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勇者
ソアニール国
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ここにいる者以外でコースケに思考操作を受けている者がいた場合、彼の死によって暴走していたりはしないだろうか?
心配なのは国の中枢にいる者達、王族や貴族、軍の上層部だ。
それを先に確認しておく必要があるだろう。
「教えて下さい、コースケの上官に当たる方は何処にいますか?」
「勇者コースケの直属の上司になる方はブランシュ総督です。総督は城に居られる筈ですが」
「安否を確認したいのですが、案内をしていただくか何方か見てきてはいただけませんか?」
「その必要はありません」
城の入り口から声がする。現れたのは黒の長い髪をした青年。白銀の鎧を着て腰には長剣。マントを靡かせてゆっくりと歩いてきた。その後ろには騎士が数名控えている。
「私が勇者コースケの上官、総督のブランシュ・リージャンです」
「私は泉の精霊のハルです」
「泉の精霊様、どうやらコースケを討ってくださったのですね」
ブランシュの口振りからすると、コースケは思考操作の能力で何やらよからぬ事を企てていたのだろう。
「はい。私がこの手で倒しました」
ソアニール軍の兵士達から響めきの声が聞こえてくる。
「彼は多くの者を惑わし、自分の思うがままに操ってきました」
「ブランシュ様はご無事だったのですか?」
「ええ。彼の能力は効く者と効かない者がいる様なのです」
その違いは何だろうか?
私達には誰一人として効かなかった。
ライズは掛かっていたがオルブライトには効いていなかった。
総督であるブランシュにも効果が無い。
彼らの違いは何だろうか?
「彼の能力が効かない事に心当たりはありますか?」
「関連があるかは分かりませんが、私や一部の者は精霊様の水で助けらた事があります」
この国に水を渡した事はないが、今まで渡してきた者の誰かから流通したのだろう。あげた物なのでどの様にしても問題ないが、隣の国まで行っているとは。
「詳しく聞かせていただけますか?」
「はい」
ブランシュが言うにはこの国の一部で謎の病気が広がったらしく、その時に隣国から伝わってきた泉の精の水を飲んで治ったそうだ。
「その水は薬剤師によって薄められた物だったそうですが一口だけで症状が完全に無くなりました。多くの者が精霊様に救われております」
「お母さんの水に助けられたクセに捕まえようなんて酷い国だよ!」
話を聞いていた芽依が怒っている。
「全くもってその通りです。そちらのライズ殿と上官である大隊長は病気にはかかっておらず、勇者コースケの言いなりになっておりました」
成る程、薄められた私の水を飲んでいた者は思考操作が通じなかったと。
私の水が彼の能力を拒絶する効果があるのには驚いたが、そのお陰でコースケを簡単に倒す事が出来た。
「国王陛下は操られていないのですか?」
「はい。陛下は精霊様の水を飲まれていますので」
「お話をお伺いできますか?」
「既に手配しております。精霊様、お連れの皆様も、城内にお越しください」
私達はブランシュの案内で城内を進む。
途中、騎士や兵士が取り押さえられているのを見かける。
「彼らは勇者コースケの言いなりになっていた者達です。大多数の兵が正気に戻ったので、残りの者は私達で取り押さえる事が出来ました」
「そう。彼の能力は私の水で無力化出来ます」
取り押さえられている兵士の一人に《過剰分泌》させた水をかける。
「う……俺は一体……?」
「お前……正気に戻ったのか?」
取り押さえていた兵士達が驚いている。
そのまま近くで負傷して倒れている騎士や兵士も治療を行い、拘束されている騎士、兵士にも《過剰分泌》させた水を掛けて呪縛から解放していく。
「残りの方の治療も私が直接行います。まずは陛下とお話しさせていただきます」
「……分かりました。こちらです」
ブランシュは酷く驚いていたが、今はここの国王と話をしてからだ。
心配なのは国の中枢にいる者達、王族や貴族、軍の上層部だ。
それを先に確認しておく必要があるだろう。
「教えて下さい、コースケの上官に当たる方は何処にいますか?」
「勇者コースケの直属の上司になる方はブランシュ総督です。総督は城に居られる筈ですが」
「安否を確認したいのですが、案内をしていただくか何方か見てきてはいただけませんか?」
「その必要はありません」
城の入り口から声がする。現れたのは黒の長い髪をした青年。白銀の鎧を着て腰には長剣。マントを靡かせてゆっくりと歩いてきた。その後ろには騎士が数名控えている。
「私が勇者コースケの上官、総督のブランシュ・リージャンです」
「私は泉の精霊のハルです」
「泉の精霊様、どうやらコースケを討ってくださったのですね」
ブランシュの口振りからすると、コースケは思考操作の能力で何やらよからぬ事を企てていたのだろう。
「はい。私がこの手で倒しました」
ソアニール軍の兵士達から響めきの声が聞こえてくる。
「彼は多くの者を惑わし、自分の思うがままに操ってきました」
「ブランシュ様はご無事だったのですか?」
「ええ。彼の能力は効く者と効かない者がいる様なのです」
その違いは何だろうか?
私達には誰一人として効かなかった。
ライズは掛かっていたがオルブライトには効いていなかった。
総督であるブランシュにも効果が無い。
彼らの違いは何だろうか?
「彼の能力が効かない事に心当たりはありますか?」
「関連があるかは分かりませんが、私や一部の者は精霊様の水で助けらた事があります」
この国に水を渡した事はないが、今まで渡してきた者の誰かから流通したのだろう。あげた物なのでどの様にしても問題ないが、隣の国まで行っているとは。
「詳しく聞かせていただけますか?」
「はい」
ブランシュが言うにはこの国の一部で謎の病気が広がったらしく、その時に隣国から伝わってきた泉の精の水を飲んで治ったそうだ。
「その水は薬剤師によって薄められた物だったそうですが一口だけで症状が完全に無くなりました。多くの者が精霊様に救われております」
「お母さんの水に助けられたクセに捕まえようなんて酷い国だよ!」
話を聞いていた芽依が怒っている。
「全くもってその通りです。そちらのライズ殿と上官である大隊長は病気にはかかっておらず、勇者コースケの言いなりになっておりました」
成る程、薄められた私の水を飲んでいた者は思考操作が通じなかったと。
私の水が彼の能力を拒絶する効果があるのには驚いたが、そのお陰でコースケを簡単に倒す事が出来た。
「国王陛下は操られていないのですか?」
「はい。陛下は精霊様の水を飲まれていますので」
「お話をお伺いできますか?」
「既に手配しております。精霊様、お連れの皆様も、城内にお越しください」
私達はブランシュの案内で城内を進む。
途中、騎士や兵士が取り押さえられているのを見かける。
「彼らは勇者コースケの言いなりになっていた者達です。大多数の兵が正気に戻ったので、残りの者は私達で取り押さえる事が出来ました」
「そう。彼の能力は私の水で無力化出来ます」
取り押さえられている兵士の一人に《過剰分泌》させた水をかける。
「う……俺は一体……?」
「お前……正気に戻ったのか?」
取り押さえていた兵士達が驚いている。
そのまま近くで負傷して倒れている騎士や兵士も治療を行い、拘束されている騎士、兵士にも《過剰分泌》させた水を掛けて呪縛から解放していく。
「残りの方の治療も私が直接行います。まずは陛下とお話しさせていただきます」
「……分かりました。こちらです」
ブランシュは酷く驚いていたが、今はここの国王と話をしてからだ。
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