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竜の国
非道
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セロが我慢強くなったのは修行の成果の様に言っていたけど、トコヤミ達が何かしたのだろうか?
「い、いえ……少しばかり指導に熱が入ってしまいまして」
トコヤミは私と目を合わせようとしなかった。
「セロ達の訓練に我々も付き合っていましたが、加減が難しく毎回大怪我をさせていました。トコヤミが」
「おいカクカミ!お前も両手両足の骨を砕いていたではないか!」
二人ともかなり激しい事をしていたのね。他の者もそうだったのだろうか?
私が皆を見ると顔を背けたり目を逸らしたりしていた。
「トコヤミも言っていたけど元の姿の彼らでは人間を相手するのは加減が難しいんだ。勿論怪我をするたびに泉の水を使って直ぐに治療していたよ」
颯太が皆を庇って説明してくれる。
「セロさん達の訓練に付き合ってくれてありがとう。人間は脆いから大変だったわね。次からは人の姿で訓練できるかも知れないわ。その時はまたお願いね」
私がそう言うと全員明るい顔で返事をしてくれた。
「そんな過酷な修練を……」
「彼らも既に人外の域にいるのかも知れない……」
フランシスとエリオットは顔を青くしながら呟いていた。
次の対戦はリンと剣士だ。
入場してくる二人。剣士は細身で背が高い男性。黒い長い髪を後ろで束ねていてどこかやる気がなさそうに見える。
手にしているのは刀の様な片刃の曲刀で、体の至る所にナイフを装備していた。
この男の出ていたブロック予選は見ていたが、あの時とは少し様子が違う。昨日はもっとやる気を出していたと思ったが。
「まさか剣聖レンブランが予選で負けてしまうなんて……剣を交えられる事を楽しみにしていたのに……」
「それはお気の毒ね」
大きなため息と共に言う剣士にリンは返事をする。
それで気落ちしていたのね。
「剣聖を切り刻めると思ったのに……仕方がない、君で我慢するよぉ」
「え?」
銅鑼が打ち鳴らされると同時に男はナイフを二本連続でリンに投げる。動作が小さくとても早い。
リンはその動作に反応する事が出来ず、ナイフが左太腿に突き刺さる。
更に続けて二本、今度は右脚に一本、右肩に一本突き刺さった。
リンがゆっくりとその場に崩れる。
だが男は曲刀を抜いて斬りかかっていた。
「リン、降参するんだ!」
颯太が声を上げる。リンは降参を宣言しようとしていた。
だが男はそのリンに目掛けて更にナイフを投げる。
ナイフは左肩に突き刺さり、声は苦痛の悲鳴に変わってしまった。
あの男、リンに降参させない様にワザとナイフを……
刀を振りかぶりリンに迫る男。その顔は喜びに満ちた狂気の笑みを浮かべていた。
「おやめなさい!」
我慢の限界だった。
私は水弾を複数発、リンと男の間に撃ち込む。男は驚いて後ろに飛び退いた。
「勝負はもう着いているでしょう。これ以上の攻撃は許しません」
「精霊様ァ……彼女はまだ降伏していません」
「それはあなたが攻撃を続けた為に声が出せなかったのです」
私は席から闘技場の中に降りる。颯太とカナエもついて来てくれ、リンの手当を始めた。
「ハル殿の言う通りである。リンは戦闘不能でお主の勝ちだ」
ラムドがそう言うと、ようやく銅鑼が打ち鳴らされた。
「あなたの勝ちです」
「ククク……残念……これからが面白いところだったのに……ああ、ナイフ返してもらえますか?刺さったままなら抜いていくので」
そう言う男の足元に全てのナイフが突き刺さる。
「もう抜いたよ。それを拾って早く退場するんだ」
「それは残念……」
颯太が冷たく言うと男は薄ら笑みを浮かべてナイフを拾って去っていく。
「リン、大丈夫かい?」
「……はい。何とか」
颯太が持っていた泉の水で治療は完了していたが、リンはまだ動けないでいた。
救護係がやって来てリンを担架に乗せる。
「もう大丈夫だろうけど僕がリンに付き添うよ」
そう言って颯太は救護係と共に退場して行った。
「い、いえ……少しばかり指導に熱が入ってしまいまして」
トコヤミは私と目を合わせようとしなかった。
「セロ達の訓練に我々も付き合っていましたが、加減が難しく毎回大怪我をさせていました。トコヤミが」
「おいカクカミ!お前も両手両足の骨を砕いていたではないか!」
二人ともかなり激しい事をしていたのね。他の者もそうだったのだろうか?
私が皆を見ると顔を背けたり目を逸らしたりしていた。
「トコヤミも言っていたけど元の姿の彼らでは人間を相手するのは加減が難しいんだ。勿論怪我をするたびに泉の水を使って直ぐに治療していたよ」
颯太が皆を庇って説明してくれる。
「セロさん達の訓練に付き合ってくれてありがとう。人間は脆いから大変だったわね。次からは人の姿で訓練できるかも知れないわ。その時はまたお願いね」
私がそう言うと全員明るい顔で返事をしてくれた。
「そんな過酷な修練を……」
「彼らも既に人外の域にいるのかも知れない……」
フランシスとエリオットは顔を青くしながら呟いていた。
次の対戦はリンと剣士だ。
入場してくる二人。剣士は細身で背が高い男性。黒い長い髪を後ろで束ねていてどこかやる気がなさそうに見える。
手にしているのは刀の様な片刃の曲刀で、体の至る所にナイフを装備していた。
この男の出ていたブロック予選は見ていたが、あの時とは少し様子が違う。昨日はもっとやる気を出していたと思ったが。
「まさか剣聖レンブランが予選で負けてしまうなんて……剣を交えられる事を楽しみにしていたのに……」
「それはお気の毒ね」
大きなため息と共に言う剣士にリンは返事をする。
それで気落ちしていたのね。
「剣聖を切り刻めると思ったのに……仕方がない、君で我慢するよぉ」
「え?」
銅鑼が打ち鳴らされると同時に男はナイフを二本連続でリンに投げる。動作が小さくとても早い。
リンはその動作に反応する事が出来ず、ナイフが左太腿に突き刺さる。
更に続けて二本、今度は右脚に一本、右肩に一本突き刺さった。
リンがゆっくりとその場に崩れる。
だが男は曲刀を抜いて斬りかかっていた。
「リン、降参するんだ!」
颯太が声を上げる。リンは降参を宣言しようとしていた。
だが男はそのリンに目掛けて更にナイフを投げる。
ナイフは左肩に突き刺さり、声は苦痛の悲鳴に変わってしまった。
あの男、リンに降参させない様にワザとナイフを……
刀を振りかぶりリンに迫る男。その顔は喜びに満ちた狂気の笑みを浮かべていた。
「おやめなさい!」
我慢の限界だった。
私は水弾を複数発、リンと男の間に撃ち込む。男は驚いて後ろに飛び退いた。
「勝負はもう着いているでしょう。これ以上の攻撃は許しません」
「精霊様ァ……彼女はまだ降伏していません」
「それはあなたが攻撃を続けた為に声が出せなかったのです」
私は席から闘技場の中に降りる。颯太とカナエもついて来てくれ、リンの手当を始めた。
「ハル殿の言う通りである。リンは戦闘不能でお主の勝ちだ」
ラムドがそう言うと、ようやく銅鑼が打ち鳴らされた。
「あなたの勝ちです」
「ククク……残念……これからが面白いところだったのに……ああ、ナイフ返してもらえますか?刺さったままなら抜いていくので」
そう言う男の足元に全てのナイフが突き刺さる。
「もう抜いたよ。それを拾って早く退場するんだ」
「それは残念……」
颯太が冷たく言うと男は薄ら笑みを浮かべてナイフを拾って去っていく。
「リン、大丈夫かい?」
「……はい。何とか」
颯太が持っていた泉の水で治療は完了していたが、リンはまだ動けないでいた。
救護係がやって来てリンを担架に乗せる。
「もう大丈夫だろうけど僕がリンに付き添うよ」
そう言って颯太は救護係と共に退場して行った。
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