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勇者

進軍

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私達は眷属達と共に進軍する。
今回参戦する眷属は颯太、カクカミ、メト、ヤト、カナエ、ギョクリュウ、トコヤミ、オオトリ、マカミと勢揃いだ。

私と芽依とマイはカクカミに乗り、颯太はカナエとギョクリュウに乗っている。

その前をメトとマカミが行き、空にはトコヤミ、オオトリ、竜化したエレが飛んでいる。ヤトは地中から敵を攻撃する予定だ。

ライアッド軍はおよそ八千。急ぎの出陣だったので防衛も考えると出せるのはそれが限度だったのだろう。

私達は小高い丘を越えて国境を見下ろす。

国境には川が流れており、川幅はおよそ百メートル。流れが早く深いので船を使わずに対岸に渡るには石橋を通らなければならない。

その石橋は古くからある頑強な橋で、対岸には石造りの砦があり、アドラス軍は砦と対岸に集結していた。数は三千程度だろうか。

砦の上部や対岸には弓兵が多く配置されているが、銃を装備した兵も十数人居る。

ギルバートはこの砦を落とす事が出来ずに苦労していた様だ。

ライアッドも長弓部隊を連れてきているので川に到達したら攻撃を始めるだろう。

その前に我々で落としてしまうつもりだが。

『ハル様、先陣は誰にご命令されますか?』

カクカミが私に聞いてくる。

「まずはあなたの力を見せてやりなさい。カクカミの攻撃後はトコヤミに任せます」
『畏まりました』
『御意』

カクカミは地面を数度踏みしめて嘶くと空から巨大な雷を砦に落とした。

凄まじい轟音と閃光。五百メートル以上離れているここまで衝撃が伝わってくる。

その一撃で砦は半分以上を焼失していた。

以前よりも随分と威力が上がっている。

『ソータ様が長年かけて魔素増やしてくれたお陰です』

カクカミはいつもと変わらぬ落ち着いた声で言ってくる。

『では行って参ります』

トコヤミが咆哮をあげて砦に目掛けて飛翔する。

カクカミの一撃で大混乱を起こしているアドラス軍はトコヤミの襲来で恐慌状態になり戦闘どころではない。

一部の兵は弓や魔法で応戦しているがトコヤミの速度には対応できず、空から火炎のブレスを吹き掛けられてなす術なくなき尽くされていく。

その様子を見たライアッド軍の兵からは歓声が上がる。

初戦は戦いにならなかった。しかしこれは恐らくアドラスの作戦の内だろう。

我々を国内に引き込んで殲滅する腹積りなのではないか?
シュウという男が何もせずにいる訳はないからだ。

トコヤミの攻撃で砦とその周辺の兵は全滅。橋は無事なのでライアッド軍にはそこを渡ってもらう。

私達はそのまま川を渡り周囲を警戒。こちら側はおよそ五キロは平原。その奥は森林地帯になっている。

《遠隔視野》で森の中を注意深く見ると、巨大な大砲が上向きに向いている。それが十基は配備されていた。
更には森と平原の境には横向きの大砲が二十基程隠れている。

あれだけのものをいつの間に作ったのか?いや、今まで出して来なかっただけなのだろう。という事は……

森に伏せているアドラス軍は全員が銃で武装していた。正確な数は分からないが二千以上はいる。

全員に敵の配置を伝える。

『ハル様。ここは私がやりましょう』

地面からヤトが顔だけを出して言ってくる。

「そうね。あなたの攻撃に併せてメトとマカミを突入させます。トコヤミは空で敵の攻撃を引きつけて。敵の大砲は先日の銃の比ではない威力です。くれぐれも気を付けて」
『お任せください!』
『大暴れしてやります!』

メトとマカミは張り切っている。

『油断せず全力であたります』

トコヤミは直に銃を受けているのでシュウの作った武器の脅威はよく分かっている。

まもなくしてヤトが地中から攻撃を開始。轟音と悲鳴が森に響く。
ほぼ同時にトコヤミが空を飛行して大砲の攻撃を引きつけて、その間にマカミとメトが森へと突撃。私達もその後に続いた。
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