254 / 453
勇者
国王
しおりを挟む
次の日、食事を終えた頃に迎えの馬車が来た。
私だけかと思ったが全員乗れる様に大型の馬車を寄越してきた。
それに乗って王城へ向かう。
謁見の間で話すのかと思ったが、通されたのは国王の私室だった。
執務用の立派な机と皮張りの椅子がある二十畳ほどの部屋に、急遽運び込まれたのだろうテーブルと机が用意されていた。そこにいたのは国王のみ。
「こんな所ですまないな」
「いえ」
「早速討伐の話を聞かせてもらおうか」
席に座って報告を始める。
国王が聞きたいのは騎士団の壊滅の経緯だろう。
しかし私達の赴任した村での出来事を先に説明する事にした。
「それはすまない事をした」
「私達に謝っても仕方のない事です」
私は騎士隊長を殺害した事を正直に話す。
「仕方のない事であるな」
「副隊長は魔物に襲われて行方不明になったと報告するでしょう」
「分かった。この場で聞いた事は他言せぬ様にする。しかしながら騎士団の規律の乱れは由々しき事であるな。是正をする様に働きかけよう」
騎士隊長殺害についての咎められない様だ。
前置きが長くなってしまったが、本題について説明を始めた。
それを静かに聞いている国王。
あの地域は毎年大規模な討伐を行なっていたそうだが、これは派閥争いの延長という性質があるようだ。
今回出陣していた三つの騎士団は全て派閥の違う貴族に指揮されていたらしく、互いに競う様に戦果を求めていた。
異常事態があったとしても騎士団同士での連携は為されずに各自で対応する事にしていた様だ。
つまらない意地の張り合いが大惨事を招く原因の一つになってしまったようだ。
報告を聞き終えて国王は暫く目を閉じて何も言わなかった。
「…ハル殿から見て、騎士団の中にその魔物と繋がっていた者はいなかったか?」
「私達が接触した者の中にその様な者はいなかったと思います」
国王は国内に裏切り者がいないかを危惧している様だ。
「分かった。感謝する」
「こちらからも質問させていただいても宜しいでしょうか?」
「何かな?」
私が聞きたかったのは騎士団と国の内情について。
この国の騎士団は六つあり、それを二つに分けて北部に派遣しているらしい。
北部は長年敵対しているアドラスという国があり、こちらへ騎士団の半数を当てていて現在第四~第六の騎士団はそちらに出陣している。
北部への出兵は交代で行われており、毎年交互に大討伐を行う様にしていたそうだ。
第一~第三騎士団が壊滅した事で北部派兵に影響が出てしまうそうだ。
第一王子のギルバートも対アドラスの為に出陣しているが、今後の派遣に影響が出ると聞いて急遽戻ってくる事になったそうだ。
「フランシス殿下もご帰還されていますので、三人とも揃うのですね」
「うむ。各派閥の貴族達は此度の大討伐の失敗の責任のなすりつけ合いをする事になるだろうな」
国王は頭が痛いだろう。
「こちらからも聞いても良いだろうか?」
「私にですか?」
「うむ」
少し間を置いてから話始める国王。
「精霊は人間との間に子を成せるのか?」
固まる一同。
「そ、それってお母さんとエリオット殿下の事…?」
「うむ」
「うむ」じゃないわ。
子供の前で何て事を聞くのよ……
「陛下、まず始めに言っておく事があります」
「なんだ?」
「私のこの身体は仮初のものです」
「つまり本当の姿は別のものなのか?」
「いえ、元々この姿に変わりはありませんが、私は特殊な力を使ってこの身体を得ています。例えばこの身体の首を刎ねたとしても、私は泉に戻るだけで死にません」
「つまり、その身体で子を成す事は出来ないという事か。ならば本当の身体でならば可能なのか?」
もし可能だと言ったらどうするのだろうか?問題はそこではないではないでしょう。
「知りません」
ひょっとして揶揄われているのかしら?
