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竜の国
調味料と発展
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出来上がった生醤油を味見してみると、確かによく親しんだ醤油の味がした。
「しょっぱいけど、少し甘みがあるね」
「ええそうね」
「コイツは生揚醤油だからな。普通はこのまま使う事は無い筈だ。ここから濾過と火入れをして瓶に詰めれば完成だ」
「そうなのね」
「ああ。このままだとカビが付いちまうからな」
マサは醤油工場で働いていた事があるのかしら?
「次は私ですね!ハルさん!」
ナナがそう言って詰め寄ってくる。
「マヨネーズね。あなたの場合、酢を多めに入れるだけで解決できると思うのだけど試してみた?」
「え?そうなんですか?」
その様子から見て、試していなかったらしい。
一応場所を移して彼女のマヨネーズの作成工程を見せてもらう。
想像した通り工程自体には何ら問題はない。やはり卵の衛生管理だろう。
確認をしてみたがイルメイアには地球の鶏に近い生き物がいるらしく、ナナの強い要望もあって養鶏も行う事になったらしい。
畜産はトロールが担当する事になり、ディアブレルから鶏も輸送されてきているそうだ。
衛生管理の概念で言うならば鶏達に泉の水を飲ませてみてはどうだろうか?
毒性のあるものを浄化する事ができるのなら、人体に有害な細菌もどうにか出来るかもしれない。
早速ナナに提案と手配をしてみる事にした。
「ハルさん良いんですか?貴重な泉の水を飼料に混ぜる事になりますけど……」
「貴重と言っても泉の水はずっと湧いているし、森の中にある川にも流れ込んでいるわよ」
森の中には幾つか川があるのだが、そのいずれにも泉の水が流れ込んでおり、流域の植物達は強靭で繁殖力も高い。
以前にトウヤと颯太が調べてくれたのだが泉の水の作用で土壌が豊かになっているらしく、毒性のある植物も無害化しているのだそうだ。
毒性のある物の無害化は喜ばしい事だ。
今の泉は私が何もしなくても渾々と水を湧き出しており、枯れるどころか少しずつ広がっている。
そしていざとなれば私が水を出すことも出来る。
「そう言う事なら使わせて貰いますよ」
「ええ。良い物が出来ると良いわね」
「出来上がったらマヨネーズパーティしましょうね!」
「え、ええ……」
マヨネーズパーティとは。
まさかマヨネーズのみを舐め続ける気ではないでしょうね?
☆★☆★☆★☆★
森の開発は進んでいく。
村を拡張する為に伐採された木は建物に姿を変えて新たな役割を担ってくれている。
この森の木は頑丈だ。オリハルコンで作った斧や鋸を使わなければ加工が難しい。ゼムロス達が余った枝を使って木剣を作り戦闘訓練を行った所、鉄の剣をへし折ってしまった事がある程だ。
シグルーン聖泉国の首都になるスプリングフィールドも開発が進み、学校に病院、商業施設や宿泊施設まで完成した。
周辺の村々も大きく成長し、立派な建物が立つ街へと変わっていた。
農業も泉の水を使う事で成育を早めて食料の確保も順調になり、養鶏が大成功した事でそれ以外の畜産も始める事になった。
森はかなり切り拓いてしまったが、どの街も無闇な伐採は行っておらず、森と共存する形をとってくれている。
「母さん、スプリングフィールドに城を建ててはどうかという意見があるのだけど」
スプリングフィールドの開発が一段落したある日、颯太がそんな事を言い出した。
「城?誰が住むの?」
「勿論母さんだよ。僕達も一緒に住む事になるけど、どうする?」
私は畔の家があるから必要ないと思ったのだが、国の中心に家がないのは不便なのだ。
スプリングフィールドは泉から少し離れた所に建設された為、国の仕事を担っている颯太は毎日通う事になってしまっていて申し訳ない。
「分かったわ。でも、お城なんて大仰なものは作らなくて良いわ。みんなが住みやすい少し広めの家にして頂戴」
「そうだね。早速手配するよ」
開発の初期段階で土地は確保していたらしく、私達の家はすぐに完成した。
「しょっぱいけど、少し甘みがあるね」
「ええそうね」
「コイツは生揚醤油だからな。普通はこのまま使う事は無い筈だ。ここから濾過と火入れをして瓶に詰めれば完成だ」
「そうなのね」
「ああ。このままだとカビが付いちまうからな」
マサは醤油工場で働いていた事があるのかしら?
「次は私ですね!ハルさん!」
ナナがそう言って詰め寄ってくる。
「マヨネーズね。あなたの場合、酢を多めに入れるだけで解決できると思うのだけど試してみた?」
「え?そうなんですか?」
その様子から見て、試していなかったらしい。
一応場所を移して彼女のマヨネーズの作成工程を見せてもらう。
想像した通り工程自体には何ら問題はない。やはり卵の衛生管理だろう。
確認をしてみたがイルメイアには地球の鶏に近い生き物がいるらしく、ナナの強い要望もあって養鶏も行う事になったらしい。
畜産はトロールが担当する事になり、ディアブレルから鶏も輸送されてきているそうだ。
衛生管理の概念で言うならば鶏達に泉の水を飲ませてみてはどうだろうか?
毒性のあるものを浄化する事ができるのなら、人体に有害な細菌もどうにか出来るかもしれない。
早速ナナに提案と手配をしてみる事にした。
「ハルさん良いんですか?貴重な泉の水を飼料に混ぜる事になりますけど……」
「貴重と言っても泉の水はずっと湧いているし、森の中にある川にも流れ込んでいるわよ」
森の中には幾つか川があるのだが、そのいずれにも泉の水が流れ込んでおり、流域の植物達は強靭で繁殖力も高い。
以前にトウヤと颯太が調べてくれたのだが泉の水の作用で土壌が豊かになっているらしく、毒性のある植物も無害化しているのだそうだ。
毒性のある物の無害化は喜ばしい事だ。
今の泉は私が何もしなくても渾々と水を湧き出しており、枯れるどころか少しずつ広がっている。
そしていざとなれば私が水を出すことも出来る。
「そう言う事なら使わせて貰いますよ」
「ええ。良い物が出来ると良いわね」
「出来上がったらマヨネーズパーティしましょうね!」
「え、ええ……」
マヨネーズパーティとは。
まさかマヨネーズのみを舐め続ける気ではないでしょうね?
☆★☆★☆★☆★
森の開発は進んでいく。
村を拡張する為に伐採された木は建物に姿を変えて新たな役割を担ってくれている。
この森の木は頑丈だ。オリハルコンで作った斧や鋸を使わなければ加工が難しい。ゼムロス達が余った枝を使って木剣を作り戦闘訓練を行った所、鉄の剣をへし折ってしまった事がある程だ。
シグルーン聖泉国の首都になるスプリングフィールドも開発が進み、学校に病院、商業施設や宿泊施設まで完成した。
周辺の村々も大きく成長し、立派な建物が立つ街へと変わっていた。
農業も泉の水を使う事で成育を早めて食料の確保も順調になり、養鶏が大成功した事でそれ以外の畜産も始める事になった。
森はかなり切り拓いてしまったが、どの街も無闇な伐採は行っておらず、森と共存する形をとってくれている。
「母さん、スプリングフィールドに城を建ててはどうかという意見があるのだけど」
スプリングフィールドの開発が一段落したある日、颯太がそんな事を言い出した。
「城?誰が住むの?」
「勿論母さんだよ。僕達も一緒に住む事になるけど、どうする?」
私は畔の家があるから必要ないと思ったのだが、国の中心に家がないのは不便なのだ。
スプリングフィールドは泉から少し離れた所に建設された為、国の仕事を担っている颯太は毎日通う事になってしまっていて申し訳ない。
「分かったわ。でも、お城なんて大仰なものは作らなくて良いわ。みんなが住みやすい少し広めの家にして頂戴」
「そうだね。早速手配するよ」
開発の初期段階で土地は確保していたらしく、私達の家はすぐに完成した。
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