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王都

問題

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グランドトータスのレアドロップは短剣だった。

【アースダガー】 攻撃力 58
1日に一度土属性精霊魔法《アースヒール》を使うことができる短剣。

回復魔法が誰でも使えるのは嬉しい。
これはもう一つゲットして私とユキさんがそれぞれ持っておこう。

ーーーー

「ありがとうございました。」
『いやいや、あたしの方こそありがとう!ステキな名前も貰ったし、これからもよろしくね!』
「契約状態になったら私の方から何かしないといけない事ってあるんですか?」
『特にはないよ!たまには会いにくるか呼んでくれると嬉しいくらいかな。』
「そうなんだ…。」

まあそれなら別にいいよね。

『そだ、一つ話しておきたい事があったよ。』
「何でしょう?」

さっきまでの軽い口調ではない。真面目な話らしい。

『この辺りにはあたしを含めて4体のダンジョンマスターがいるんだけどさ、この前みんなで誰が一番リソースを稼げるかって勝負しようって話になったんだよ。』

ダンジョンマスター同士は交流とかするんだね。

『で、今も勝負の最中なんだけど、内一人がとんでも無いことをやろうとしてるんだよ。』
「何をしようとしてるんですか?」
『人間を沢山誘引して纏めて殺そうとしているんだ。』
「それは…!」
『だからそのダンジョンには行かないようにしておいてね。北のダンジョンだよ。』

これは放っておく訳にはいかない。

「止めるように言えませんか?」
『無理だと思うよ。あたし達も言ったんだ。『そんな事したら入って来なくなるよ』って。でも、『リソースを貯めればダンジョンの移転もできるからいいんだ』って。』

リスクと引き換えに何かを得るのがダンジョンだ。そこで死ぬ様な事があったとしてもそれは自己責任。
だけど意図的に殺す事を目的として人を招き入れるのは違うと思う。

…これは私の勝手な思いでしかない。

一度そのダンジョンマスターと話が出来れば良いのだけど。

「ミナさん、まずはルーティアさん達に相談してみましょう。」
「そうだね。私達だけでやる事じゃないよね。」

ダンジョンマスターと関わり合いを持っている事を知っているルーティアさん達なら相談しやすい。

『ミナがやめさせたいって言うならあたしも手伝うよ!西と南にも話をしておくね!』

フィオレさんにお礼を言って、私達は一度樹海の迷宮から出て相談に行く事にした。

ーーーー

ダンジョンから帰ったら受付に寄って帰還報告をしなければならない。その時にダンジョンで手に入れたアイテムで、不用品をギルドに買い取ってもらえるそう。私達はクリアーした階層を申告して、グリクミの実とアクスビークのクチバシと甲羅、ディペン草とディポイ草を買い取りに出した。

「全部で6万レクスだよ。こんな短時間でクリアーしてきたEランクとFランクは初めて見たよ。」
「「ありがとうございます。」」

お礼を言ってギルドから出ようとした時、出口を塞ぐ様に5人の冒険者が現れた。

「お前らここらのもんじゃないな?」
「あの短時間でダンジョンを攻略してきた?それも2人で?」
「どんなイカサマ使ったんだよ?」

…絡まれた。

イカサマといえば確かにそうだね。ダンジョンマスターに道案内してもらったし。
でもそれを正直に答える事は出来ないよ。

「えーと…運が良かっただけですよ。」
「運が良かっただあ?」
「はい。たまたま行った先に階段が会って、信じられない位スムーズに攻略できました。」

そうとしか答えられない。

「それで、何が言いたいんですか?」

ユキさんが冷たい声で言う。

「イカサマをやってるなら教えろって事だよ。俺達も効率よく稼ぎてえんだ。」
「子供連れの女がこんな短時間でクリアー出来る訳がねえだろ。」
「つまり、あなた方は私達より劣っているという事を認めたくないってことですね?」
「ああ?舐めた口効くじゃねえか。余程痛い目をみたいらしいな?」

「あなた方が私達よりも劣っているという事を証明してあげましょう。訓練所はありますか?」
「このアマ…!」
「こっちだ。ついて来い!」

何か変なことになってきた…。

「ユキさん、大丈夫?」
「大丈夫ですよ。こういうのは初めが肝心です。私達の実力を分からせておきましょう。」
「私がお相手しましょうか?」
「ありがとうございます。でもウルちゃんがやったら完全なイジメになっちゃいます。ここは私に任せてください。」

そう話しながら男達に着いて行く。他の冒険者達も見学に来る様だ。

「おう、ここだ。」
「こちらは私1人、武器は木の槍で戦います。あなた方は自分の武器でどうぞ。時間が勿体いないので5人一辺に来てください。」
「舐めやがって!お前が負けたら今晩俺達に付き合って貰うぜ。そこの子供も可愛がってやるからなあ!」

…さっきから私の事を子供子供って、失礼じゃないかな?年齢的には未成年だけどさ。

「はい。勝てたらですね。どこからでもどうぞ。」

ユキさんと男達の戦いが始まった。
鑑定で5人を確認しておく。

ファイターの長剣使いが3人、スカウトの小剣使いとソーサラー。レベルは7と8。全員20代前半位か、その年でそのクラスだとこれからが大変そう。

ファイター3人が一斉に斬りかかる。ユキさんは難無く盾で攻撃を弾いた。
続いてスカウトが背後に回り込んでの攻撃。それを予期していたのか、ユキさんは槍で足を払う。勢いよく転がるスカウト。

ソーサラーは魔法を放とうとするも、ファイター3人が邪魔で撃つことができない。

「おい!邪魔だ!さっさとドケよ!」
「うるせえ!てめえのへなちょこ魔法なんざ効くわけねえだろ!」

…まあユキさんには効かないけどね。

連携もまるで出来ていないし、攻撃も隙だらけ。ユキさんは冷静に1人ずつ槍で倒していく。
全員が倒れて動かなくなるまで5分とかからなかった。

「分かってもらえましたか?」
「く、くそ……!」
「こんな女に…!」
「くそっ!………《ファイアーボール》!」

私目掛けて魔法を撃ってきた!
…まあ、跳ね返るんだけど。

ソーサラーの人が偶然にも他の男達の側に居たため全員が火球で焼かれる。

「うわっ!?」
「あちっ!あちちちち!!?」

ユキさんも近くにいたけどノーダメージだ。

「性根を叩き直してあげようかと思いましたがその価値もありませんね。ミナさん、行きましょう。」
「うん。お疲れ様、ユキさん。」

ギルドから出て行く私達を止める人はいなかった。
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