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勇者
巨人討伐の準備
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二日後の朝、私達はフランシスが用意してくれた馬車に乗って移動を開始する。
馬車は十台にもなる。
尚、食料等は全てフランシスが出してくれていた。
一般募集の四十人の報酬は前金五万、後金五万の計十万エルズ。私達の半額だがそれでも破格だ。
私達はフランシス達と同じ馬車に乗る事になっている。
道中はフランシスが私達に話しかけ続け、他の者とはほとんど会話をしなかった。
そして四日目の夕方。
私達は巨人の現れた村アロースに到着した。
村の住人は私達の到着を心待ちにしていた様で大歓迎だった。
まあ私達というよりはフランシスをだろうが。
この村に宿屋は無いが、民家のいくつかは冒険者用に提供してくれるそうで野営をせずに済んで皆安堵していた。
「皆さん長旅ご苦労様でした。明日から早速討伐に向かいます。早朝から準備を始めますので宜しくお願いします。今晩は少しでも疲れをとっていただける様に食事も良い物を用意しましたので英気を養ってください」
フランシスが冒険者達に話すと皆喜びの声をあげていた。
その晩の食事には肉のたっぷり入ったスープにフカフカのパンが出た。
移動中の食事は干し肉に堅く焼いたパンと水が基本だが、今回は村に到着した事もあり温かい食べ物が用意されていた。
何よりも冒険者達が喜んだのは酒が出た事だった。
酒を飲めない者の為に果実水も用意されていた。
皆が食事を楽しんでいるとフランシスがやって来て話し始めた。
「皆さん聞いてください。これはまだ伝えられていない事ですが、今年の大討伐は失敗しました」
騒つく冒険者達。
「参加していた騎士もかなりの数が犠牲になりました。国内の戦力は大幅に減少、国内での魔物や盗賊の討伐に力を割く事が出来なくなりつつあります。この様な時だからこそ、冒険者の皆さんのお力が必要です」
フランシスは一度言葉を切る。
「殿下、俺達ならいつでも手を貸すぜ!」
「魔物退治は冒険者の方が向いてるからね。任せておいてよ!」
冒険者達から声が上がる。それを聞いて深々と頭を下げるフランシス。
「ありがとうございます。皆さんがいてくださればこの国は大丈夫です。皆で魔物を駆逐して国内の平和を取り戻しましょう!」
フランシスの呼び掛けに拳を突き上げて応える冒険者達。
皆の士気は高く、フランシスへの信頼も厚い。
それだけなら良い事なのだが。
翌日、早朝から討伐の準備を始める。
作戦は簡単だ。フランシス達のパーティで巨人を誘き出して一体ずつ撃破していくというもの。私達のパーティはフランシス達のサポートをする事になっている。
他の冒険者達は、フランシス達に目標となる巨人以外のものを近付けない為の護衛となる。
「全員で戦わないんだね」
「前のレッサードラゴンの時もほとんど殿下のパーティだけで討伐したんだぜ」
芽依と近くにいた冒険者が話をしている。
ではこれだけの冒険者を連れて来たのは何故か?討伐ではない何処かに目的があるのだろう。
私としてはその目的がどうあれ、住民の安全が確保されるのなら何でも良いと考えている。
彼は強力な魔物を討伐して回っている。
それだけで良いではないか。
「殿下、一度で良いので私に巨人と会話する機会をいただけませんか?」
「ハルさんは巨人と話せるのですか?」
「恐らくは」
「分かりました。しかし相手は人間を殺していますので気をつけてください」
「殺された人間は村の人ですか?」
「行商人が襲われたそうです」
巨人は人を襲っているのか。
明確に敵対の意思があるのなら仕方がないが、致し方無く交戦した可能性もある。まずは話を聞いてみるとしよう。
ここから巨人がいるであろう森へは徒歩で半日程だ。
村より南東には付け根の括れた半島があり、巨人はその半島を住処にしているそうだが、ここアロースはそこから三日と離れていないそうだ。
今まで巨人が半島から出てくる事はなかったと村人は言っていたらしい。
何かあったのだろうか?
