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竜の国
怪力無双
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芽依の勝利に歓声が轟き、セブレスの敗退に響めきが起こっていた。
セブレスの弟子達は指示通り全員棄権。初めに芽依に攻撃に来た冒険者達はもう片方のパーティと戦って互いに人数を減らしていた。
芽依はセブレスに「元気になったらまたやろうね」と言って踵を返して冒険者達で乱戦になっている所に突撃していく。
駆け抜けざまに斬りつけて次々と冒険者を倒していく芽依。力の差は歴然だった。
銅鑼が打ち鳴らされ予選が終了する。
芽依は右腕を僅かに負傷しただけで余裕の本戦出場だった。
「やりましたね!」
「流石はメイ様!」
「メイ様ならば当然よ」
皆大喜びだった。
動けない者は救護班がやってきて水を振り掛けて治療をし、芽依達の退場と合わせて次のブロックの者達が逆側から入ってくる。次はエレの出番だ。彼女は軽鎧に大剣を背負って現れる。
「エレよ、油断するでないぞ」
「トコヤミ様~見てて下さい!サクッとやっちゃいますからね~」
大きく手を振りながらそんな事を言うものだから周りの冒険者達が睨んでいる。エレは全く気にしていない様子だ。
「うーむ、心配だ」
「エレなら大丈夫だよ」
腕を組んで唸るトコヤミにメトが言う。
「いや、加減を間違えて殺してしまわないかをだな……」
それは確かに心配ね。
尚、大会規則の中に『変身してはならない』との項目は無いのだが、これは武術の大会なので竜に変身する事は禁止と話しておいた。もし何かの拍子に竜の姿になってしまったら直ぐに棄権する様に伝えてある。
エレを睨みつけている冒険者達は間違いなく開始と同時にエレの所に向かうだろう。
冒険者のパーティは五つ。四人が二組、三人が二組、五人が一組となっていて会場の全体に散っていた。
エレは暢気に中央に陣取って大剣を片手で持って眺めている。
「せめて端に寄って死角を減らせば良いのに」
「その必要が無いって思ってるんじゃないかな?」
オオトリとマカミはエレの様子を見ながら話していた。
私もオオトリに同意だ。あの子は楽に試合を進めようとは考えないのだろうか。
銅鑼が打ち鳴らされ試合が始まる。
当然の様に全員がエレを見ていて、その内十人程が殺到する。
「一人ずつ倒していくのは面倒なので、助かっちゃいます!」
そう言いながらエレは大剣を振りかぶると回転する様に大剣を振り回す。
鈍い金属音と共に弾き飛ばされていく冒険者達。
金属の鎧を着ていた者が胴体部分が大きく凹んで苦しそうにのたうち回っている。
鎧に当たった者はまだ幸せだ。剣を構えて飛び込んで行った一人は腕を肩口から吹き飛ばされていた。
「あの馬鹿者……やり過ぎだ」
「幸い死人は出ていませんね」
見兼ねた私は腕を吹き飛ばされた者に水を投げつけて治療する。
「エレ、やり過ぎよ」
「え?あ、ごめんなさい!」
私の声をカナエが届けてくれてエレは攻撃を止める。
周りは死屍累々。いや、死んではいないのだが……
直ぐに攻撃に出なかった者達はエレの攻撃力を目の当たりにして固まっていた。
「うーん、殺傷能力が高過ぎますかね。一応、峰打ちしたつもりなんですけど……」
重傷者は救護班がやって来て隅へ連れて行って水を掛けている。
鎧が凹んでしまった者は危険ね。
「ごめんなさい。鎧に挟まって苦しいですよね」
「き、君!離れなさい!」
「このままだと大変だから鎧を壊してあげますよ」
救護班が静止するもエレはそう言いながら素手で鎧を引き裂いてしまった。
「これで大丈夫。じゃあ私は続きをしてきますので」
「お、おう……」
救護班の男性は唖然としていた。エレは良い事をしたと言わんばかりの顔で元の位置に戻る。
「じゃ、続きをやりましょう!でもこれを振り回すとハル様に怒られちゃいそうなので、素手でやらせてもらいますね」
そう言って大剣を地面に突き立てる。凄まじい音と共に半分程地面に減り込ませていた。
