど、広くて久しぶりにのんびり入る事ができた。

ダイニングでお茶を飲みながらのんびりくつろぐ。
こういうのいいね。

「明日は東側へ行って説得するんでしょ?」
「はい。私の話で踏み止まってくれるかは分かりませんけど。」
「不安なら私の部下達も連れていきましょう。」

オル君、それじゃ脅しになっちゃうんじゃ…?

「各町に一体ずつ守護竜を置いておけば安心でしょう。弱いので良いんだけど、用意できる?」
「はい。お任せください。」

何か勝手に話が進んでいるけど、各町の領主に話を通してからだよ?

「恐怖政治?」

ソラちゃん違うからね。

「そういえばオル君の眷属ってどれくらいいるの?」
「細かく数えた事はありませんが、神国内だけで3000は居たかと。」

そんなにいるんだ…。
神国って竜の国なんだね。

「ドラコニアンも含めれば倍以上になります。」
「ドラコニアンって?」
「普段は人の姿をしていて竜に変身できる種族の事よ。」
「孤児院に来ている竜達のこと?」
「あれは各属性竜王、私の側近ですので完全な竜種です。人の姿に変身しているのでドラコニアンとは逆ですね。」

そうなんだ。…って、属性竜王って物凄く偉い竜なんじゃないの?

「いえ、ミナ様の足元にも及びません。ミナ様の為ならばあれらは使い捨てても構いません。」
「そんな事言っちゃダメだよ。みんなオル君の事をお父さんって慕ってくれているんだから。もっと大事にしてあげなくちゃ。」
「はい。申し訳ありません。」
「顎でこき使ってる側が言う事じゃないけどね。」

リオさん私はこき使ってるつもりはないんですよ…。後でお礼もしようと思ってますし。
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