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竜の国
父
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空から降りてきた竜の背に立っていたのは黒髪の中年男性。その風格は紛れもなく王のそれだった。
鋭い眼光で見下ろすと周りに居た者達は頭を下げる。
『何事であるかと聞いている?』
『これはこれは先王ギルディン様。今丁度奴隷で遊んでいたところです。あなたのご息女のエレ様の奴隷とね』
エレの父、ギルディンは説明を聞きながら真っ直ぐにアイレニヴを睨み付けていた。
『わ、私はこれで……』
『アイレニヴさん。必要が無いならその奴隷、私にいただけませんか?』
気圧されて立ち去ろうとするアイレニヴをエレが引き留める。
『ふむ……確かにこれはもういらないですが、タダでお渡しはできませんな。そこ奴隷と交換では如何でしょう?』
アイレニヴは私を見ながらエレに聞く。
『くだらぬやり取りはやめよ。アイレニヴ、お前がその奴隷を処分しようとしていたのを私は見ていた。必要の無い者ならば取引などせず手放せば良い』
『ぐ……わかりましたよ。グラムはエレ様にお譲りします』
既に王では無いが、ギルディンの言葉には逆らえない様だ。
『ありがとうございます。いずれ何かお礼をさせていただきますね』
『楽しみにしています。それでは私はこれで』
エレに返事をしながらそそくさと去っていくアイレニヴ。
「……何故俺を助けたのです?」
『それは、ええと……』
グラムに聞かれ返答に困るエレ。
「目の前で人が死にそうになっていたんだから当たり前だよ」
芽依はそう言うとグラムを助け起こす。
「しかし俺は……これまでに多くの同胞をこの手にかけてきた」
「そんなの関係ないよ。私は私の信念に従っただけだし。あ、でもそれはエレ……じゃなかった、ご主人様が許してくれるからなんだけど」
今頃になって設定を思い出して言い直している芽依。
『強き従者を従えて良く戻った。聞きたい事がある、ついて参れ』
『は、はい……!』
ギルディンがそう言うと、乗っている竜は勢いよく羽ばたき飛んで行く。私達はトコヤミの背に乗り、エレ、ロナディアと共に後を追う。
行き先はギルディンの居所だろうとエレは言っているが、街から随分と離れた瓦礫の山に近付いていく。
「もしかしてあそこ?」
『はい。元々私達が住んでいた家があった所です』
「ごめん……」
『いえいえ。でも、まだ建て直していなかったんですね』
芽依と話しながらエレはしんみりと呟く。
ギルディンを乗せた竜は瓦礫の手前に着地する。彼は降りると「ご苦労だった、休んでくれ」と告げ、竜は飛び立っていく。
私達もギルディンの近くに着陸した。
「まずはエレネージュをここまで連れて来ていただき感謝致します」
そう言うとギルディンは跪いて首を垂れる。どうやら私達が何者かを分かっている様ね。
「此方こそ話を合わせてくださったみたいで、ありがとうごぞいました」
「改めて名乗らせて頂きます。私はギルディン、ドラコニアンの王をしていた者です」
「私は泉の精霊ハルです」
立つ様に促すと、ゆっくりと立ち上がり穏やかな表情で私を見つめる。
「存じております。ここに来られたのは目的があっての事とお見受けしますが」
「ええ。ここに天空竜ラニターヴァスの子供が居る筈だけど」
ラニターヴァスはルドガイアの王に子供を奪われたと言っていたが、彼は元の王であると名乗っているし、その振る舞いを見る限り人質を取る様な真似をするとも思えない。
「はい。ラニターヴァスの御子は現王の城におります」
『スレイニグさんが……』
エレは今の王について思う所がある様ね。
「私達はその子を救い出す為に来たの。なるべく手荒な真似をせずに奪還出来れば良いと思っているのだけど」
「ならば私がスレイニグに話してみましょう。今の彼奴が応じる可能性は低いですが……」
ギルディンは協力してくれる様だけど穏便には済まなさそうね。
鋭い眼光で見下ろすと周りに居た者達は頭を下げる。
『何事であるかと聞いている?』
『これはこれは先王ギルディン様。今丁度奴隷で遊んでいたところです。あなたのご息女のエレ様の奴隷とね』
エレの父、ギルディンは説明を聞きながら真っ直ぐにアイレニヴを睨み付けていた。
『わ、私はこれで……』
『アイレニヴさん。必要が無いならその奴隷、私にいただけませんか?』
気圧されて立ち去ろうとするアイレニヴをエレが引き留める。
『ふむ……確かにこれはもういらないですが、タダでお渡しはできませんな。そこ奴隷と交換では如何でしょう?』
アイレニヴは私を見ながらエレに聞く。
『くだらぬやり取りはやめよ。アイレニヴ、お前がその奴隷を処分しようとしていたのを私は見ていた。必要の無い者ならば取引などせず手放せば良い』
『ぐ……わかりましたよ。グラムはエレ様にお譲りします』
既に王では無いが、ギルディンの言葉には逆らえない様だ。
『ありがとうございます。いずれ何かお礼をさせていただきますね』
『楽しみにしています。それでは私はこれで』
エレに返事をしながらそそくさと去っていくアイレニヴ。
「……何故俺を助けたのです?」
『それは、ええと……』
グラムに聞かれ返答に困るエレ。
「目の前で人が死にそうになっていたんだから当たり前だよ」
芽依はそう言うとグラムを助け起こす。
「しかし俺は……これまでに多くの同胞をこの手にかけてきた」
「そんなの関係ないよ。私は私の信念に従っただけだし。あ、でもそれはエレ……じゃなかった、ご主人様が許してくれるからなんだけど」
今頃になって設定を思い出して言い直している芽依。
『強き従者を従えて良く戻った。聞きたい事がある、ついて参れ』
『は、はい……!』
ギルディンがそう言うと、乗っている竜は勢いよく羽ばたき飛んで行く。私達はトコヤミの背に乗り、エレ、ロナディアと共に後を追う。
行き先はギルディンの居所だろうとエレは言っているが、街から随分と離れた瓦礫の山に近付いていく。
「もしかしてあそこ?」
『はい。元々私達が住んでいた家があった所です』
「ごめん……」
『いえいえ。でも、まだ建て直していなかったんですね』
芽依と話しながらエレはしんみりと呟く。
ギルディンを乗せた竜は瓦礫の手前に着地する。彼は降りると「ご苦労だった、休んでくれ」と告げ、竜は飛び立っていく。
私達もギルディンの近くに着陸した。
「まずはエレネージュをここまで連れて来ていただき感謝致します」
そう言うとギルディンは跪いて首を垂れる。どうやら私達が何者かを分かっている様ね。
「此方こそ話を合わせてくださったみたいで、ありがとうごぞいました」
「改めて名乗らせて頂きます。私はギルディン、ドラコニアンの王をしていた者です」
「私は泉の精霊ハルです」
立つ様に促すと、ゆっくりと立ち上がり穏やかな表情で私を見つめる。
「存じております。ここに来られたのは目的があっての事とお見受けしますが」
「ええ。ここに天空竜ラニターヴァスの子供が居る筈だけど」
ラニターヴァスはルドガイアの王に子供を奪われたと言っていたが、彼は元の王であると名乗っているし、その振る舞いを見る限り人質を取る様な真似をするとも思えない。
「はい。ラニターヴァスの御子は現王の城におります」
『スレイニグさんが……』
エレは今の王について思う所がある様ね。
「私達はその子を救い出す為に来たの。なるべく手荒な真似をせずに奪還出来れば良いと思っているのだけど」
「ならば私がスレイニグに話してみましょう。今の彼奴が応じる可能性は低いですが……」
ギルディンは協力してくれる様だけど穏便には済まなさそうね。
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