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アフターギフト

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次の日、採れたての野菜を受け取って、王都へ出発!

馬車一杯渡されたんだけどインベントリに全部入ったので鮮度もそのまま。普通に馬車を走らせるだけの行程だ。

あの魔物が出ないか心配していたけど、街道の警備もかなり増やされていて1、
2時間おきに兵士の姿を見た。

「随分と物々しいな。」
「そりゃ、あんな化け物が出るとなりゃ警備も強化されるだろ。」
「あれが人間だったっていうのは驚きましたが…。」

発生源が特定されていないので、どこにどれだけ現れるのかも分からない。しかもあれだけ強いのだから低ランクの冒険者は出会ったら逃げるしかない。
況してや旅人や商人では出会ったら死を覚悟するしかないかも知れない。

休憩の時にラッキーシュート付き鑑定で周りを見てみたけど、取り敢えず近くにはいないみたい。

それからは野営の時も鑑定をしたりして警戒していたけど、魔物も現れる事もなく無事に王都に帰ってくる事ができた。

野菜の納品は西区の商会だったので、馬車で直行する。

「こんにちは!ノシェットから野菜の運搬依頼で来ました。」

受付けの人に依頼書を渡す。

「ご苦労様。かなりの量だから倉庫に出してもらおうかな。」
「分かりました。」

倉庫で野菜を全て出すと、受付けの人は依頼書と野菜を交互に見比べながら丁寧に確認していく。

「こんなに鮮度がいいのは見た事がないよ。どうやって運んできたんだい?」
「アイテムボックスに入れてきただけですよ。」
「とすると君のアイテムボックスのレベルは相当高いんだね。野菜の劣化が全くない。失礼を承知で聞くけど、レベルはいくつだい?」
「20です。」
「20!?それはすごい!君、良かったらうちで専属の輸送員にならないか?いや、手が空いた時だけでもいい。輸送を指名依頼させて貰えないかな?」
「すみません。私は王都の冒険者じゃないので、エリストに帰らなくちゃいけないんです。」
「そうか……残念だ。」
「お役に立てなくてごめんなさい。」
「いやいや!でももし王都に来る事があったら教えておくれよ。」

LV20でも大人気だ。カンストしてますって言わなくて良かった。

納品を済ませて証明書を受け取って西区のギルドに提出に行く。このギルドに来るのは初めてだ。

ギルドに入ると見たことのある少年がいた。

「本当だって!ステータスボードで確認しておくれよ!」
「そこまで言うならいいけど。でも君、この間も来てなかったっけ?前に一度調べてるじゃない。」
「あの時は多分何かの間違いだったんだよ!」

ステータスボードに手を乗せているテュケ少年。

「あら、ホントだ。良かったね、これで君も冒険者になれるよ。」
「やった!」

まさか…。

「テュケ君。」
「お?この前のおねーちゃん!俺、冒険者になれるよ!」
「テュケ君、そのギフト誰に貰ったのですか?」

ユキさんがテュケ君に詰め寄る。

「え?元々の物だよ!初めから持ってたよ!」
「中央のマスターから聞いたけど、君にはギフトは無かったらしいけど?」
「そ、そんな事はないよ!」
「じゃあなんで東区に住んでる君がこんな所にいるのですか?」
「それは…。」

私はテュケ君を鑑定する。ギフトを注視して、結果はアイテムボックスLV1。
ラッキーシュートを使ってもう一度鑑定。今度はアイテムボックスLV1(アフターギフト)と表示された。

「ユキさん…。」

目で合図する。
ユキさんはテュケ君の肩を掴んで目線を合わせる。

「君がやった事は本当に危険な事なんですよ。」
「そんな事ないよ!誰でもできて安全だって言ってた!」
「やっぱり…その人の事詳しく聞かせてもらえますか?」
「う…分かったよ…。」

ここで話をするのも良くないのでギルドマスターを呼んでもらって個室で話をする事に。

「西ギルドのマスターのラグだ。アフターギフトについてはグラマスから聞いている。立ち会わせてもらう。」
「はい。お願いします。」

テュケ君は事の重大さを理解したのか、アフターギフトを貰った経緯を素直に話してくれた。

「俺達の住んでいるスラムに見慣れない男がやってきたんだ。身なりが良かったから身ぐるみ剥いでやろうって大人達が襲ったんだけど、とんでもなく強くてみんな返り討ちにあってさ。俺たちに『冒険者になる為に必要なギフトを欲しくないか?』って。俺も仲間達も冒険者になって早く稼ぎたかったから…。」
「どうやってギフトを受け取ったの?」
「小さな粒を渡された。飲めばギフトを授かるって。」
「飲んじゃったんだね。」
「うん。」

スラムの子供達にアフターギフトを与えて回っているんだ。悪性変異する事を知った上で。

「ねーちゃん…あの粒、飲んだらどうなるんだ?ギフトを貰えるだけじゃないんだろう?」
「うん。一種の病気みたいなものになっちゃうんだよ。まだ詳しくは分かっていないから、みんながその病気になるのか分からないけどね。」
「そうなんだ…。俺、どうなっちゃうんだ?町を追い出されるのか?まさかこのまま殺されるとか…。」
「そんな事させないよ…!」

思わず言っちゃったけどテュケ君達、アフターギフトを持っている人達をどうするかはこの町の人達が決める事だ。治療とか、対応策が見つからない場合は最悪殺されてしまうかも知れない。

『こんなどうしようもないガキは減った方が世の為だ。死んでしまっても誰も気にしないさ。』

市場で大人が言っていた言葉を思い出す。
全員が同じ考えを持っていないとしても、テュケ君の様な孤児達の命は軽い。
これが明るみに出れば迫害は更に加速するだろう。

「とにかく、隔離するしかないな。とりあえず俺達冒険者ギルドが保護しよう。人数にもよるが…。」
「かなりの人数になるかも知れません。設備はありますか?」
「ない。そして集めることによって対応が出来なくなる恐れもあるな。」

ダメじゃないですか…。たくさん隔離できて被害が出ないところ…町の外しかないのかな。いや…

「安全な隔離場所に心当たりがあります。少しだけ時間をください。」

そう言い一旦ギルドから出る事にした。
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