私だけかと思ったが全員乗れる様に大型の馬車を寄越してきた。
それに乗って王城へ向かう。
謁見の間で話すのかと思ったが、通されたのは国王の私室だった。
執務用の立派な机と皮張りの椅子がある二十畳ほどの部屋に、急遽運び込まれたのだろうテーブルと机が用意されていた。そこにいたのは国王のみ。
「こんな所ですまないな」
「いえ」
「早速討伐の話を聞かせてもらおうか」
席に座って報告を始める。
国王が聞きたいのは騎士団の壊滅の経緯だろう。
しかし私達の赴任した村での出来事を先に説明する事にした。
「それはすまない事をした」
「私達に謝っても仕方のない事です」
私は騎士隊長を殺害した事を正直に話す。
「仕方のない事であるな」
「副隊長は魔物に襲われて行方不明になったと報告するでしょう」
「分かった。この場で聞いた事は他言せぬ様にする。しかしながら騎士団の規律の乱れは由々しき事であるな。是正をする様に働きかけよう」
騎士隊長殺害についての咎められない様だ。
前置きが長くなってしまったが、本題について説明を始めた。
それを静かに聞いている国王。
あの地域は毎年大規模な討伐を行なっていたそうだが、これは派閥争いの延長という性質があるようだ。
今回出陣していた三つの騎士団は全て派閥の違う貴族に指揮されていたらしく、互いに競う様に戦果を求めていた。
異常事態があったとしても騎士団同士での連携は為されずに各自で対応する事にしていた様だ。
つまらない意地の張り合いが大惨事を招く原因の一つになってしまったようだ。
報告を聞き終えて国王は暫く目を閉じて何も言わなかった。
「…ハル殿から見て、騎士団の中にその魔物と繋がっていた者はいなかったか?」
「私達が接触した者の中にその様な者はいなかったと思います」
国王は国内に裏切り者がいないかを危惧している様だ。
「分かった。感謝する」
「こちらからも質問させていただいても宜しいでしょうか?」
「何かな?」
私が聞きたかったのは騎士団と国の内情について。
この国の騎士団は六つあり、それを二つに分けて北部に派遣しているらしい。
北部は長年敵対しているアドラスという国があり、こちらへ騎士団の半数を当てていて現在第四~第六の騎士団はそちらに出陣している。
北部への出兵は交代で行われており、毎年交互に大討伐を行う様にしていたそうだ。
第一~第三騎士団が壊滅した事で北部派兵に影響が出てしまうそうだ。
第一王子のギルバートも対アドラスの為に出陣しているが、今後の派遣に影響が出ると聞いて急遽戻ってくる事になったそうだ。
「フランシス殿下もご帰還されていますので、三人とも揃うのですね」
「うむ。各派閥の貴族達は此度の大討伐の失敗の責任のなすりつけ合いをする事になるだろうな」
国王は頭が痛いだろう。
「こちらからも聞いても良いだろうか?」
「私にですか?」
「うむ」
少し間を置いてから話始める国王。
「精霊は人間との間に子を成せるのか?」
固まる一同。
「そ、それってお母さんとエリオット殿下の事…?」
「うむ」
「うむ」じゃないわ。
子供の前で何て事を聞くのよ……
「陛下、まず始めに言っておく事があります」
「なんだ?」
「私のこの身体は仮初のものです」
「つまり本当の姿は別のものなのか?」
「いえ、元々この姿に変わりはありませんが、私は特殊な力を使ってこの身体を得ています。例えばこの身体の首を刎ねたとしても、私は泉に戻るだけで死にません」
「つまり、その身体で子を成す事は出来ないという事か。ならば本当の身体でならば可能なのか?」
もし可能だと言ったらどうするのだろうか?問題はそこではないではないでしょう。
「知りません」
ひょっとして揶揄われているのかしら?
0
お気に入りに追加
434
あなたにおすすめの小説
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
“絶対悪”の暗黒龍
alunam
ファンタジー
暗黒龍に転生した俺、今日も女勇者とキャッキャウフフ(?)した帰りにオークにからまれた幼女と出会う。
幼女と最強ドラゴンの異世界交流に趣味全開の要素をプラスして書いていきます。
似たような主人公の似たような短編書きました
こちらもよろしくお願いします
オールカンストキャラシート作ったら、そのキャラが現実の俺になりました!~ダイスの女神と俺のデタラメTRPG~
http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/402051674/
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる