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勇者
鋼級へ昇格
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その日の夜、またしてもアルシファーナに会った。
「また一人勇者を倒してくれたんだね」
「ええ。一つ聞きたい事があるのだけど」
「なにかなー?」
「私が倒した勇者コースケは、最近まで普通に生活していたそうなの。神の御告げがあってからおかしな行動をする様になったそうだけど、何か知ってる?」
「えーと、確か彼を呼び出したのは……ん?あれれ、でもそうすると……」
アルシファーナは記憶を思い出している様だが何か違和感があるらしい。
「えっとね、彼を転生させたのと新しい力を与えたのは別の神だよ。転生させたのはボクの味方の神だけど力を追加したのは敵対している神。つまりコースケ君は利用されたって事だね」
「そう……」
殺すのは軽率だったか。
「ハルさんは悪くないよ。一番悪いのは力を与えた神だけど、彼も洗脳された訳じゃない。自分の意志でハルさんと敵対する道を選んだのだから」
「分かったわ」
後味の悪い話だが、アルシファーナの言う通りなら彼にも責任はある。
「あ、そうそう!コースケ君から奪った能力は《精神支配》だよ。効果が強力だから人の体に悪い影響が出るかも。使う時は気を付けて」
そう言ってアルシファーナは居なくなる。私が目を覚ましてしまったのだ。
もう少し詳しく聞きたかったが、この力は不用意に使うべきではない。
☆★☆★☆★☆★
翌日、皆と広場で待ち合わせて冒険者ギルドへ報告に行く。
ホールにリフィナが居たので彼女に報告をする事に。
「お疲れ様でした。調査は完了されたのですね」
「はい。順番に説明していきますね」
セロが代表して話をしてくれる。空洞をアンヴァールに乗って走っていたらソアニール王国の兵と出会した話の所で止められた。
まだ最序盤なのだけど。
「ちょ、ちょっと待ってください……私の部屋で話しましょう」
ホールで話す事ではないと判断したのだろう、リフィナは受付を他の職員に代わってギルドマスターの部屋に移動する。
「それで、ソアニールの兵と遭遇して、まさか……」
「倒しました。彼らの狙いがハルさんだったからです」
「そう、ですか……」
セロは丁寧に説明していく。
私の水を掛けて治療を行ったら洗脳状態になっていた隊長を正気に戻す事が出来、兵士達の案内でソアニールに行くことになった事。
ソアニール側の出口には砦が築かれていて空洞は人為的に造られたものだったと知った事。
その砦を護る騎士を倒して砦を制圧、そのまま王都へ乗り込んだ事。
リフィナの顔色が少しずつ悪くなっていき、こめかみを押さえて俯いてしまった。
「大丈夫ですか?」
「はい……空洞の調査報告だけだと思っていたので心の準備が出来ていませんでした」
深呼吸をして両手で頬を叩くと「続けてください」と言ってくる。
その後の話を聞いてリフィナは完全に固まってしまった。
王城に乗り込んでソアニールの勇者コースケを私が倒して操られていた人を助けた事、洗脳を解くのと同時に王都で拡がっていた病気の治療を行い国王や総督に感謝されながら帰って来た事。全て説明し終わる頃には一周回ってリフィナは正気に戻っていた。
「──という事で近々ソアニールからライアッド王国に使者が来る筈です」
「空洞の調査……いえ、それ以上の事を解決してくださったのですね」
「はい。殆どハルさんの力ですけどね」
「そんな事ありません。皆さんと一緒だったからやり切れたのです」
世辞ではない。私一人なら逆に空洞の終点を確認したら引き返していたかもしれない。ソアニールの事をただ『敵国』とだけ認識して。
そして後日トコヤミに乗って城に乗り込んでいただろう。その場合は今回よりも格段に被害が大きくなっていたかも知れない。
「それでは報酬ですが、こちらからは一人五万エルズをお支払い致します。それからセロさん達は鋼級に昇格していただきます」
報酬の用意と冒険者証の更新に少しだけ時間が欲しいというので、私達は何処かの適当な店に入って時間を潰す事にした。
「また一人勇者を倒してくれたんだね」
「ええ。一つ聞きたい事があるのだけど」
「なにかなー?」
「私が倒した勇者コースケは、最近まで普通に生活していたそうなの。神の御告げがあってからおかしな行動をする様になったそうだけど、何か知ってる?」
「えーと、確か彼を呼び出したのは……ん?あれれ、でもそうすると……」
アルシファーナは記憶を思い出している様だが何か違和感があるらしい。
「えっとね、彼を転生させたのと新しい力を与えたのは別の神だよ。転生させたのはボクの味方の神だけど力を追加したのは敵対している神。つまりコースケ君は利用されたって事だね」
「そう……」
殺すのは軽率だったか。
「ハルさんは悪くないよ。一番悪いのは力を与えた神だけど、彼も洗脳された訳じゃない。自分の意志でハルさんと敵対する道を選んだのだから」
「分かったわ」
後味の悪い話だが、アルシファーナの言う通りなら彼にも責任はある。
「あ、そうそう!コースケ君から奪った能力は《精神支配》だよ。効果が強力だから人の体に悪い影響が出るかも。使う時は気を付けて」
そう言ってアルシファーナは居なくなる。私が目を覚ましてしまったのだ。
もう少し詳しく聞きたかったが、この力は不用意に使うべきではない。
☆★☆★☆★☆★
翌日、皆と広場で待ち合わせて冒険者ギルドへ報告に行く。
ホールにリフィナが居たので彼女に報告をする事に。
「お疲れ様でした。調査は完了されたのですね」
「はい。順番に説明していきますね」
セロが代表して話をしてくれる。空洞をアンヴァールに乗って走っていたらソアニール王国の兵と出会した話の所で止められた。
まだ最序盤なのだけど。
「ちょ、ちょっと待ってください……私の部屋で話しましょう」
ホールで話す事ではないと判断したのだろう、リフィナは受付を他の職員に代わってギルドマスターの部屋に移動する。
「それで、ソアニールの兵と遭遇して、まさか……」
「倒しました。彼らの狙いがハルさんだったからです」
「そう、ですか……」
セロは丁寧に説明していく。
私の水を掛けて治療を行ったら洗脳状態になっていた隊長を正気に戻す事が出来、兵士達の案内でソアニールに行くことになった事。
ソアニール側の出口には砦が築かれていて空洞は人為的に造られたものだったと知った事。
その砦を護る騎士を倒して砦を制圧、そのまま王都へ乗り込んだ事。
リフィナの顔色が少しずつ悪くなっていき、こめかみを押さえて俯いてしまった。
「大丈夫ですか?」
「はい……空洞の調査報告だけだと思っていたので心の準備が出来ていませんでした」
深呼吸をして両手で頬を叩くと「続けてください」と言ってくる。
その後の話を聞いてリフィナは完全に固まってしまった。
王城に乗り込んでソアニールの勇者コースケを私が倒して操られていた人を助けた事、洗脳を解くのと同時に王都で拡がっていた病気の治療を行い国王や総督に感謝されながら帰って来た事。全て説明し終わる頃には一周回ってリフィナは正気に戻っていた。
「──という事で近々ソアニールからライアッド王国に使者が来る筈です」
「空洞の調査……いえ、それ以上の事を解決してくださったのですね」
「はい。殆どハルさんの力ですけどね」
「そんな事ありません。皆さんと一緒だったからやり切れたのです」
世辞ではない。私一人なら逆に空洞の終点を確認したら引き返していたかもしれない。ソアニールの事をただ『敵国』とだけ認識して。
そして後日トコヤミに乗って城に乗り込んでいただろう。その場合は今回よりも格段に被害が大きくなっていたかも知れない。
「それでは報酬ですが、こちらからは一人五万エルズをお支払い致します。それからセロさん達は鋼級に昇格していただきます」
報酬の用意と冒険者証の更新に少しだけ時間が欲しいというので、私達は何処かの適当な店に入って時間を潰す事にした。
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