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勇者
査問
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ラムドは銃を手に取り各部を詳しく見ていた。弾は込められていないので危険はない。
「こんなもので人を殺せるというのか」
「はい。体や頭に当たればまず助かりません」
芽依が撃たれた時は本当に焦った。
人はあんなにも脆いのだ。気を付けなければ。
「それよりも強力なものというのがどうも想像できないのだけど」
エリオットは銃の威力に懐疑的だ。
「それなら僕が実演してみせようか」
フランシスはまだ弾丸を持っていた。
「いや、やめておいた方が良い。これを持っている事を他の者に知られるとお前の立場が危うくなる」
フランシスがこれを銃を持っていた事を知られると、アドラス国に内通していた者として吊し上げを食う事になる。
彼が内通していたのは事実なのだが、ラムドがそれを許したのなら私からは何も言うまい。
「これはハル殿が持っていて貰いたい」
「分かりました」
「使うかは別にして、僕が持っている弾を渡しておきますね」
フランシスが取り出したのは十二発の弾丸。
「ハルさんは使い方を知っていますからね」
「ええ。引き金を引くだけだもの」
「違いますよ。魔力の操作が出来なければ撃つことは出来ません」
私は引き金を引くだけで撃てるものだと思っていたのだが、自然と魔力を流していたのかも知れない。
弾丸と銃を受け取って指輪の中にしまっておく。これは恐らくずっと使わないだろう。
「数日後にギルバートが帰還する。その後に騎士団壊滅の査問を行うが、ハル殿達には証人として参加していただく」
ラムドは今回の討伐で大きな被害を出した件について、現場の者には責任は無いと判断した様だ。
確かにあの様な化け物に襲われたら成す術はないだろう。私の進言についても一冒険者の言葉と取るなら話を聞く必要はなかっただろうし、名誉を重んずる騎士達が私の言った通り後退して敵を誘き出すとも考えられない。
それでも指揮官にはある程度の罰が与えられる事になるそうだ。
「証人である以上は虚偽の証言は許されぬ。ありのままを話していただきたい。あとは我々で話を纏めるので安心されよ」
「分かりました」
この日の打ち合わせはこれで終わり。
あとは当日まで待つ事になる。
その間に芽依の防具の新調をしておく。
胸に穴が空いているし小さくて使えない。下取りをしても二束三文にしかならなかった。
新しい鎧はミスリル製の軽鎧だ。
身体も大きくなって筋力も増えたから金属製の鎧でも着こなす事が出来た。
その他外套に肌着類も買い揃えた。
芽依は背中に長剣を背負い腰の両側には小剣、背中側には短剣を装備している。
「えへへ、カッコいいでしょ!」
「はいです!メイおねーちゃんカッコいい!」
マイに言われて上機嫌の芽依。
そんなに沢山持ち歩いて重くないのかしら。
「古い服は売らないの?」
「ええ。私の予備の服にするつもりよ」
子供の姿の芽依の体型は私と殆ど同じだったから私が着る事にした。
買い物で一日は使ったが、残りの日は何もせずにゆっくりと過ごす事にした。
☆★☆★☆★☆★
そして査問の日。
私達は朝から城にある議場にやって来ていた。
石造りの円形状のホールには机と椅子が取り囲む様に並べられている。
その中央部分に私達は立たされていた。
私の隣には第一騎士団長のクーゲルがいる。
周りの席には他騎士団の団長や兵団長、その上役になる将軍と言われる者も複数人座っている。
その他には魔導兵団長に内政関係の重鎮、勿論ラムドに三人の王子もいる。
この査問はクーゲルに対してのもので、私達はただの証人だ。
あの盛りであった事を淡々と説明していくだけ。
事前にラムドから話があった様にクーゲルに対しての罰は重いものにはならない様だ。予め示し合わせていたのだろう、淡々と話が進んでいく。
これならすぐに終わりそうだ。
「こんなもので人を殺せるというのか」
「はい。体や頭に当たればまず助かりません」
芽依が撃たれた時は本当に焦った。
人はあんなにも脆いのだ。気を付けなければ。
「それよりも強力なものというのがどうも想像できないのだけど」
エリオットは銃の威力に懐疑的だ。
「それなら僕が実演してみせようか」
フランシスはまだ弾丸を持っていた。
「いや、やめておいた方が良い。これを持っている事を他の者に知られるとお前の立場が危うくなる」
フランシスがこれを銃を持っていた事を知られると、アドラス国に内通していた者として吊し上げを食う事になる。
彼が内通していたのは事実なのだが、ラムドがそれを許したのなら私からは何も言うまい。
「これはハル殿が持っていて貰いたい」
「分かりました」
「使うかは別にして、僕が持っている弾を渡しておきますね」
フランシスが取り出したのは十二発の弾丸。
「ハルさんは使い方を知っていますからね」
「ええ。引き金を引くだけだもの」
「違いますよ。魔力の操作が出来なければ撃つことは出来ません」
私は引き金を引くだけで撃てるものだと思っていたのだが、自然と魔力を流していたのかも知れない。
弾丸と銃を受け取って指輪の中にしまっておく。これは恐らくずっと使わないだろう。
「数日後にギルバートが帰還する。その後に騎士団壊滅の査問を行うが、ハル殿達には証人として参加していただく」
ラムドは今回の討伐で大きな被害を出した件について、現場の者には責任は無いと判断した様だ。
確かにあの様な化け物に襲われたら成す術はないだろう。私の進言についても一冒険者の言葉と取るなら話を聞く必要はなかっただろうし、名誉を重んずる騎士達が私の言った通り後退して敵を誘き出すとも考えられない。
それでも指揮官にはある程度の罰が与えられる事になるそうだ。
「証人である以上は虚偽の証言は許されぬ。ありのままを話していただきたい。あとは我々で話を纏めるので安心されよ」
「分かりました」
この日の打ち合わせはこれで終わり。
あとは当日まで待つ事になる。
その間に芽依の防具の新調をしておく。
胸に穴が空いているし小さくて使えない。下取りをしても二束三文にしかならなかった。
新しい鎧はミスリル製の軽鎧だ。
身体も大きくなって筋力も増えたから金属製の鎧でも着こなす事が出来た。
その他外套に肌着類も買い揃えた。
芽依は背中に長剣を背負い腰の両側には小剣、背中側には短剣を装備している。
「えへへ、カッコいいでしょ!」
「はいです!メイおねーちゃんカッコいい!」
マイに言われて上機嫌の芽依。
そんなに沢山持ち歩いて重くないのかしら。
「古い服は売らないの?」
「ええ。私の予備の服にするつもりよ」
子供の姿の芽依の体型は私と殆ど同じだったから私が着る事にした。
買い物で一日は使ったが、残りの日は何もせずにゆっくりと過ごす事にした。
☆★☆★☆★☆★
そして査問の日。
私達は朝から城にある議場にやって来ていた。
石造りの円形状のホールには机と椅子が取り囲む様に並べられている。
その中央部分に私達は立たされていた。
私の隣には第一騎士団長のクーゲルがいる。
周りの席には他騎士団の団長や兵団長、その上役になる将軍と言われる者も複数人座っている。
その他には魔導兵団長に内政関係の重鎮、勿論ラムドに三人の王子もいる。
この査問はクーゲルに対してのもので、私達はただの証人だ。
あの盛りであった事を淡々と説明していくだけ。
事前にラムドから話があった様にクーゲルに対しての罰は重いものにはならない様だ。予め示し合わせていたのだろう、淡々と話が進んでいく。
これならすぐに終わりそうだ。
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