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勇者

神との再会

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帰国の途に着く私達はライアッド軍と足並みを揃えていた。

通る街に不要な兵糧を分け与え、治療が必要な者は可能な限り助ける事にした。

私達が行軍して来た街道には大小幾つもの街や村があったのだが、その何れも焼かれたり毒等で生活が困難な状態になっている。

毒素は泉の水で浄化出来たが、破壊された建物は直してやる事は出来ない。
こればかりは彼ら自身で何とかしてもらうしかないのだ。

私達の救助活動に対して感謝する者は多かったが、憎しみの目で私達を睨む者も少なからずいた。

彼らにとって私達は侵略者なのだ。街を焼き、毒を撒いたのが例え自国の者であったとしてもだ。

芽依達には辛い思いをさせてしまったと思う。それでも愛娘は文句一つ言わずに手伝ってくれた。労いの言葉を掛けてはいるが、色々思うところがあるだろう。
暫くは休暇を取ってゆっくり話し合いたい。

セロ達はフランシスが気を遣ってくれたのか、最後まで前線で戦う事はなかった。補給物資の選別と運搬、負傷者の手当など後方の任務に従事していた。
彼らには戦争に参加して欲しくはなかったのでフランシスには感謝している。

☆★☆★☆★☆★

一ヶ月後、私達は王都に帰ってきた。
国民は総出で迎えてくれる。戦に勝った事は既に知らされていた。

私達も国王ラムドらと共に大通りを凱旋する。私だけではなくカクカミ達も一緒だ。

今回の戦の最大の功労者と持ち上げられ、私の呼び名も『幻獣使いの魔女』から『生命の泉の大精霊』に変わっていた。

現金なものだ。

論功行賞も行いたいとラムドから申し出があったが私達は軍属ではないし、そもそも国民ですらないので断る事にした。

城までの道をかなりの時間を掛けて移動し、その後は馬車に乗ってホテルへと移動。その際にカクカミ達には泉に帰ってもらった。

「私達も明日には泉に戻りましょうか。今回は長旅だったし、みんなには休養が必要よ」
「賛成!」
「それはスゴーく助かるよ。歩くよりはずっとマシだけど馬車に揺られていても身体が痛くて」

ホテルに向かう馬車の中、私の提案に真っ先に反応したのは芽依とミラだった。
二人とも泉に行けると聞いて本当に嬉しそうだ。セロとミラも口にはしないが嬉しそうにしていた。

この日はホテルに一泊。
夜、それは前触れなく起こった。

気が付いたら私は真っ白な空間に立っていた。

「やあやあハルさん元気だったかな?」

私の目の前に立っているのは歳が同じ位の女の子。長い金髪がサラサラと揺れていてとても美しい。

「あなた、私を転生させてくれた神様よね?」
「そうだよー。姿を見せるのは初めてだね」

そう言ってニコニコと笑顔を向けてくる。

「あなたには幾つか聞きたい事があります」
「うんうん。わかってるよ。まず何で他の転生者に命を狙われているかだよね?」
「いいえ、まずあなたの名前を教えて」

私が言い返すとキョトンとした顔で固まっていた。

「あーそうだったね。ボクの名前はアルシファーナ。この世界イルメイアの主神だよ」
「フリーディアではなく?」
「フリーディアは神の中での愛称みたいなものなんだよ。ハルさんなら好きな方で呼んでくれて構わないよ」

私ならという事は、他の人相手にはアルシファーナと呼ばせるつもりだろう。ならば私もアルシファーナと呼称しよう。

「まずはハルさん、世界を再生してくれてありがとう」

そう言ってニコリと笑うアルシファーナ。

「あなたが力を使えばもっと早く直せたのではないの?」
「そんな事ないよ。主神と言ったって何でも出来るわけじゃないからね。それでさっきの話だけど、他の転生者を嗾けているのはボクじゃないんだよ」
「他の神様が何故私を?」
「世界を管理しているのはボク以外にも何柱か居て、あまり仲が良くないんだよ」

つまり神同士のいざこざに巻き込まれているということかしら?

「それだけじゃないよ。ハルさんが世界をコントロールしているのが気に入らないらしいんだ」

話さなくても考えている事は伝わるのね。

「それはあなたも同じ考えなの?」
「ボクはハルさんを応援しているよ。むしろ新しく転生者を連れて来るのに反対なんだ。だからハルさんには他の転生者に負けないで欲しいんだよ」

アルシファーナは私の味方なのね。

「ゴメン、もう時間みたいだ。最後に、転生者は今後も《栄養吸収》で倒すと良いよ。相手の能力を奪えるから!」
「それってどういう──」

聞き返そうとしたが声は届かなかった。
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