上 下
430 / 453
竜の国

小競り合い

しおりを挟む
それから一ヶ月程で、非常用の信号装置を各国の要所に配備。シグルーン国の皆の装備を更新していった。

信号魔法の開発には苦労したが、飛行魔法についてはあまり苦労もせずに開発することができた。ただし、実戦で使うには訓練を積まなければならない。

現状飛行魔法を操れるのは私と颯太と芽依だけだ。その他魔法が得意な主だった者には手解きをしてあるが、使いこなすにはまだまだ時間が掛かるだろう。

今は自室にて飛行魔法を文章化して広く伝える為に編纂している所だ。

『ハル様!先程海竜の使いの者からファディアに敵襲があったと知らせがありました!』

中庭に降り立って急報を告げて来たのは鳥の姿のオオトリだった。
私は窓を開けてオオトリに聞く。

「ご苦労様。メリーゼハーヴからは救援要請が来ていないわ。敵の規模はどれくらいかしら?」
『ドラコニアンがおよそ百騎、空から攻撃に来たそうです』

主戦力は海竜なのだから空からの攻撃は不利ね。

『メリーゼハーヴ殿からの言伝で、『手出し無用』との事です』
「そう……」

彼女にはファディア王国の守備も任せている、可能な限り被害を減らす様にと伝えてある。
メリーゼハーヴが手出し無用と言うのなら問題は無いのだろう。

それならば私は特にやる事はないのだが、何日か経って何も音沙汰がなければ見に行ってみるとしよう。

そんな事を思案していたら救援要請の信号が届いた。この反応はディアブレルだ。

「ディアブレルから要請が来ました。オオトリは引き続き空で警戒をお願い」
『畏まりました』

飛び立つオオトリ。私は屋敷にいた颯太と芽依にディアブレルに行く事を伝える。

「私も一緒に行っても良い?」
「ええ。お願い」

今更芽依を巻き込みたくないなどと言うつもりはない。

「僕は各所にこの事を伝えて警戒に当たらせておくよ。必要なら現地で召喚して」
「ええ。お願いね」

セロ達は冒険者ギルドの方に行っているのでこのまま街に居てもらう。そもそも彼らを戦場の最前線に連れていく気は無かったので都合が良かった。

『私はこのままついて行きます!』

話を聞きつけたカナエがやって来て私の肩に留まる。

私は芽依とカナエを連れてディアブレルへと転移した。

転移した先は城の中庭。何かあればここに転移すると予め伝えてある。

「精霊様、救援ありがとうございます」
「状況を教えてもらえるかしら」

声を掛けてきたのは国王のラシード。その後ろには騎士達が跪いていた。さらにその向こうにはグリフォン達も直ぐに飛び立てる様に準備されている。

「半日前に北部より魔物の大群が攻めて来ました」

北部には深い森があり、魔物らを発見したのは近くの村の者達だった。
防衛の任務に着いていた部隊が魔物の規模を確認し村民達を避難。
森に程近い三つの村を放棄して、一番近く堅固な石壁のあるノイエスという街に立て篭もっているそうだ。
ノイエスの守兵は百名程度で、近くの砦から増援として足の速い騎兵や鷲獅子騎兵が先行し、後続として歩兵千名も出撃済み。

魔物の大群はその街を包囲し攻撃する隊と、そのまま進軍する隊に分かれているらしく、どちらも千体程の大群だ。

「魔物はゴブリン、オーク、オーガーなどの人型の他、ライカンスロープが大勢混じっているとの報告がありました」
「ライカンスロープ?」
「それなら知ってる!人狼の事だよね?」

私よりも芽依の方が詳しいわね。人狼……狼男みたいなものかしら。

「はい。簡単に説明すると二足で歩く狼でしょうか。彼らは非常に身体能力が高く脅威的な治癒能力も備えている魔物です」

ライカンスロープというのは人間にのみ発症する病気の一種だそうで、自然に大量発生する事はまず無いらしいのだが。

「元人間なのね。自我はあるのかしら?」
「ライカンスロープは変身を繰り返す毎に理性を少しずつ失って行くと聞いた事があります」
「変身の条件は何かあるのかしら?」
「感情が高ぶると変身するそうです」

逆に気持ちを落ち着かせると元の姿に戻るのだとか。つまり戦意を失わさせれば無力化出来るかも知れない。

「大体分かりました。早速救援に向かいます」

私達は飛行魔法を発動させて上昇すると、北部へと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない

カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。 一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。 そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。 ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!! その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。 自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。 彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう? ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。 (R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします) どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり) チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。 今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。 ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。 力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。 5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます! 5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます! 5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)> 5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります! 5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

処理中です...