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勇者

近代兵器対超常生物

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あの高出力魔法の直撃を受けてしまったら跡形も残っていないだろう。

『ハル様、例の馬車もどきが健在です。どうやったのか、位置が変わっています』

オオトリの報告を聞いて私も《遠隔視野》で車を探すと、少し離れた丘の上にこちらを向いて停まっていた。

どうやってそこに移動したのかは分からないが、生きていたのなら都合が良い。
シュウ本人かを確認する為に接近する。

「そこにシュウという男は乗っていますか?」

カクカミの背の上から呼び掛ける。カナエが私の声を風の魔法で拡大してくれた。

「ああ、いるぜ」

車の屋根の一部が開いて男が姿を表す。
茶髪の少年、十七、八歳といったところか、私を真っ直ぐに睨みつけていた。

「あなたをこの世界から排除します」
「おいおい、説得も降伏勧告もなしにいきなり殺すのかよ?化け物の親玉は言う事が過激だねえ」
「人を人とも思わぬ所業を重ねるあなたと話す舌はありません。無益に殺してきた人々に懺悔しながら逝きなさい」
『はっ!人ってのはこの世界の原始人の事か?俺は神に選ばれてこのイルメイアに来たんだ。生かすも殺すも俺の自由だろ』

シュウは鼻で笑うと日本語で言い返してきた。

『この世界に住む者達の生命を軽んずるのは許さないわ。どれだけの時間を掛けてここまで繁栄したと思っているの?』
『やっぱりお前も転生者かよ!少し早くこの世界に来たからって何様のつもりだよ?神にでもなったつもりか?』

シュウは車の屋根を移動して銃座に着く。

『お前はこれが怖いらしいな!少し訓練すれば誰でも扱えて、簡単に人を殺せる。お前ら化け物もな!』

そう言うと銃口こちらに向けて引き金を引いた。

凄まじい連射音と共にこちらに弾丸が飛んでくる。
カクカミが風の魔法で障壁を作り守ってくれるが、弾丸は風の障壁を少しずつ侵食していき、弾頭が障壁を越えた所で爆発する。

『ハル様!』

カクカミが咄嗟に身体を旋回させて私達から銃弾を逸らしてくれた。しかしカクカミには無数の銃弾が突き刺さる。直ぐに泉の水を掛けて《硬質化》を付与する。

「どうよ?対魔法貫通弾の味は?」
『おのれ!』

マカミとメトがシュウを乗せた車に突撃する。しかしマカミとメトの爪は空を切る。車がその場から消えていた。

『遠方より飛翔体があります!何だあれは……?』

オオトリが警告してくる。《遠隔視野》で確認すると、巨大な筒状のものが炎の尾を引きながらこちらに向かって来る。数は四。

「トコヤミ、エレ、あれを迎撃して!中身は爆発物だと思うから注意するのよ!」
『御意』「分かりました!」

念の為両名にも《硬質化》を掛けておく。

私は地上を探す。あの車は何処に行った?

「お母さんあそこだよ!」

芽依が指した方を見ると車はかなりの勢いで走り出していた。逃げている訳ではない。こちらに向かって来ている。

カクカミの傷が癒えたので前進する。シュウは走る車の上から銃撃を繰り返して来る。私達は散開して銃撃を避け、猛然と走って来る車に攻撃を仕掛ける。

右からマカミが、左からメトが攻撃に行ったがまたしても姿が消えた。

凄まじい爆発音がして空を見ればトコヤミとエレがミサイルを撃破したところだった。

爆発したミサイルは白い煙を撒き散らしながらバラバラと地面に落ちて来る。

「あれは……何かおかしい。カナエ、地上にあれが来ないように風で吹き飛ばすんだ」
『はい!』

颯太とカナエが風の魔法で噴煙を吹き飛ばす。トコヤミとエレは無事だろうか?

エレはトコヤミに守られて無事な様だ。しかしトコヤミは全身の鱗が焼け焦げて痛々しい。

しかしトコヤミは止まらなかった。
次のミサイルへと向かい炎を吹きかけると二発目を爆発させた。

あれを後二回もやらなければならないが、今はトコヤミを信じるしかない。

またしても位置を変えてこちらに向かって来る車を私は睨みながら、あれを止める方法を考えていた。
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