それを見て冒険者達はエレに向かうどころか距離をとって戦わない様にしていた。
エレは「なんで?」という顔で首を傾げていた。
セブレスの弟子達は指示通り全員棄権。初めに芽依に攻撃に来た冒険者達はもう片方のパーティと戦って互いに人数を減らしていた。
芽依はセブレスに「元気になったらまたやろうね」と言って踵を返して冒険者達で乱戦になっている所に突撃していく。
駆け抜けざまに斬りつけて次々と冒険者を倒していく芽依。力の差は歴然だった。
銅鑼が打ち鳴らされ予選が終了する。
芽依は右腕を僅かに負傷しただけで余裕の本戦出場だった。
「やりましたね!」
「流石はメイ様!」
「メイ様ならば当然よ」
皆大喜びだった。
動けない者は救護班がやってきて水を振り掛けて治療をし、芽依達の退場と合わせて次のブロックの者達が逆側から入ってくる。次はエレの出番だ。彼女は軽鎧に大剣を背負って現れる。
「エレよ、油断するでないぞ」
「トコヤミ様~見てて下さい!サクッとやっちゃいますからね~」
大きく手を振りながらそんな事を言うものだから周りの冒険者達が睨んでいる。エレは全く気にしていない様子だ。
「うーむ、心配だ」
「エレなら大丈夫だよ」
腕を組んで唸るトコヤミにメトが言う。
「いや、加減を間違えて殺してしまわないかをだな……」
それは確かに心配ね。
尚、大会規則の中に『変身してはならない』との項目は無いのだが、これは武術の大会なので竜に変身する事は禁止と話しておいた。もし何かの拍子に竜の姿になってしまったら直ぐに棄権する様に伝えてある。
エレを睨みつけている冒険者達は間違いなく開始と同時にエレの所に向かうだろう。
冒険者のパーティは五つ。四人が二組、三人が二組、五人が一組となっていて会場の全体に散っていた。
エレは暢気に中央に陣取って大剣を片手で持って眺めている。
「せめて端に寄って死角を減らせば良いのに」
「その必要が無いって思ってるんじゃないかな?」
オオトリとマカミはエレの様子を見ながら話していた。
私もオオトリに同意だ。あの子は楽に試合を進めようとは考えないのだろうか。
銅鑼が打ち鳴らされ試合が始まる。
当然の様に全員がエレを見ていて、その内十人程が殺到する。
「一人ずつ倒していくのは面倒なので、助かっちゃいます!」
そう言いながらエレは大剣を振りかぶると回転する様に大剣を振り回す。
鈍い金属音と共に弾き飛ばされていく冒険者達。
金属の鎧を着ていた者が胴体部分が大きく凹んで苦しそうにのたうち回っている。
鎧に当たった者はまだ幸せだ。剣を構えて飛び込んで行った一人は腕を肩口から吹き飛ばされていた。
「あの馬鹿者……やり過ぎだ」
「幸い死人は出ていませんね」
見兼ねた私は腕を吹き飛ばされた者に水を投げつけて治療する。
「エレ、やり過ぎよ」
「え?あ、ごめんなさい!」
私の声をカナエが届けてくれてエレは攻撃を止める。
周りは死屍累々。いや、死んではいないのだが……
直ぐに攻撃に出なかった者達はエレの攻撃力を目の当たりにして固まっていた。
「うーん、殺傷能力が高過ぎますかね。一応、峰打ちしたつもりなんですけど……」
重傷者は救護班がやって来て隅へ連れて行って水を掛けている。
鎧が凹んでしまった者は危険ね。
「ごめんなさい。鎧に挟まって苦しいですよね」
「き、君!離れなさい!」
「このままだと大変だから鎧を壊してあげますよ」
救護班が静止するもエレはそう言いながら素手で鎧を引き裂いてしまった。
「これで大丈夫。じゃあ私は続きをしてきますので」
「お、おう……」
救護班の男性は唖然としていた。エレは良い事をしたと言わんばかりの顔で元の位置に戻る。
「じゃ、続きをやりましょう!でもこれを振り回すとハル様に怒られちゃいそうなので、素手でやらせてもらいますね」
そう言って大剣を地面に突き立てる。凄まじい音と共に半分程地面に減り込ませていた。
それを見て冒険者達はエレに向かうどころか距離をとって戦わない様にしていた。
エレは「なんで?」という顔で首を傾げていた。
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