339 / 453
勇者
王都へ
しおりを挟む
この砦の最上位者は騎士オルブライトだったらしい。
この場でその他の情報を得ようと思う。
オルブライトはライズの知らない情報を持っていた。ケイヴワームを操って空洞を作ったのが総督補佐官の男らしい。名前はヨースケというらしいので転生者に違いない。
だとしたら間違いなく私を狙って一連の行動を起こしているのだろう。国同士を巻き込んだ大事になる前に決着させるべきだ。
「総督補佐官が何処にいるか分かりますか?」
「……王都だ」
それならば王都まで行かねなければならないわね。
しかし気になるのは重要拠点になるこの砦の護りを任せているオルブライトに思考操作を掛けていないのは何故だろうか。
掛けるのに特殊な条件が必要でオルブライトにはかけられなかったのか、それとも効果が不安定で信頼性に欠ける能力なのか。
本人に会って聞いてみるとしよう。
私達は下で戦っていたライズ達と合流し、彼らの傷の手当てを行う。
「精霊様、申し訳ありません」
「謝る事はありません。無事で良かった」
ライズの中隊に死人は出なかったが重傷者は何人か出ていた。
私は《拡張》を使い広範囲に泉の水を雨にして降らせる。一緒に砦の兵も回復するだろう。
「おい、どうした?」
「うぅっ……!ぐはっ……」
「隊長!どうしたんですか!?」
泉の水を浴びて苦しむ兵士が数人いる。
もしやと思いその兵士に《過剰分泌》させた泉の水を掛ける。すると苦しんでいたのが治っていった。
症状はライズと同じだ。オルブライトには思考操作を掛けずに他の兵士数人には掛けていた様だ。
掛けられていた兵士はどれも隊長位。
「これは一体……?」
オルブライトが兵を心配してやって来た。颯太も彼の横に立っている。
「ヨースケという男に会った事があるのでしたね?その時に何かされた事はありませんか?」
「祝福を与えるとかで手を翳して何か呟いていたが……神への祈りとは違うものだった。終わった直後に怪訝な顔をしていたのを覚えている」
その時に思考操作を掛けて失敗したということかしらね。
「分かりました。ありがとう」
「精霊様、このまま王都に行かれるのですか?」
「はい。どれくらい掛かりますか?」
「馬車でなら二十日もあれば」
「ライズさん達は私を連れて帰らなければならないのですね?」
「はい」
馬車で二十日の行程を普通に移動していては時間が掛かり過ぎるしその間に攻撃を受けないとは限らない。
「ならば私の家族に送ってもらいましょう。トコヤミ!」
『はっ!ハル様、我の出番ですね?』
「ええ。今回はソアニール王国の王都に」
空中に現れた巨大な竜は砦に影を落とし、そこにいた兵士達を怯えさせた。
「トコヤミに乗せてもらいます」
「こちらの竜は精霊様の……?」
「はい。皆さんにも乗っていただきます」
ライズ達はトコヤミを見上げながら固まっていた。
「ギョクリュウ、アンヴァール達もありがとう。あとはトコヤミに連れて行ってもらいます」
『お役に立てて良かったです。いつでもお呼びください』
ギョクリュウ達を送還する。
「シナツとサヅチもご苦労様。あなた達のお陰で被害が少なくて済んだわ」
「母上、今から敵の本拠地に殴り込みに行くんだろう?俺達もついて行くぜ」
二人の精霊は私の目の前で跪き目を輝かせていた。
「サヅチ、戦争をしに行くわけではないの。もしもあなた達の力が必要になったらすぐに呼ぶわ」
「承知しました。母上、どうかお気を付けて」
シナツはそう言って微笑むと、サヅチと共に帰っていった。
「僕達は帰さないよね?」
「そうね……一緒に行ってもらうわ」
『お任せください!』
颯太とカナエは経験が豊富であらゆる事に対処できる。連れて行く者が大所帯なのだ、今回は二人に頼るとしよう。
トコヤミの背中に馬車ごと中隊を乗せて私達は王都へ向かった。
この場でその他の情報を得ようと思う。
オルブライトはライズの知らない情報を持っていた。ケイヴワームを操って空洞を作ったのが総督補佐官の男らしい。名前はヨースケというらしいので転生者に違いない。
だとしたら間違いなく私を狙って一連の行動を起こしているのだろう。国同士を巻き込んだ大事になる前に決着させるべきだ。
「総督補佐官が何処にいるか分かりますか?」
「……王都だ」
それならば王都まで行かねなければならないわね。
しかし気になるのは重要拠点になるこの砦の護りを任せているオルブライトに思考操作を掛けていないのは何故だろうか。
掛けるのに特殊な条件が必要でオルブライトにはかけられなかったのか、それとも効果が不安定で信頼性に欠ける能力なのか。
本人に会って聞いてみるとしよう。
私達は下で戦っていたライズ達と合流し、彼らの傷の手当てを行う。
「精霊様、申し訳ありません」
「謝る事はありません。無事で良かった」
ライズの中隊に死人は出なかったが重傷者は何人か出ていた。
私は《拡張》を使い広範囲に泉の水を雨にして降らせる。一緒に砦の兵も回復するだろう。
「おい、どうした?」
「うぅっ……!ぐはっ……」
「隊長!どうしたんですか!?」
泉の水を浴びて苦しむ兵士が数人いる。
もしやと思いその兵士に《過剰分泌》させた泉の水を掛ける。すると苦しんでいたのが治っていった。
症状はライズと同じだ。オルブライトには思考操作を掛けずに他の兵士数人には掛けていた様だ。
掛けられていた兵士はどれも隊長位。
「これは一体……?」
オルブライトが兵を心配してやって来た。颯太も彼の横に立っている。
「ヨースケという男に会った事があるのでしたね?その時に何かされた事はありませんか?」
「祝福を与えるとかで手を翳して何か呟いていたが……神への祈りとは違うものだった。終わった直後に怪訝な顔をしていたのを覚えている」
その時に思考操作を掛けて失敗したということかしらね。
「分かりました。ありがとう」
「精霊様、このまま王都に行かれるのですか?」
「はい。どれくらい掛かりますか?」
「馬車でなら二十日もあれば」
「ライズさん達は私を連れて帰らなければならないのですね?」
「はい」
馬車で二十日の行程を普通に移動していては時間が掛かり過ぎるしその間に攻撃を受けないとは限らない。
「ならば私の家族に送ってもらいましょう。トコヤミ!」
『はっ!ハル様、我の出番ですね?』
「ええ。今回はソアニール王国の王都に」
空中に現れた巨大な竜は砦に影を落とし、そこにいた兵士達を怯えさせた。
「トコヤミに乗せてもらいます」
「こちらの竜は精霊様の……?」
「はい。皆さんにも乗っていただきます」
ライズ達はトコヤミを見上げながら固まっていた。
「ギョクリュウ、アンヴァール達もありがとう。あとはトコヤミに連れて行ってもらいます」
『お役に立てて良かったです。いつでもお呼びください』
ギョクリュウ達を送還する。
「シナツとサヅチもご苦労様。あなた達のお陰で被害が少なくて済んだわ」
「母上、今から敵の本拠地に殴り込みに行くんだろう?俺達もついて行くぜ」
二人の精霊は私の目の前で跪き目を輝かせていた。
「サヅチ、戦争をしに行くわけではないの。もしもあなた達の力が必要になったらすぐに呼ぶわ」
「承知しました。母上、どうかお気を付けて」
シナツはそう言って微笑むと、サヅチと共に帰っていった。
「僕達は帰さないよね?」
「そうね……一緒に行ってもらうわ」
『お任せください!』
颯太とカナエは経験が豊富であらゆる事に対処できる。連れて行く者が大所帯なのだ、今回は二人に頼るとしよう。
トコヤミの背中に馬車ごと中隊を乗せて私達は王都へ向かった。
3
お気に入りに追加
434
あなたにおすすめの小説
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
可愛いあの子は溺愛されるのがお約束
猫屋ネコ吉
ファンタジー
酷い虐待を受けてクリスマスの夜死んだ主人公が異世界の神様によって転生した。
転生した先は色々な種族と魔物がいる剣と魔法と呪いがある世界。
そこで転生チートとして大きな魔力と最強の治癒魔法と魔法道具を貰った主人公がいく先々で最強の魔物や勇者に各種王族、民達に美味しい料理や治癒しては溺愛されていくお話し。
主人公は男の子です!女子に間違えられるのがテンプレですけど結構男前な性格かな?
結構テンプレです。
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる