392 / 453
竜の国
芽依の一騎討ち
しおりを挟む
「皆、他の者を相手していろ」
セブレスはそう言って剣を抜いた。
「いいえ。あんな女、我らが倒します。先生はそのままで」
「お前達では無理だ」
「我らとて先生の所で修行を受けている身です。たかだか女冒険者一人に遅れはとりません」
そう言うと一人の男が芽依目掛けて走り出す。セブレスは小さくため息を吐くだけでそれ以上止めはしなかった。
「先生に切先を向けるとは無礼者め!」
「これは試合でしょ?」
「お前如きが先生と剣を交えようなどと、十年早いわ!」
走りながらも息を乱さない、小さな動作で剣を構えると加速して芽依に斬りかかる。
芽依に向けて放たれた横薙ぎの一撃は、芽依の剣で軽々と受け止められる。
「軽いよ、お兄さんの剣。そんなんだからあの人に相手にされないんじゃない?」
「何だと…!」
激昂した男は芽依に連撃を見舞うがそれらも全て片手で捌いていく芽依。
「何をやっている!」
「助太刀する!」
更に二人の剣士が飛び込んでくる。
取り囲む様にして連続で斬りかかる三人
。芽依はそれを余裕で躱していく。
「ちっ!おい、邪魔をするな!」
「そっちがどけ!」
「喧嘩している場合ではないだろう!」
全く連携が取れていない三人。これなら一人の方が良かったかも知れないわね。
芽依は攻撃を潜ると柄で一撃を加えて一人を倒す。
驚いて動きを止めた剣士を鞘で殴りつけ昏倒させ、怯まずに斬りかかってきた剣士には蹴りを放って倒した。
「これで分かったでしょ?早く、やろ?」
切先をセブレスに向けて言う芽依。
「おのれ…!調子に乗りおって!!」
「やめんか見苦しい」
激昂する弟子の一人を叱りつけるセブレス。
「お前達は大きな勘違いをしている。それが何か分かるか?」
「も、申し訳ありません」
「剣の道を志す者ならば、師を守るのではなく何故立ち向かわない?お前達に守られずとも、この場にいる全員が一度に襲って来ようとも私は負けるつもりはない」
残った弟子達を冷たい目で見ながらセブレスは続ける。
「お前達はあの者の実力も分からんのか?」
「悔しいですが我らでは太刀打ち出来ません。残りの全員でかかれば或いは……」
「戯け者」
そう言って大きく息を吐くセブレス。
「お前達は何故私を守る?」
「先生が戦うべき強者が現れるまでの露払いをと……」
「ならば今この時、だ。お前達は私と戦うつもりがないのなら棄権しろ」
セブレスは芽依の方へ歩いてくる。
「名を教えてもらえますかな?」
「メイだよ」
「成る程。精霊様の御息女であられたか。申し遅れた、私はセブレス・レンブラン。不詳の弟子達が失礼した」
「いいよ。私は気にしてない」
芽依は剣を構える。「早く始めよう」と言わんばかりだ。
「では参る!」
セブレスは剣を構える事をせずに芽依の目の前に飛び込んでいた。
芽依はほんの一瞬対応が遅れたがセブレスの袈裟懸けの一撃を受け流していた。
直後激しく金属がぶつかり合う音が三回、一瞬の攻撃で殆どの者が見えなかった様だが、セブレスは素早く剣を引くと三段突きを見舞っていた。
芽依はそれに反応して全て受け流す。
「くっ……」
芽依が僅かに顔を歪ませる。
三度目の突きが思いの外鋭く、右腕を浅く斬り裂いていた。
「見事。しかしこれは如何かな?」
後ろに下がろうとする芽依に追い討ちを掛けるセブレス。腰溜めに構えた剣を芽依の左肩目掛けて放つ。
芽依の動きが止まる。突き込んでくる剣を右に動いて躱そうとするが、渾身の突きはフェイントだった。
素早く剣を引き戻すと地面を抉り取る様な勢いで剣が振り上げられる。
しかし芽依もその動きを読んでいた。
芽依は鞘を地面に思い切り打ち付けて斬り上げ攻撃を止めると、上体への連撃を放つ。セブレスは身を低くしてそれを躱して剣を引きながら弧を描く様に芽依の側面に移動する。
が、芽依は既にそこには居なかった。
セブレスの動きを追尾する様に動いて彼の右大腿部を斬り裂く。
「ぬぅっ……」
セブレスは転がりながら芽依と距離をとる。芽依は追撃せずに構えを解いた。
「セブレスさん、足を痛めてるよね?」
「目敏いな」
「当たり前だよ。私は冒険者、相手の弱い所を見逃す訳は無いよ」
芽依はそう言うと切先を向けながら言う。
「勝負は着いたよ。棄権して?」
「無念……」
セブレスは剣を捨てて棄権した。
一瞬の攻防だった為、観客の殆どが唖然としたまま何も言わなかった。
「メイ殿も強いのぅ。妾では太刀打ちできぬかもしれん」
そう言うメリーゼハーヴは上機嫌だった。
セブレスはそう言って剣を抜いた。
「いいえ。あんな女、我らが倒します。先生はそのままで」
「お前達では無理だ」
「我らとて先生の所で修行を受けている身です。たかだか女冒険者一人に遅れはとりません」
そう言うと一人の男が芽依目掛けて走り出す。セブレスは小さくため息を吐くだけでそれ以上止めはしなかった。
「先生に切先を向けるとは無礼者め!」
「これは試合でしょ?」
「お前如きが先生と剣を交えようなどと、十年早いわ!」
走りながらも息を乱さない、小さな動作で剣を構えると加速して芽依に斬りかかる。
芽依に向けて放たれた横薙ぎの一撃は、芽依の剣で軽々と受け止められる。
「軽いよ、お兄さんの剣。そんなんだからあの人に相手にされないんじゃない?」
