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竜の国
エキシヴィジョン
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本戦一回戦の最後はゼムロスと剣士の対戦。
危なげなくゼムロスが勝利した。
剣士も大した負傷はしておらず自分で退場していく。しかしゼムロスはその場に残ったままだ。
今日は一回戦で終了、明日から二回戦と準決勝が行われる予定なのでゼムロスがその場に残っている理由はない。
「みんな聞いてくれ!今日の試合はこれで終わりだが、アッサリと終わり過ぎて物足りなくはないか?」
声を張り上げて呼び掛けるゼムロス。騒つく観客達。
「今回は精霊様の仲間が七人出場していて圧倒的な力を見せてくれている。だが、ここにいるみんなは蹂躙を見に来たわけじゃないだろう?」
僅かながら「そうだ!」と声が聞こえてくる。
「明日からは精霊様の仲間同士の激しい戦いも増える。だが、今日はみんな満足していないはずだ!」
先程よりも同調する者は増えていた。
「ここで特別試合を提案したい!幸い精霊様の水のお陰で俺達本戦出場者は全員元気だ!この国を救ってくれた精霊様は絶大な力を持っている!そこでだ、本戦出場者全員と精霊様との試合を提案する!」
大きくどよめく観客達。
「何を馬鹿な事を!あの無礼者をつまみ出せ!」
ゼムロスの提案を聞いて激昂したエリオットが近衛達に命令をしている。
「いいぞ!」「精霊様!」
観客が次々と立ち上がり声を張り上げる。
退場門の方から意気揚々と入って来たのはリンを下した剣士。それに続いて他の者達もやって来た。少し遅れて芽依達も急いで入ってくる。
「ちょっと!どういうつもり!?」
「この方が盛り上がるだろ?」
芽依に詰め寄られるも悪びれずに笑顔で答えるゼムロス。
観衆はゼムロスの提案に乗ってしまっていて大騒ぎになっていた。
「今からでも遅くはない。今すぐその男を退場させろ!」
エリオットは声を荒げるが歓声にかき消されてしまう。
「私が皆を諌めよう」
そう言ってラムドが立ち上がろうとする。
「いいえ、彼の提案に乗ってみようと思います」
「宜しいのか?」
「ええ。ここまで期待されてしまってはやらない訳にはいかないでしょう」
加減を間違わなければ死なせる様な事もない。ただ他の者はともかく流石に芽依達七人を同時に相手するのは難しい。
「精霊殿、妾が加勢しようではないか」
そう言って立ち上がったのはメリーゼハーヴだった。
「あなたは戦いたいだけでしょう?」
「ち、違うぞ。あれだけの実力者を一人で相手するのは大変じゃろうて。妾と精霊殿の二人で丁度良いのではと思っただけじゃ」
嘘が下手なメリーゼハーヴは既にやる気で肩を回して張り切っていた。
「まあいいでしょう。ここの全員が納得してくれるのなら」
「うむ!それでは参ろうぞ!」
そう言うと私を抱き上げ飛び降りるメリーゼハーヴ。
「お主の言いたい事はよく分かった。じゃが然しもの精霊殿も今大会の精鋭達を一人で相手をするのは荷が重い。そこで妾が助っ人として共に戦おうと思うのじゃが、どうじゃ?」
「アンタは一体……?」
「妾はメリーゼハーヴ。精霊ハル殿の盟友にして海竜の長じゃ」
メリーゼハーヴは私を降ろして胸を張って宣言する。
堂々と言い切ってしまうあたりメリーゼハーヴらしい。
「か、海……竜……?」
「うむ!」
「彼女の言っている事は本当です。彼女達海竜は私達と協力関係にあります」
私が付け加えると歓声が上がる。
「然り、我がライアッドとも正式に同盟を結ぶ運びとなった」
ラムドがそう言うと、歓声は一際大きくなった。
「ライアッド万歳!海竜族万歳!」
「流石は精霊様だ!」
そう言って狂喜する観衆。
少し前まで『幻獣使いの魔女』と呼ばれていたのが嘘の様だ。
「それで、許可してもらえるかのぅ?何なら妾一人でも構わないが」
本音が漏れているわよメリーゼハーヴ。
「よ、よし!二対十六だ!みんな、それでいいか?」
轟く歓声。聞くまでもなかったわね。
危なげなくゼムロスが勝利した。
剣士も大した負傷はしておらず自分で退場していく。しかしゼムロスはその場に残ったままだ。
今日は一回戦で終了、明日から二回戦と準決勝が行われる予定なのでゼムロスがその場に残っている理由はない。
「みんな聞いてくれ!今日の試合はこれで終わりだが、アッサリと終わり過ぎて物足りなくはないか?」
声を張り上げて呼び掛けるゼムロス。騒つく観客達。
「今回は精霊様の仲間が七人出場していて圧倒的な力を見せてくれている。だが、ここにいるみんなは蹂躙を見に来たわけじゃないだろう?」
僅かながら「そうだ!」と声が聞こえてくる。
「明日からは精霊様の仲間同士の激しい戦いも増える。だが、今日はみんな満足していないはずだ!」
先程よりも同調する者は増えていた。
「ここで特別試合を提案したい!幸い精霊様の水のお陰で俺達本戦出場者は全員元気だ!この国を救ってくれた精霊様は絶大な力を持っている!そこでだ、本戦出場者全員と精霊様との試合を提案する!」
大きくどよめく観客達。
「何を馬鹿な事を!あの無礼者をつまみ出せ!」
ゼムロスの提案を聞いて激昂したエリオットが近衛達に命令をしている。
「いいぞ!」「精霊様!」
観客が次々と立ち上がり声を張り上げる。
退場門の方から意気揚々と入って来たのはリンを下した剣士。それに続いて他の者達もやって来た。少し遅れて芽依達も急いで入ってくる。
「ちょっと!どういうつもり!?」
「この方が盛り上がるだろ?」
芽依に詰め寄られるも悪びれずに笑顔で答えるゼムロス。
観衆はゼムロスの提案に乗ってしまっていて大騒ぎになっていた。
「今からでも遅くはない。今すぐその男を退場させろ!」
エリオットは声を荒げるが歓声にかき消されてしまう。
「私が皆を諌めよう」
そう言ってラムドが立ち上がろうとする。
「いいえ、彼の提案に乗ってみようと思います」
「宜しいのか?」
「ええ。ここまで期待されてしまってはやらない訳にはいかないでしょう」
加減を間違わなければ死なせる様な事もない。ただ他の者はともかく流石に芽依達七人を同時に相手するのは難しい。
「精霊殿、妾が加勢しようではないか」
そう言って立ち上がったのはメリーゼハーヴだった。
「あなたは戦いたいだけでしょう?」
「ち、違うぞ。あれだけの実力者を一人で相手するのは大変じゃろうて。妾と精霊殿の二人で丁度良いのではと思っただけじゃ」
嘘が下手なメリーゼハーヴは既にやる気で肩を回して張り切っていた。
「まあいいでしょう。ここの全員が納得してくれるのなら」
「うむ!それでは参ろうぞ!」
そう言うと私を抱き上げ飛び降りるメリーゼハーヴ。
「お主の言いたい事はよく分かった。じゃが然しもの精霊殿も今大会の精鋭達を一人で相手をするのは荷が重い。そこで妾が助っ人として共に戦おうと思うのじゃが、どうじゃ?」
「アンタは一体……?」
「妾はメリーゼハーヴ。精霊ハル殿の盟友にして海竜の長じゃ」
メリーゼハーヴは私を降ろして胸を張って宣言する。
堂々と言い切ってしまうあたりメリーゼハーヴらしい。
「か、海……竜……?」
「うむ!」
「彼女の言っている事は本当です。彼女達海竜は私達と協力関係にあります」
私が付け加えると歓声が上がる。
「然り、我がライアッドとも正式に同盟を結ぶ運びとなった」
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「ライアッド万歳!海竜族万歳!」
「流石は精霊様だ!」
そう言って狂喜する観衆。
少し前まで『幻獣使いの魔女』と呼ばれていたのが嘘の様だ。
「それで、許可してもらえるかのぅ?何なら妾一人でも構わないが」
本音が漏れているわよメリーゼハーヴ。
「よ、よし!二対十六だ!みんな、それでいいか?」
轟く歓声。聞くまでもなかったわね。
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