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竜の国
追跡
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手続きが終わりバルディが連れて来られる。手錠と足枷はされたままだ。
「突然暴れ出したら危険なのでこのままお引き渡しします」
「ありがとうございます」
バルディの繋がれた鎖を受け取ろうとしたら精霊達が引き取ってくれる。
「母上、俺が持ちます」
サヅチが鎖を受け取りククノチとシラヒは私を守る様にすぐ前に立っていた。
そこまで警戒しなくても良いと思うのだけど。
『俺が想像していた自由と違うのだが』
「当たり前です。あなたを信用している訳ではないのだから。まずは自身の働きで信用される様に努めなさい」
『分かりましたよ、ご主人様』
諦めた様子で返事をしてくるバルディ。
監獄から出てから気が付いたが、バルディは衛生的に良くない環境に居た様だ。
私は《洗浄》の魔法を掛けて彼の汚れを落とす。
『おお!スゲェ!ご主人様は魔法が得意なのか?』
「ええ。ある程度は使えます」
『俺達竜人族は魔法は使えないからな!こんな魔法が使えるなら一生水浴びをしなくても良さそうだ』
「毎回魔法で洗うわけないでしょう。それくらいは毎日自分でやりなさい」
調子が良いのだから。
「殿下のお陰で手掛かりを失わずに済みました」
「ハルさんの力になれて良かったよ」
「何かお礼をしたいと思います」
「それはハルさんに任せますよ。期待していますね」
そう言って爽やかに笑うエリオット。
次に会うまでに何か考えておこう。
監獄の前でエリオットとは別れて、私達は一度泉に戻る事にする。
泉の近くには誰もいない。芽依達はどこか別の場所で訓練をしているのだろう。
「さて、もう枷を外して良いわ」
「母上、この枷は外せる様に出来ていません」
サヅチがそう言うので見せてもらったが、錠が付く部分に鉄製の棒が差し込まれていて溶着している。
確かに外せる様には出来ていない。
『まさか一生このままって事か?』
「元々生かして帰すつもりはなかったみたいね。手足を切って再生させるのが早いかしら?」
冗談でそう言ったらバルディは口を大きく口を開けて首を横に振っている。
物質に栄養吸収は効くのか試してみようかしらね。
金属製の枷に光沢は無く表面はザラザラとしていた錆も見える。きっと使い回しているのだろう。
腕に着けられた枷に手を触れて《栄養吸収》を行うと、軋む様な嫌な音を立てて崩れて無くなった。
『一体何をしたんだ……?』
「養分を吸い取っただけよ。あなたも私から逃げようなんて思わない事ね」
『はい……!』
少し脅してみただけなのだが効果は抜群の様だ。
あまり気持ちの良いものではないけど。
「では早速、マサがいそうな場所を教えてもらえるかしら?」
バルディの情報を頼りにマサの捜索が始める。
まずは彼らが醤油を作っていた所へ移動。《遠隔視野》と《瞬間移動》を使って海を越えなければならないので泉の水を材料に《物質変換》で小舟を生成、全員で乗って連続で転移を繰り返して隣の大陸に上陸。船を指輪の中に格納して更に転移。三十分程度で醤油製造工場の跡地に到着した。
『……ありえないだろこんなもん』
呆然と立ち尽くすバルディ。私は特に気にせず無人の建物を観察する。
工場は崖を背負う形で建てられていて、後ろにある洞窟と繋がっている様だ。
発酵の工程を洞窟の中でやっていたのね。
「それで、マサが行きそうな所は?」
『あ、ああ……アイツなら多分ゾーヤの産地から離れる事はないだろう。取引をしていたゾーヤ農家の近くにいると思うぜ』
ゾーヤとは大豆の事らしい。
バルディに農家の位置を大まかに教えてもらい《瞬間移動》する。
『何回見ても驚くんだが、その力はなんだ?そんな便利な魔法はないだろ?』
「これは特殊な能力よ。今のところ私にしか使えない」
