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竜の国
大同盟
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闘技大会も無事に終わり、ガルデインのゼムロス達が味方についた。
彼らはルドガイアの情報を多くもたらしてくれ、それはライアッドにとって有益な情報だった。
ガルデインの者達はある程度信用に足ると判断され、ライアッドに正式に迎える事になったのだが、ゼムロスは『精霊様にお仕えしたい』と言い、私も人間の手が必要だと判断したので新たに建設を始める村に住んでもらう事にした。
ガルデインの戦士達が森に来て一ヶ月が過ぎる頃、私達大森林に住む異種族達は、魔族の国ウルゼイドとディアブレルに加えて人間の国ライアッド、アドラス、リーグニツ、ソアニール、ファディアと正式に同盟を結んだ。
アドラスはギルバートの指示のもと、新しい国王が国内の者から選ばれて順調に国の能力を回復しつつあり、敵対行動をとっていたリーグニツもアドラス王国を通してライアッドに謝罪と和平の申し入れがあり、勇者召喚の儀についての情報開示と現国王の退位を条件にこちらの陣列に加わる事になった。
「お母さん、私たちも国として名前をつけた方がいいんじゃない?」
「そうね。みんなの意見を聞いて決めましょう」
芽依の提案に賛成だ。私達は一国家並みの、いやそれ以上の戦力を有する集団になっていた。しかしながら政治を行う中枢機関は存在しておらず、外交窓口と森に住む者達への指示や対応を颯太一人に任せきりの状態では、とても国としては認められないだろう。
まずは一番負担をかけている颯太に相談してみる。
「良い事だと思うよ。ウルゼイドもディアブレルも森を一つの国と見てくれているし、建国宣言をしてくれれば二国共に支持してくれると言っているよ」
私と芽依とで颯太に話を聞きに行くと、颯太は針仕事をしていた。
手は止めずにミシンで縫っているかの様に正確に針を通している颯太。今私が来ている白のローブと芽依の来ている赤のワンピースも颯太が作ったものだ。街で買うものよりも丈夫で見た目も良く芽依は特に気に入っているようだ。
話を戻そう。
この子は既に先を見据えていて、二国に話をしていたのかもしれない。
「そうなのね。対面的にも国を名乗る頃合いなのかも知れないわ。他のみんなはどう思うかしら」
「僕が調べた限り、凡そ半数の種族は国という概念が分からないみたいだよ。でも母さんがやると言うならみんな喜んで賛成するよ」
本当に優秀な子ね。
「名前はどうするの?」
「全ての種族が対等である事を示せる名前がいいわ」
出来れば全員から話を聞いて良い名前を付けたいと思うが、それをやっていたら決まるまでに何年かかるかわからない。
せめて長達と話をして決めたいと思う。
都合の良い事に今日は長達が報告をしに来る日だ。この場には族長以外にも颯太に芽依、セロ達冒険者仲間と人の姿になったカクカミ達、転生者全員と、人間代表としてゼムロスが出席する。
定例の報告会の席で全員から意見を求める事にした。
だが皆、私が付ける名前ならば何でも良いと言うばかりでかえって困ってしまった。
「滅んだ俺達の国にも精霊様の噂はあってな」
そう言って話し出したのはゼムロス。
「遥か南には聖なる水が湧く泉があり、そこは清らかな水の乙女が住んでいる。周りの森には魔物が住んでいるが、どれも人と同じかそれ以上の知性を有し乙女を守護している」
「確かに聞いた事がある。聖泉の乙女、神の遣いの聖女……色々な名前で噂を耳にしましたよ」
ゼムロスの話に付け加えるトウヤ。
乙女などと言われると何だかこそばゆい。
「俺が聞いたのは一日でファディア軍を全滅させた幻獣使いの悪魔、冷酷無比の幻魔だったぞ」
マサがそう言うと族長達が彼を睨む。
「彼は聞いた事を言っただけよ。気にしていないわ」
私がそう言うと皆マサから視線を外して小さく息を吐いた。
「それでどうするの?」
「そうね……」
どうするかを聞いたつもりだったのだけど、困ったわね。
彼らはルドガイアの情報を多くもたらしてくれ、それはライアッドにとって有益な情報だった。
ガルデインの者達はある程度信用に足ると判断され、ライアッドに正式に迎える事になったのだが、ゼムロスは『精霊様にお仕えしたい』と言い、私も人間の手が必要だと判断したので新たに建設を始める村に住んでもらう事にした。
ガルデインの戦士達が森に来て一ヶ月が過ぎる頃、私達大森林に住む異種族達は、魔族の国ウルゼイドとディアブレルに加えて人間の国ライアッド、アドラス、リーグニツ、ソアニール、ファディアと正式に同盟を結んだ。
アドラスはギルバートの指示のもと、新しい国王が国内の者から選ばれて順調に国の能力を回復しつつあり、敵対行動をとっていたリーグニツもアドラス王国を通してライアッドに謝罪と和平の申し入れがあり、勇者召喚の儀についての情報開示と現国王の退位を条件にこちらの陣列に加わる事になった。
「お母さん、私たちも国として名前をつけた方がいいんじゃない?」
「そうね。みんなの意見を聞いて決めましょう」
芽依の提案に賛成だ。私達は一国家並みの、いやそれ以上の戦力を有する集団になっていた。しかしながら政治を行う中枢機関は存在しておらず、外交窓口と森に住む者達への指示や対応を颯太一人に任せきりの状態では、とても国としては認められないだろう。
まずは一番負担をかけている颯太に相談してみる。
「良い事だと思うよ。ウルゼイドもディアブレルも森を一つの国と見てくれているし、建国宣言をしてくれれば二国共に支持してくれると言っているよ」
私と芽依とで颯太に話を聞きに行くと、颯太は針仕事をしていた。
手は止めずにミシンで縫っているかの様に正確に針を通している颯太。今私が来ている白のローブと芽依の来ている赤のワンピースも颯太が作ったものだ。街で買うものよりも丈夫で見た目も良く芽依は特に気に入っているようだ。
話を戻そう。
この子は既に先を見据えていて、二国に話をしていたのかもしれない。
「そうなのね。対面的にも国を名乗る頃合いなのかも知れないわ。他のみんなはどう思うかしら」
「僕が調べた限り、凡そ半数の種族は国という概念が分からないみたいだよ。でも母さんがやると言うならみんな喜んで賛成するよ」
本当に優秀な子ね。
「名前はどうするの?」
「全ての種族が対等である事を示せる名前がいいわ」
出来れば全員から話を聞いて良い名前を付けたいと思うが、それをやっていたら決まるまでに何年かかるかわからない。
せめて長達と話をして決めたいと思う。
都合の良い事に今日は長達が報告をしに来る日だ。この場には族長以外にも颯太に芽依、セロ達冒険者仲間と人の姿になったカクカミ達、転生者全員と、人間代表としてゼムロスが出席する。
定例の報告会の席で全員から意見を求める事にした。
だが皆、私が付ける名前ならば何でも良いと言うばかりでかえって困ってしまった。
「滅んだ俺達の国にも精霊様の噂はあってな」
そう言って話し出したのはゼムロス。
「遥か南には聖なる水が湧く泉があり、そこは清らかな水の乙女が住んでいる。周りの森には魔物が住んでいるが、どれも人と同じかそれ以上の知性を有し乙女を守護している」
「確かに聞いた事がある。聖泉の乙女、神の遣いの聖女……色々な名前で噂を耳にしましたよ」
ゼムロスの話に付け加えるトウヤ。
乙女などと言われると何だかこそばゆい。
「俺が聞いたのは一日でファディア軍を全滅させた幻獣使いの悪魔、冷酷無比の幻魔だったぞ」
マサがそう言うと族長達が彼を睨む。
「彼は聞いた事を言っただけよ。気にしていないわ」
私がそう言うと皆マサから視線を外して小さく息を吐いた。
「それでどうするの?」
「そうね……」
どうするかを聞いたつもりだったのだけど、困ったわね。
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