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竜の国

予選

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次の日からは予選が始まる。
闘技場は海外にある遺跡の様な造りをしていた。観客席は全周囲に配置され野球場やサッカーのスタジアムの様な構造。
中央部は砂地になっていてかなり広い。
予選も全てここで行われるらしい。

朝から予選は行われるそうで、大会の開会の挨拶などは無し。Aブロックから順次始められる。

一度に行われるのは一ブロックのみ。これなら全員を応援する事ができるわね。

今日中に十六ブロック全ての予選が行われ、一日明けてから本戦が行われる。

全員残れるか楽しみね。

朝食をとり終えたら馬車で移動だった。
芽依達は入場口が違い、既に闘技場の中に入っている。私達はラムドやエリオット、フランシスと共に貴賓席に座っていた。

昨日の内に泉の水も渡しておいたし、余程のことがない限り私は応援に専念できるだろう。

「うわぁ……人間がいっぱいだ」
「美味そうとか言うなよ?」
「言うわけないだろ!」

メトとトコヤミが冗談を言っているが、ラムド達の護衛の者達は凍りついていた。

「そう言う事は冗談でも言ってはいけませんよ。皆が怯えてしまいます」

ヤトが二人を窘める。

「その通りだ。我らの振る舞いはハル様の振る舞い。無礼はいかんぞ」
「はい。すみません」
「気を付ける」

カクカミに言われてメトとトコヤミは肩を落として返事をする。

「人間の皆さんは気を悪くしたと思うから今後気を付ければ良いんだよ。でも、良くない振る舞いをした時は母さんに叱ってもらおうかな」

颯太が二人を励ます様に話し掛ける。

「ええ、分かったわ」

私が颯太の提案を了解すると、全員背筋を伸ばして座り直していた。

私はこの子達にも恐れられているのかしら。

「ハルさん、始まりますよ」

隣に座っているエリオットに言われて中央を見る。
門が開いて選手が入場して来た。

現れたのは二十人程で、全員自前の装備を身に付けている。
芽依の姿を見つけると、あちらも気付いたらしく元気に手を振っていた。私も手を振り返して応援する。

広い戦闘エリアに二十人程が好きな所に陣取り開始の合図を待っている。

一人で居るのは芽依だけだ。
近くには四人のグループと五人のグループがいて、どちらも芽依の方をチラチラと見ていた。

「開始と同時にメイ様が狙われてしまいます……」
「メイ様ならあの程度の人数、どうという事は無い。落ち着いて見ていろ」

ギョクリュウが悲しげな声で言っているがカクカミは冷静だ。

芽依はどうかというと、近くの二グループに目もくれず一点を見つめていた。
芽依の見る先には八人の集団。全員白い鎧を纏い長剣を一振り。中央には初老の男性が一人、恐らくあれがセブレスなのだろう。

「門下生に護られてる?あの人強いんだよね?」
「その筈だよ。でもあれじゃあ何だかみっともないね」

マカミとオオトリは怪訝な顔をしていた。

「実力が違い過ぎるのじゃな。あの男、予選で剣を抜くつもりは無いようじゃ」

メリーゼハーヴはセブレスの様子を見て笑っている。彼女の見立て通りの様だ。

大方門下生が勝手について来て露払いをすると言ったのだろう。セブレスは目を閉じて諦めた様な様子で立っていた。

開始の合図は私の身長よりもある銅鑼だった。打ち鳴らされると会場にビリビリと空気の振動が伝わってくる気がする。

始まった瞬間、すぐに芽依の所に来たのは四人のグループ。長剣持ちが二人、槍使いが一人、最後の一人は魔法使いの様だ。

『声を集めてもよろしいですか?』
「ええお願い」

カナエが風の魔法で芽依の周辺の声を拾って聞かせてくれる。

「悪いな姉ちゃん!」
「一人でいる方が悪い!」

そう言いながら剣士二人が芽依に斬り込む。芽依はニコリと笑うと二人の攻撃を簡単に躱して前進。慌てた槍使いが立ちはだかるがそれもすり抜ける。一番後ろにいた魔法使いが慌てて下位の魔法を構築するが発動する前に回し蹴りを一閃、大きく吹き飛ばして壁に叩きつけた。

凄まじい音に戦いを始めた者の大半が芽依達を見ていた。

芽依はまたニコリと笑うと剣先をセブレスに向ける。

声は発していないが『出て来い』と言っているのが分かる。

白の鎧の者達が左右に分かれた先にいた初老の剣士は目を僅かに開き芽依を見ていた。
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