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勇者
お茶
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ギルドの近くに軽食を扱っている店が出来ていたのでそこでお茶でも飲みながら待つ事にした。
「ハルさん」
「はい」
飲み物を注文し終えて待っている時にアルが声を掛けてきた。彼の目は真剣だ。
「ハルさんは……その、エリオット殿下と結婚するんですか……?」
「しませんよ。まず身分が違うし、そもそも種族が違います。あれは殿下の病気の様なものです」
芽依が言った事を気にしていた様だ。
「ハルさんは精霊だけど、人間の男性とは……け、結婚はしないんですか……?」
耳まで赤くなって聞いてくるアル。
「私はほぼ永遠の命を持つ精霊です。それに比べて人間の一生は短い。一人の人を愛してしまったら別れの時に辛くなると思うのです。最愛の人が居なくなった後、大切な人を失って空いた心の穴は埋めようの無いものになるでしょう。その想いを抱いて永遠に生きなければならないのは辛いと思いませんか?」
私はアルに諭す様に話す。アルは顔色を変えて真剣に話を聞いていた。
「ごめんなさい……深く考えもせずに」
「いいのですよ。アルさんが聞いてきた事が悪い事だとは思いません」
流れる沈黙。
アルの好意はよく分かっている。今言った事は人間の側にも言える事なのだ。最愛の人を残して先に死ぬのは辛いだろう。だから私ではなく同じ人間の女性と結ばれた方が幸せなのだ。
少し気不味い。
注文した飲み物を店員が持ってきた。
「さ、さあ!飲もう!」
「そ、そうだね」
話題を変えようと芽依とセロが飲み物をみんなに回していく。
「あったかい紅茶です~。エレさんのそれは何ですか?」
「エルルの実を煮出したお茶です。香りが良くてほんのり甘くて美味しいんですよ!」
マイが聞くとエレが元気よく答える。
「エレさんの故郷にもエルルの実はあるんだね。私達も好き」
リンとミラもエレと同じ物を頼んでいた様だ。
「はい!疲れた時は実のなっているエルルの木を齧って元気を出していました」
「木を齧る……?ああ、竜の姿の時だね」
木そのものにも疲労回復の効果がある様だ。
私はマイと同じ紅茶だ。ライブラは『水で良い』と言っていたので果実水を頼んでおいた。
「こんなお店が出来てるなんて知らなかったです」
「ホントね。今までこんな値段でお茶は飲めなかったよね」
ミラとリンはお茶を飲みながら話をしている。確かに格段に安いと思う。
「商隊が殆ど襲われなくなったのと、ウルゼイドとの交易が盛んになったからなんだよ。アンタ達冒険者のお陰だ」
店員の男性がそう説明してくれる。なるほど、私達のやった事は無駄では無かったという事ね。
店員の話を聞いて芽依やセロ達はとても嬉しそうだ。
「アンタ達も頑張って立派な冒険者になるんだぞ!こいつはサービスだ」
そう言ってテーブルに置かれたのは山積みのクッキーが盛られた皿。
どうやらこの店員は私達の事を知らないらしい。見かけない顔だし最近この街に来たのだろう。
「ありがとうございます!」
みんなでクッキーとお茶を楽しんで過ごした。
一時間ほど経ってから会計を済ませて冒険者ギルドに戻ると、報酬と冒険者証が出来上がっていた。
「それから一つ、追加でやっていただきたい仕事があります」
「何でしょう?」
「この書簡を王都の父……ギルドマスターに渡して欲しいのです」
「いいかな?ハルさん」
「はい」
セロは私に確認をとってくる。《瞬間移動》で一瞬で済む仕事だ。
「その書簡には皆さんが解決してくれたソアニール王国の事が書かれています」
リフィナはその報告を王都のギルドマスターにしてほしいのだと言う。
「今回の働きは鉄級では到底収まらないものです。王都に内容を確認してもらって追加の報酬をいただける様に手配する為のものです」
そう言う事ならやって損は無さそうだ。
「ハルさん」
「はい」
飲み物を注文し終えて待っている時にアルが声を掛けてきた。彼の目は真剣だ。
「ハルさんは……その、エリオット殿下と結婚するんですか……?」
「しませんよ。まず身分が違うし、そもそも種族が違います。あれは殿下の病気の様なものです」
芽依が言った事を気にしていた様だ。
「ハルさんは精霊だけど、人間の男性とは……け、結婚はしないんですか……?」
耳まで赤くなって聞いてくるアル。
「私はほぼ永遠の命を持つ精霊です。それに比べて人間の一生は短い。一人の人を愛してしまったら別れの時に辛くなると思うのです。最愛の人が居なくなった後、大切な人を失って空いた心の穴は埋めようの無いものになるでしょう。その想いを抱いて永遠に生きなければならないのは辛いと思いませんか?」
私はアルに諭す様に話す。アルは顔色を変えて真剣に話を聞いていた。
「ごめんなさい……深く考えもせずに」
「いいのですよ。アルさんが聞いてきた事が悪い事だとは思いません」
流れる沈黙。
アルの好意はよく分かっている。今言った事は人間の側にも言える事なのだ。最愛の人を残して先に死ぬのは辛いだろう。だから私ではなく同じ人間の女性と結ばれた方が幸せなのだ。
少し気不味い。
注文した飲み物を店員が持ってきた。
「さ、さあ!飲もう!」
「そ、そうだね」
話題を変えようと芽依とセロが飲み物をみんなに回していく。
「あったかい紅茶です~。エレさんのそれは何ですか?」
「エルルの実を煮出したお茶です。香りが良くてほんのり甘くて美味しいんですよ!」
マイが聞くとエレが元気よく答える。
「エレさんの故郷にもエルルの実はあるんだね。私達も好き」
リンとミラもエレと同じ物を頼んでいた様だ。
「はい!疲れた時は実のなっているエルルの木を齧って元気を出していました」
「木を齧る……?ああ、竜の姿の時だね」
木そのものにも疲労回復の効果がある様だ。
私はマイと同じ紅茶だ。ライブラは『水で良い』と言っていたので果実水を頼んでおいた。
「こんなお店が出来てるなんて知らなかったです」
「ホントね。今までこんな値段でお茶は飲めなかったよね」
ミラとリンはお茶を飲みながら話をしている。確かに格段に安いと思う。
「商隊が殆ど襲われなくなったのと、ウルゼイドとの交易が盛んになったからなんだよ。アンタ達冒険者のお陰だ」
店員の男性がそう説明してくれる。なるほど、私達のやった事は無駄では無かったという事ね。
店員の話を聞いて芽依やセロ達はとても嬉しそうだ。
「アンタ達も頑張って立派な冒険者になるんだぞ!こいつはサービスだ」
そう言ってテーブルに置かれたのは山積みのクッキーが盛られた皿。
どうやらこの店員は私達の事を知らないらしい。見かけない顔だし最近この街に来たのだろう。
「ありがとうございます!」
みんなでクッキーとお茶を楽しんで過ごした。
一時間ほど経ってから会計を済ませて冒険者ギルドに戻ると、報酬と冒険者証が出来上がっていた。
「それから一つ、追加でやっていただきたい仕事があります」
「何でしょう?」
「この書簡を王都の父……ギルドマスターに渡して欲しいのです」
「いいかな?ハルさん」
「はい」
セロは私に確認をとってくる。《瞬間移動》で一瞬で済む仕事だ。
「その書簡には皆さんが解決してくれたソアニール王国の事が書かれています」
リフィナはその報告を王都のギルドマスターにしてほしいのだと言う。
「今回の働きは鉄級では到底収まらないものです。王都に内容を確認してもらって追加の報酬をいただける様に手配する為のものです」
そう言う事ならやって損は無さそうだ。
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