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竜の国
世故に長ける
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セロは別の戦場に移動した。
力が拮抗している彼らは放っておいても互いに疲弊する。勝ち残った側にも脱落者は出ているだろうし、相手をするのはその後でも良い。
実に合理的な判断に見えるが、セロは背後から攻撃を仕掛けたくなかっただけだと思う。
セロが向かった先では三人チームと四人チームが戦っていた。どちらかに加勢するか、一瞬止まって思案する。そこに別のチームが襲い掛かってきた。
曲刀を持った二人の女性。息の合った動きで同時にセロを攻撃する。
セロは剣と盾で曲刀の斬撃を受け流すが、盾を持つ手は火傷を負っていて上手く受け流す事は出来なかった様だ。
「左腕を怪我しているねぇ!」
「アタシらに捕まったのが運の尽きだよ!」
余裕の様子で喋り出す二人をセロは冷静に観察している。褐色の肌に黒い髪、顔が似ているのは姉妹だからか。鎧は身に付けていない。
「何とか言ったらどうなんだい?」
「ショックで声も出ないのかい?」
セロは何も言わずに剣を構える。盾は降ろしたままだ。
二人は先程と同じ様に襲い掛かる。
セロは一瞬後ろに下がった様に見えたが、次の瞬間左手の盾を投げていた。
まるでフリスビーの様に綺麗な回転が加わっており、向かって右側の女性の腹部に命中した。
自身の勢いも威力に追加され、身体をくの字に折りながら倒れていく。
左側の女性もセロの取った行動にたたらを踏んだがバランスを崩す。
セロはそれを見逃さず、剣を横に向けて彼女の右肩を打ち据えた。
「うぐっ……!?」
痛みを堪え後ろに飛び退るが立っている事が出来ずに膝を折った。右の肩甲骨が折れている様だ。剣を取り落とし歯噛みする女性。
「参った……」
「こっちも……だ」
「すぐに手当をしてもらってください」
セロは盾を拾うと次の戦場へ。
「何だ、中々やるではないか」
「空気に呑まれずによく堪えたな。油断せずにいけばセロも予選突破だ」
トコヤミとカクカミもセロの事を応援していた。
初めの戦場になった四対四の場所は全員棄権になっていた。
残るは三人のチームと四人のチームだ。
互いに二名ずつ脱落しており現在は一対二。一人の方は剣士で、実力が違うのか剣士二人の方を圧倒していた。
セロは様子を見ながら呼吸を整える。
やがて二人が倒されて残りはセロと剣士の一対一となったが、剣士が武器を捨てて棄権を宣言した。どうやら彼も相当消耗していたらしい。
銅鑼が打ち鳴らされセロの本戦出場が決まった。
セロと入れ替わりに入ってきたのはリン。回復補助役の彼女がこの乱戦を勝ち抜けるとは思えない。しかしリンは諦めてなどいなかった。剣士三人組の所に近付いて行くと話し始める。
「ねえ、私はヒーラーなんだけど、数が減るまで手を組まない?」
「構わないが、俺達三人が残った場合アンタに勝ち目はないぞ?」
「それはその時にならないと分からないわ。手を組むと言うなら敵対するまでは全力で支援するよ」
「いいだろう。他の奴にやられない様に守ってやるよ」
上手く他のチームに紛れ込んだ様だ。
開始の銅鑼が打ち鳴らされ全員が動き出す。リンは三人に支援魔法を掛けている。
「コイツはいい!身体が軽くなったぜ!」
「よし!これならやれるぞ!まずはそこの連中を……」
二人の剣士が勢いよく飛び出そうとする。
「待って!私の支援だって万能じゃないんだから、まずは様子見よ」
「んだよ!命令すんな!」
最後の一人が不満を露わにする。
「私だってすぐに退場したくないの!無鉄砲であなた達がやられちゃったら困るんだから!落ち着いていけば大丈夫よ。深呼吸して周りを見て!」
リンの剣幕に圧されて素直に従う三人。
「へえ、あの子あんな事も出来るんだね」
マカミが感心している。