「何だと…!」
激昂した男は芽依に連撃を見舞うがそれらも全て片手で捌いていく芽依。
「何をやっている!」
「助太刀する!」
更に二人の剣士が飛び込んでくる。
取り囲む様にして連続で斬りかかる三人
。芽依はそれを余裕で躱していく。
「ちっ!おい、邪魔をするな!」
「そっちがどけ!」
「喧嘩している場合ではないだろう!」
全く連携が取れていない三人。これなら一人の方が良かったかも知れないわね。
芽依は攻撃を潜ると柄で一撃を加えて一人を倒す。
驚いて動きを止めた剣士を鞘で殴りつけ昏倒させ、怯まずに斬りかかってきた剣士には蹴りを放って倒した。
「これで分かったでしょ?早く、やろ?」
切先をセブレスに向けて言う芽依。
「おのれ…!調子に乗りおって!!」
「やめんか見苦しい」
激昂する弟子の一人を叱りつけるセブレス。
「お前達は大きな勘違いをしている。それが何か分かるか?」
「も、申し訳ありません」
「剣の道を志す者ならば、師を守るのではなく何故立ち向かわない?お前達に守られずとも、この場にいる全員が一度に襲って来ようとも私は負けるつもりはない」
残った弟子達を冷たい目で見ながらセブレスは続ける。
「お前達はあの者の実力も分からんのか?」
「悔しいですが我らでは太刀打ち出来ません。残りの全員でかかれば或いは……」
「戯け者」
そう言って大きく息を吐くセブレス。
「お前達は何故私を守る?」
「先生が戦うべき強者が現れるまでの露払いをと……」
「ならば今この時、だ。お前達は私と戦うつもりがないのなら棄権しろ」
セブレスは芽依の方へ歩いてくる。
「名を教えてもらえますかな?」
「メイだよ」
「成る程。精霊様の御息女であられたか。申し遅れた、私はセブレス・レンブラン。不詳の弟子達が失礼した」
「いいよ。私は気にしてない」
芽依は剣を構える。「早く始めよう」と言わんばかりだ。
「では参る!」
セブレスは剣を構える事をせずに芽依の目の前に飛び込んでいた。
芽依はほんの一瞬対応が遅れたがセブレスの袈裟懸けの一撃を受け流していた。
直後激しく金属がぶつかり合う音が三回、一瞬の攻撃で殆どの者が見えなかった様だが、セブレスは素早く剣を引くと三段突きを見舞っていた。
芽依はそれに反応して全て受け流す。
「くっ……」
芽依が僅かに顔を歪ませる。
三度目の突きが思いの外鋭く、右腕を浅く斬り裂いていた。
「見事。しかしこれは如何かな?」
後ろに下がろうとする芽依に追い討ちを掛けるセブレス。腰溜めに構えた剣を芽依の左肩目掛けて放つ。
芽依の動きが止まる。突き込んでくる剣を右に動いて躱そうとするが、渾身の突きはフェイントだった。
素早く剣を引き戻すと地面を抉り取る様な勢いで剣が振り上げられる。
しかし芽依もその動きを読んでいた。
芽依は鞘を地面に思い切り打ち付けて斬り上げ攻撃を止めると、上体への連撃を放つ。セブレスは身を低くしてそれを躱して剣を引きながら弧を描く様に芽依の側面に移動する。
が、芽依は既にそこには居なかった。
セブレスの動きを追尾する様に動いて彼の右大腿部を斬り裂く。
「ぬぅっ……」
セブレスは転がりながら芽依と距離をとる。芽依は追撃せずに構えを解いた。
「セブレスさん、足を痛めてるよね?」
「目敏いな」
「当たり前だよ。私は冒険者、相手の弱い所を見逃す訳は無いよ」
芽依はそう言うと切先を向けながら言う。
「勝負は着いたよ。棄権して?」
「無念……」
セブレスは剣を捨てて棄権した。
一瞬の攻防だった為、観客の殆どが唖然としたまま何も言わなかった。
「メイ殿も強いのぅ。妾では太刀打ちできぬかもしれん」
そう言うメリーゼハーヴは上機嫌だった。
2
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
【本編完結】隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。
しろねこ。
恋愛
三国から攻め入られ、四面楚歌の絶体絶命の危機だったけど、何とか戦を終わらせられました。
つきましては和平の為の政略結婚に移ります。
冷酷と呼ばれる第一王子。
脳筋マッチョの第二王子。
要領良しな腹黒第三王子。
選ぶのは三人の難ありな王子様方。
宝石と貴金属が有名なパルス国。
騎士と聖女がいるシェスタ国。
緑が多く農業盛んなセラフィム国。
それぞれの国から王女を貰い受けたいと思います。
戦を仕掛けた事を後悔してもらいましょう。
ご都合主義、ハピエン、両片想い大好きな作者による作品です。
現在10万字以上となっています、私の作品で一番長いです。
基本甘々です。
同名キャラにて、様々な作品を書いています。
作品によりキャラの性格、立場が違いますので、それぞれの差分をお楽しみ下さい。
全員ではないですが、イメージイラストあります。
皆様の心に残るような、そして自分の好みを詰め込んだ甘々な作品を書いていきますので、よろしくお願い致します(*´ω`*)
カクヨムさんでも投稿中で、そちらでコンテスト参加している作品となりますm(_ _)m
小説家になろうさんでも掲載中。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる