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竜の国
ムストラーデの目的
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「話します。船を沈めるのも仕方のない事です。だがせめて船員だけは助けていただけないでしょうか。彼らは我々の作戦行動とは無関係です」
「いいでしょう。船員の命は保証します」
男は小さく息を吐いてその場に座り込むと話し始めた。
「私はファディア王国魔導特殊部隊『ムストラーデ』所属、コナー・ベルです。我々は陛下の命令で泉を中心とする大森林を調査していました」
「使用していた魔法は探査魔法?」
「探査にも使える『印』を打ち込む魔法です。魔物に効果のある結界を築く基になります」
探査目的だったのは確かだろう。しかし打ち込んだと言う魔法の汎用性は良くない。
「『印』の解除の方法は?」
「専用の術式を打ち込めば消えます」
ならばコナーに解除させよう。
「それでファディア王国が私達を調べる理由は?」
「ライアッド侵攻を妨害された事により大きな脅威になると判断したのでしょう……もっとも、陛下も命じられただけと推測しますが」
「ファディア王国はルドガイアに従っているの?」
「……はい」
やはりルドガイアが関わっているのか。
「ルドガイアに従う事になった経緯を教えてもらえるかしら?」
「はい」
ファディア王国がルドガイアの言いなりになったのは数年前。海竜の群れが島国であるファディアへ攻撃を開始。たった一日で全ての航路上の船は撃沈され、ファディア王国は未曾有の危機に瀕していた。
海竜の長と名乗る者に『我らの指示に従うのであれば生かしておく』と言われ、事実上の降伏。
以来ファディアは海竜の長の指示のままに他国に侵略を繰り返してきたそうだ。
他の国とやや状況が違うのは、海竜の長と呼ばれる者が関わっているからだろうか。
「海竜達はファディアの近くに居るの?」
「はい。ファディア本島の近くに住処を作って住んでいます」
ファディア国について興味はない。ライアッドに攻め込んで来たのだから敵国、ただそれだけだ。
しかし海竜達の動向が気になる。ルドガイアの者の様だが、何か別の意図でファディアを従えている気がしてならない。
海竜の長とやらに話を聞きに行くのも良いかも知れない。
「あなた達このまま任務を放棄して国に帰れと言ったら素直に従う?」
「生きて帰れるのならその通りにします」
コナーは私の問いに半信半疑の様だ。まあ無理もない。先程まで殺すと言われていたのだ。
「それではあなた達を連れてファディアに行きます」
「……精霊、様も来られるのですか?」
「ええ。ファディア国王に話を聞きます。そのついでにあなた達も連れて行きましょう。ヤト、船はもういいわ。ありがとう」
『お安い御用です』
船に絡みついていたヤトが離れる。
死んでいない者達には泉の水を掛けて回復しておく。
「死んだ者について謝罪するつもりはありません。何か言いたい事はありますか?」
「いえ……」
コナーはまだ困惑している様だ。
「ファディアはここからどっちの方向にあるの?」
「……確か、向こう。海を越えて遥か彼方です」
《遠隔視野》を限界まで遠くに延ばして見たが島は見えない。まあ何度かやれば見えてくるだろう。
「船に乗りなさい。ファディアに行きます」
「はい……」
回復した魔術師と共に船に乗り込むコナー。
私達も船に乗り込んだ。船員や兵士達は私達を見て困惑しているが武器を向けてくる様な事はなかった。
「ヤト、戻って颯太にこの事を伝えて。夕飯までには戻るわ」
『お気をつけて』
ヤトを送還すると、《瞬間移動》で船ごと先程の海の上まで移動。
《遠隔視野》を使って更に向こう側を見る。まだ島らしきものは見えない。
《瞬間移動》を使い《遠隔視野》で島を探す。
何やら船倉が騒がしい。
「どうしたの?」
「浸水です。先程の大蛇に船を破壊されていたらしく海水が入ってきています」
コナーが教えてくれたが、それは彼らに任せて私は更に《瞬間移動》を実行する。
《遠隔視野》を使って確認すると、島が見える。どうやらあれがファディアの様だ。
「いいでしょう。船員の命は保証します」
男は小さく息を吐いてその場に座り込むと話し始めた。
「私はファディア王国魔導特殊部隊『ムストラーデ』所属、コナー・ベルです。我々は陛下の命令で泉を中心とする大森林を調査していました」
「使用していた魔法は探査魔法?」
「探査にも使える『印』を打ち込む魔法です。魔物に効果のある結界を築く基になります」
探査目的だったのは確かだろう。しかし打ち込んだと言う魔法の汎用性は良くない。
「『印』の解除の方法は?」
「専用の術式を打ち込めば消えます」
ならばコナーに解除させよう。
「それでファディア王国が私達を調べる理由は?」
「ライアッド侵攻を妨害された事により大きな脅威になると判断したのでしょう……もっとも、陛下も命じられただけと推測しますが」
「ファディア王国はルドガイアに従っているの?」
「……はい」
やはりルドガイアが関わっているのか。
「ルドガイアに従う事になった経緯を教えてもらえるかしら?」
「はい」
ファディア王国がルドガイアの言いなりになったのは数年前。海竜の群れが島国であるファディアへ攻撃を開始。たった一日で全ての航路上の船は撃沈され、ファディア王国は未曾有の危機に瀕していた。
海竜の長と名乗る者に『我らの指示に従うのであれば生かしておく』と言われ、事実上の降伏。
以来ファディアは海竜の長の指示のままに他国に侵略を繰り返してきたそうだ。
他の国とやや状況が違うのは、海竜の長と呼ばれる者が関わっているからだろうか。
「海竜達はファディアの近くに居るの?」
「はい。ファディア本島の近くに住処を作って住んでいます」
ファディア国について興味はない。ライアッドに攻め込んで来たのだから敵国、ただそれだけだ。
しかし海竜達の動向が気になる。ルドガイアの者の様だが、何か別の意図でファディアを従えている気がしてならない。
海竜の長とやらに話を聞きに行くのも良いかも知れない。
「あなた達このまま任務を放棄して国に帰れと言ったら素直に従う?」
「生きて帰れるのならその通りにします」
コナーは私の問いに半信半疑の様だ。まあ無理もない。先程まで殺すと言われていたのだ。
「それではあなた達を連れてファディアに行きます」
「……精霊、様も来られるのですか?」
「ええ。ファディア国王に話を聞きます。そのついでにあなた達も連れて行きましょう。ヤト、船はもういいわ。ありがとう」
『お安い御用です』
船に絡みついていたヤトが離れる。
死んでいない者達には泉の水を掛けて回復しておく。
「死んだ者について謝罪するつもりはありません。何か言いたい事はありますか?」
「いえ……」
コナーはまだ困惑している様だ。
「ファディアはここからどっちの方向にあるの?」
「……確か、向こう。海を越えて遥か彼方です」
《遠隔視野》を限界まで遠くに延ばして見たが島は見えない。まあ何度かやれば見えてくるだろう。
「船に乗りなさい。ファディアに行きます」
「はい……」
回復した魔術師と共に船に乗り込むコナー。
私達も船に乗り込んだ。船員や兵士達は私達を見て困惑しているが武器を向けてくる様な事はなかった。
「ヤト、戻って颯太にこの事を伝えて。夕飯までには戻るわ」
『お気をつけて』
ヤトを送還すると、《瞬間移動》で船ごと先程の海の上まで移動。
《遠隔視野》を使って更に向こう側を見る。まだ島らしきものは見えない。
《瞬間移動》を使い《遠隔視野》で島を探す。
何やら船倉が騒がしい。
「どうしたの?」
「浸水です。先程の大蛇に船を破壊されていたらしく海水が入ってきています」
コナーが教えてくれたが、それは彼らに任せて私は更に《瞬間移動》を実行する。
《遠隔視野》を使って確認すると、島が見える。どうやらあれがファディアの様だ。
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