他の転生者が使える可能性はあるが、それを説明しても仕方がないだろう。
「突然暴れ出したら危険なのでこのままお引き渡しします」
「ありがとうございます」
バルディの繋がれた鎖を受け取ろうとしたら精霊達が引き取ってくれる。
「母上、俺が持ちます」
サヅチが鎖を受け取りククノチとシラヒは私を守る様にすぐ前に立っていた。
そこまで警戒しなくても良いと思うのだけど。
『俺が想像していた自由と違うのだが』
「当たり前です。あなたを信用している訳ではないのだから。まずは自身の働きで信用される様に努めなさい」
『分かりましたよ、ご主人様』
諦めた様子で返事をしてくるバルディ。
監獄から出てから気が付いたが、バルディは衛生的に良くない環境に居た様だ。
私は《洗浄》の魔法を掛けて彼の汚れを落とす。
『おお!スゲェ!ご主人様は魔法が得意なのか?』
「ええ。ある程度は使えます」
『俺達竜人族は魔法は使えないからな!こんな魔法が使えるなら一生水浴びをしなくても良さそうだ』
「毎回魔法で洗うわけないでしょう。それくらいは毎日自分でやりなさい」
調子が良いのだから。
「殿下のお陰で手掛かりを失わずに済みました」
「ハルさんの力になれて良かったよ」
「何かお礼をしたいと思います」
「それはハルさんに任せますよ。期待していますね」
そう言って爽やかに笑うエリオット。
次に会うまでに何か考えておこう。
監獄の前でエリオットとは別れて、私達は一度泉に戻る事にする。
泉の近くには誰もいない。芽依達はどこか別の場所で訓練をしているのだろう。
「さて、もう枷を外して良いわ」
「母上、この枷は外せる様に出来ていません」
サヅチがそう言うので見せてもらったが、錠が付く部分に鉄製の棒が差し込まれていて溶着している。
確かに外せる様には出来ていない。
『まさか一生このままって事か?』
「元々生かして帰すつもりはなかったみたいね。手足を切って再生させるのが早いかしら?」
冗談でそう言ったらバルディは口を大きく口を開けて首を横に振っている。
物質に栄養吸収は効くのか試してみようかしらね。
金属製の枷に光沢は無く表面はザラザラとしていた錆も見える。きっと使い回しているのだろう。
腕に着けられた枷に手を触れて《栄養吸収》を行うと、軋む様な嫌な音を立てて崩れて無くなった。
『一体何をしたんだ……?』
「養分を吸い取っただけよ。あなたも私から逃げようなんて思わない事ね」
『はい……!』
少し脅してみただけなのだが効果は抜群の様だ。
あまり気持ちの良いものではないけど。
「では早速、マサがいそうな場所を教えてもらえるかしら?」
バルディの情報を頼りにマサの捜索が始める。
まずは彼らが醤油を作っていた所へ移動。《遠隔視野》と《瞬間移動》を使って海を越えなければならないので泉の水を材料に《物質変換》で小舟を生成、全員で乗って連続で転移を繰り返して隣の大陸に上陸。船を指輪の中に格納して更に転移。三十分程度で醤油製造工場の跡地に到着した。
『……ありえないだろこんなもん』
呆然と立ち尽くすバルディ。私は特に気にせず無人の建物を観察する。
工場は崖を背負う形で建てられていて、後ろにある洞窟と繋がっている様だ。
発酵の工程を洞窟の中でやっていたのね。
「それで、マサが行きそうな所は?」
『あ、ああ……アイツなら多分ゾーヤの産地から離れる事はないだろう。取引をしていたゾーヤ農家の近くにいると思うぜ』
ゾーヤとは大豆の事らしい。
バルディに農家の位置を大まかに教えてもらい《瞬間移動》する。
『何回見ても驚くんだが、その力はなんだ?そんな便利な魔法はないだろ?』
「これは特殊な能力よ。今のところ私にしか使えない」
他の転生者が使える可能性はあるが、それを説明しても仕方がないだろう。
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