444 / 452
竜の国
出生
しおりを挟む
エレが案内してくれるとは言ったものの、今のドラコニアンは竜の姿を強制されているため人の姿で街に入れば目立ってしまうだろう。
「シルドレイクに住んでいるのはドラコニアンだけなの?」
「殆どがそうです。少数ですが人型の者を奴隷として使っている竜もいましたね」
エレの話によると、大勢で人の姿で乗り込むと目立ってしまうだろう。
「潜入するのなら案内のエレと竜のトコヤミが主軸になるね。それから少数の人員を二人の奴隷として連れて行くのが良いんじゃないかな」
私も颯太の言った事に賛成だ。
「竜の姿ならクオンもそうだけど、ルドガイアの者には顔が知られているから連れてはいけないわね」
「人の姿ならば気付かれぬよ。奴隷としてついていけば問題無かろう。どうせハルも行くのだろうから我も供をしよう」
「そうね。お願いするわ」
クオンは理解が早くて助かるわ。
「ハル様が自ら行かれるのですか?」
驚いた表情のまま聞いてくるエレ。
「ええ。こういう事は私が直接行くべきだわ」
「演技とはいえハル様を奴隷として連れて行くという事ですか……」
「ええ。よろしく頼むわね」
複雑な表情を浮かべるエレ。
「お母さんが行くなら私も行くよ!」
「分かったわ」
芽依もこの中ではかなり強い方だし、今更『危険だから来るな』とは言えない。
「えぇ……メイ様も?ま、まさかソータ様も来るなんて事はないですよね?」
「僕はシグルーンに残るよ」
「良かったぁ……」
颯太になら留守を任せられるわね。
「甚だ遺憾だが我もエレに屈服した竜としてついていくとしよう」
「トコヤミ様まで!?なんでですか?」
「お前、国の命に逆らっているだろう。命令無視を咎められるのは避けられん。だが強い竜を従えて帰って来たのなら許しを得られるが知れんからな」
トコヤミなりにエレの事を気遣っているのね。
一応確認したが、ドラコニアンの世界でもトコヤミの言った理屈は通るらしい。
「ありがとうございます……!私、頑張ります!」
「ところてエレのシルドレイクでの立場はどんなものなの?」
私がそう聞くと固まったまま動かなくなるエレ。話したくないほど酷い扱いを受けていたのだろうか?
「言いたくないなら話さなくて良いわよ」
「いえ……皆様にはいつかお話ししないといけないと思っていたので。この場で話します」
そう言うとゆっくりと座り、居住まいを正して話し始める。
「私は魔竜王ズロヴァストが支配する以前にドラコニアンの長をしていた一族の者です」
ズロヴァストが現れた最初期に攻め滅ぼされたのがドラコニアンの国シルドレイクだったらしく、その際に家族の殆どはズロヴァストに殺された。
当時まだ幼かったエレは家族が殺された事については後に聞かされたのだそうだ。
「あなたの家族で生きているのは?」
「父のみです」
「お父さんは族長だったのよね?真っ先に殺されそうなものだけど」
「父は見せしめとして生かされたんです。翼を捥がれて息絶える寸前の所で私以外の家族を目の前で殺されたと聞いています」
エレは俯きながら話を続ける。
「父はドラコニアンの中で一番強かったそうです。その父が手も足も出なくて、このままでは根絶やしにされてしまうと思い、絶対服従を誓う代わりに他のドラコニアンの命を助ける様にズロヴァストに頼みました」
「そうだったの」
「こうする他ドラコニアンが助かる道は無かったんです……でも他のみんなは父を責めました。立場を無くした父は今でも多分、魔竜王の小間使いをしています」
「お父さんに会いたい?」
「いえ……今は敵なので」
彼女の瞳には涙で濡れていた。
私はエレの側に行き小さくなっていた彼女を抱きしめる。
「分かりました。エレが協力してくれるのは嬉しいけど、無理をしなくて良いわ。トコヤミだけでもどうにかなるから」
「大丈夫です……やらせてください」
エレの決意は堅かった。