リンは上手く三人を制御し始めたが戦いはこれからだ。上手く立ち回れるか、見守っていよう。
力が拮抗している彼らは放っておいても互いに疲弊する。勝ち残った側にも脱落者は出ているだろうし、相手をするのはその後でも良い。
実に合理的な判断に見えるが、セロは背後から攻撃を仕掛けたくなかっただけだと思う。
セロが向かった先では三人チームと四人チームが戦っていた。どちらかに加勢するか、一瞬止まって思案する。そこに別のチームが襲い掛かってきた。
曲刀を持った二人の女性。息の合った動きで同時にセロを攻撃する。
セロは剣と盾で曲刀の斬撃を受け流すが、盾を持つ手は火傷を負っていて上手く受け流す事は出来なかった様だ。
「左腕を怪我しているねぇ!」
「アタシらに捕まったのが運の尽きだよ!」
余裕の様子で喋り出す二人をセロは冷静に観察している。褐色の肌に黒い髪、顔が似ているのは姉妹だからか。鎧は身に付けていない。
「何とか言ったらどうなんだい?」
「ショックで声も出ないのかい?」
セロは何も言わずに剣を構える。盾は降ろしたままだ。
二人は先程と同じ様に襲い掛かる。
セロは一瞬後ろに下がった様に見えたが、次の瞬間左手の盾を投げていた。
まるでフリスビーの様に綺麗な回転が加わっており、向かって右側の女性の腹部に命中した。
自身の勢いも威力に追加され、身体をくの字に折りながら倒れていく。
左側の女性もセロの取った行動にたたらを踏んだがバランスを崩す。
セロはそれを見逃さず、剣を横に向けて彼女の右肩を打ち据えた。
「うぐっ……!?」
痛みを堪え後ろに飛び退るが立っている事が出来ずに膝を折った。右の肩甲骨が折れている様だ。剣を取り落とし歯噛みする女性。
「参った……」
「こっちも……だ」
「すぐに手当をしてもらってください」
セロは盾を拾うと次の戦場へ。
「何だ、中々やるではないか」
「空気に呑まれずによく堪えたな。油断せずにいけばセロも予選突破だ」
トコヤミとカクカミもセロの事を応援していた。
初めの戦場になった四対四の場所は全員棄権になっていた。
残るは三人のチームと四人のチームだ。
互いに二名ずつ脱落しており現在は一対二。一人の方は剣士で、実力が違うのか剣士二人の方を圧倒していた。
セロは様子を見ながら呼吸を整える。
やがて二人が倒されて残りはセロと剣士の一対一となったが、剣士が武器を捨てて棄権を宣言した。どうやら彼も相当消耗していたらしい。
銅鑼が打ち鳴らされセロの本戦出場が決まった。
セロと入れ替わりに入ってきたのはリン。回復補助役の彼女がこの乱戦を勝ち抜けるとは思えない。しかしリンは諦めてなどいなかった。剣士三人組の所に近付いて行くと話し始める。
「ねえ、私はヒーラーなんだけど、数が減るまで手を組まない?」
「構わないが、俺達三人が残った場合アンタに勝ち目はないぞ?」
「それはその時にならないと分からないわ。手を組むと言うなら敵対するまでは全力で支援するよ」
「いいだろう。他の奴にやられない様に守ってやるよ」
上手く他のチームに紛れ込んだ様だ。
開始の銅鑼が打ち鳴らされ全員が動き出す。リンは三人に支援魔法を掛けている。
「コイツはいい!身体が軽くなったぜ!」
「よし!これならやれるぞ!まずはそこの連中を……」
二人の剣士が勢いよく飛び出そうとする。
「待って!私の支援だって万能じゃないんだから、まずは様子見よ」
「んだよ!命令すんな!」
最後の一人が不満を露わにする。
「私だってすぐに退場したくないの!無鉄砲であなた達がやられちゃったら困るんだから!落ち着いていけば大丈夫よ。深呼吸して周りを見て!」
リンの剣幕に圧されて素直に従う三人。
「へえ、あの子あんな事も出来るんだね」
マカミが感心している。
リンは上手く三人を制御し始めたが戦いはこれからだ。上手く立ち回れるか、見守っていよう。
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