馬車は十台にもなる。
尚、食料等は全てフランシスが出してくれていた。
一般募集の四十人の報酬は前金五万、後金五万の計十万エルズ。私達の半額だがそれでも破格だ。
私達はフランシス達と同じ馬車に乗る事になっている。
道中はフランシスが私達に話しかけ続け、他の者とはほとんど会話をしなかった。
そして四日目の夕方。
私達は巨人の現れた村アロースに到着した。
村の住人は私達の到着を心待ちにしていた様で大歓迎だった。
まあ私達というよりはフランシスをだろうが。
この村に宿屋は無いが、民家のいくつかは冒険者用に提供してくれるそうで野営をせずに済んで皆安堵していた。
「皆さん長旅ご苦労様でした。明日から早速討伐に向かいます。早朝から準備を始めますので宜しくお願いします。今晩は少しでも疲れをとっていただける様に食事も良い物を用意しましたので英気を養ってください」
フランシスが冒険者達に話すと皆喜びの声をあげていた。
その晩の食事には肉のたっぷり入ったスープにフカフカのパンが出た。
移動中の食事は干し肉に堅く焼いたパンと水が基本だが、今回は村に到着した事もあり温かい食べ物が用意されていた。
何よりも冒険者達が喜んだのは酒が出た事だった。
酒を飲めない者の為に果実水も用意されていた。
皆が食事を楽しんでいるとフランシスがやって来て話し始めた。
「皆さん聞いてください。これはまだ伝えられていない事ですが、今年の大討伐は失敗しました」
騒つく冒険者達。
「参加していた騎士もかなりの数が犠牲になりました。国内の戦力は大幅に減少、国内での魔物や盗賊の討伐に力を割く事が出来なくなりつつあります。この様な時だからこそ、冒険者の皆さんのお力が必要です」
フランシスは一度言葉を切る。
「殿下、俺達ならいつでも手を貸すぜ!」
「魔物退治は冒険者の方が向いてるからね。任せておいてよ!」
冒険者達から声が上がる。それを聞いて深々と頭を下げるフランシス。
「ありがとうございます。皆さんがいてくださればこの国は大丈夫です。皆で魔物を駆逐して国内の平和を取り戻しましょう!」
フランシスの呼び掛けに拳を突き上げて応える冒険者達。
皆の士気は高く、フランシスへの信頼も厚い。
それだけなら良い事なのだが。
翌日、早朝から討伐の準備を始める。
作戦は簡単だ。フランシス達のパーティで巨人を誘き出して一体ずつ撃破していくというもの。私達のパーティはフランシス達のサポートをする事になっている。
他の冒険者達は、フランシス達に目標となる巨人以外のものを近付けない為の護衛となる。
「全員で戦わないんだね」
「前のレッサードラゴンの時もほとんど殿下のパーティだけで討伐したんだぜ」
芽依と近くにいた冒険者が話をしている。
ではこれだけの冒険者を連れて来たのは何故か?討伐ではない何処かに目的があるのだろう。
私としてはその目的がどうあれ、住民の安全が確保されるのなら何でも良いと考えている。
彼は強力な魔物を討伐して回っている。
それだけで良いではないか。
「殿下、一度で良いので私に巨人と会話する機会をいただけませんか?」
「ハルさんは巨人と話せるのですか?」
「恐らくは」
「分かりました。しかし相手は人間を殺していますので気をつけてください」
「殺された人間は村の人ですか?」
「行商人が襲われたそうです」
巨人は人を襲っているのか。
明確に敵対の意思があるのなら仕方がないが、致し方無く交戦した可能性もある。まずは話を聞いてみるとしよう。
ここから巨人がいるであろう森へは徒歩で半日程だ。
村より南東には付け根の括れた半島があり、巨人はその半島を住処にしているそうだが、ここアロースはそこから三日と離れていないそうだ。
今まで巨人が半島から出てくる事はなかったと村人は言っていたらしい。
何かあったのだろうか?
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