「シルドレイクに住んでいるのはドラコニアンだけなの?」
「殆どがそうです。少数ですが人型の者を奴隷として使っている竜もいましたね」
エレの話によると、大勢で人の姿で乗り込むと目立ってしまうだろう。
「潜入するのなら案内のエレと竜のトコヤミが主軸になるね。それから少数の人員を二人の奴隷として連れて行くのが良いんじゃないかな」
私も颯太の言った事に賛成だ。
「竜の姿ならクオンもそうだけど、ルドガイアの者には顔が知られているから連れてはいけないわね」
「人の姿ならば気付かれぬよ。奴隷としてついていけば問題無かろう。どうせハルも行くのだろうから我も供をしよう」
「そうね。お願いするわ」
クオンは理解が早くて助かるわ。
「ハル様が自ら行かれるのですか?」
驚いた表情のまま聞いてくるエレ。
「ええ。こういう事は私が直接行くべきだわ」
「演技とはいえハル様を奴隷として連れて行くという事ですか……」
「ええ。よろしく頼むわね」
複雑な表情を浮かべるエレ。
「お母さんが行くなら私も行くよ!」
「分かったわ」
芽依もこの中ではかなり強い方だし、今更『危険だから来るな』とは言えない。
「えぇ……メイ様も?ま、まさかソータ様も来るなんて事はないですよね?」
「僕はシグルーンに残るよ」
「良かったぁ……」
颯太になら留守を任せられるわね。
「甚だ遺憾だが我もエレに屈服した竜としてついていくとしよう」
「トコヤミ様まで!?なんでですか?」
「お前、国の命に逆らっているだろう。命令無視を咎められるのは避けられん。だが強い竜を従えて帰って来たのなら許しを得られるが知れんからな」
トコヤミなりにエレの事を気遣っているのね。
一応確認したが、ドラコニアンの世界でもトコヤミの言った理屈は通るらしい。
「ありがとうございます……!私、頑張ります!」
「ところてエレのシルドレイクでの立場はどんなものなの?」
私がそう聞くと固まったまま動かなくなるエレ。話したくないほど酷い扱いを受けていたのだろうか?
「言いたくないなら話さなくて良いわよ」
「いえ……皆様にはいつかお話ししないといけないと思っていたので。この場で話します」
そう言うとゆっくりと座り、居住まいを正して話し始める。
「私は魔竜王ズロヴァストが支配する以前にドラコニアンの長をしていた一族の者です」
ズロヴァストが現れた最初期に攻め滅ぼされたのがドラコニアンの国シルドレイクだったらしく、その際に家族の殆どはズロヴァストに殺された。
当時まだ幼かったエレは家族が殺された事については後に聞かされたのだそうだ。
「あなたの家族で生きているのは?」
「父のみです」
「お父さんは族長だったのよね?真っ先に殺されそうなものだけど」
「父は見せしめとして生かされたんです。翼を捥がれて息絶える寸前の所で私以外の家族を目の前で殺されたと聞いています」
エレは俯きながら話を続ける。
「父はドラコニアンの中で一番強かったそうです。その父が手も足も出なくて、このままでは根絶やしにされてしまうと思い、絶対服従を誓う代わりに他のドラコニアンの命を助ける様にズロヴァストに頼みました」
「そうだったの」
「こうする他ドラコニアンが助かる道は無かったんです……でも他のみんなは父を責めました。立場を無くした父は今でも多分、魔竜王の小間使いをしています」
「お父さんに会いたい?」
「いえ……今は敵なので」
彼女の瞳には涙で濡れていた。
私はエレの側に行き小さくなっていた彼女を抱きしめる。
「分かりました。エレが協力してくれるのは嬉しいけど、無理をしなくて良いわ。トコヤミだけでもどうにかなるから」
「大丈夫です……やらせてください」
エレの決意は堅かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
432
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる