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勇者
エリオット王子の話
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馬車の中でロイガー男爵と話をする。
「皆さんがお越しになったのは大討伐の際の報告の為だと伺いました」
「はい。討伐に来ていた騎士団が壊滅した経緯の説明を求められると言われたので来ました」
流石に情報が早い。
「それはご苦労様です」
「いえ、私の方からもお伺いしてもよろしいですか?」
「何でしょう?」
「エリオット殿下の事ですが、私の事を何と言われているのでしょう?」
「ああ、その事ですか」
マリオネルはニコリと笑って話してくれた。
何でも『勝手気ままに振る舞う自分を本気で叱ってくれた初めての女性』と言っていたらしい。
それで求婚までするかしら?
母親の愛情に飢えているだけなのでは?
芽依は隣でニヤニヤしているし。
「どうお聞きしたかは存じません、私はエリオット殿下を何十回と打ちました。手加減なしの全力でです」
「ええ、聞いております。あなたは自分の手が腫れ上がる程強く何度も打った事、そして自身の手を最後まで治さずに殿下の傷を癒した事も」
「それは……」
確かにそうだがあれはセロを刺された事で怒り、それどころではなかっただけだ。別にエリオットの痛みに付き合った訳ではない。
そもそも私のこの《実体化》で得た身体の痛覚はかなり鈍いのだ。あの時手に痛みを感じていた事すら覚えていない。
「なるほど」
「よく見ていますね」
リンとミラは感心した様に頷いている。
「殿下は洞察力が鋭く、勝手気ままに振る舞っていた時から自身の持っている財を商売という形で増やしておりました。昨日お渡ししたお詫びの品も殿下の個人資産から支払われているのですよ」
国の品を勝手に持ち出したのかと思っていたけど、そういう所はしっかりしているのね。
それに意外な才能を持っているのね。
「殿下はあなたのお陰で更正する事が出来ました。以前のあの振る舞いのせいで陛下からも見放されていたのですが、最近はとても関係が良くなっているのです」
親子が仲良くする事は良い事だわ。
だけど一つ気になる事がある。
「男爵様、この国には幾つ派閥がありますか?」
「そうですね……大きく分けるなら四つでしょう」
まず国王派。これは文字通り国王に付き従う貴族達。
長男ギルバート派。彼らは文武両道で政治にも長ける長男こそ次期国王だと言っている貴族達。
次男エリオット派。勝手な振る舞いをする彼であっても国王にしてしまえば操りやすいと思って近付いている貴族は多いそうだ。本人はそれを全て見抜いていて上手く扱っているらしい。
最後に三男フランシス派。三男は魔法に長け、戦が得意な者らしい。仲間を集めて冒険者の様な事をしているそうだが、その戦果は凄まじく今の世界情勢を鑑みるに彼の様な英雄を国王に立てるべきだと主張する貴族も多いそうだ。
「国王陛下はこの三人の中から次期国王を決めるおつもりですが、エリオット殿下はあの振る舞いが原因であとのお二人に随分と遅れをとっていました」
ここに来て私というカードを手に入れて株が急上昇したという事ね。
「誤解しないでいただきたいのですが、殿下は王位が欲しくてハルさんに近付いた訳ではありません。心から愛しておられるのです」
「そうですか……」
それは困ったわ。一層の事政治の道具として利用するつもりの方がマシだった気がする。
「愛って凄いのね」
「ロマンチックですね」
「そうだね!」
リンとミラは目を輝かせていた。
芽依まで同意しているし。
「一つお聞きしたいのですが、男爵様は何故エリオット殿下をそこまで……?」
「亡きお母上の遺言なのです」
長男ギルバートと三男フランシスの母親とエリオットの母親は違うらしく、エリオットを産んで直ぐに亡くなってしまったそうだ。エリオットは母親の愛情を受けずに育ってきた様だ。
なるほど我儘に育つわけだ。
「皆さんがお越しになったのは大討伐の際の報告の為だと伺いました」
「はい。討伐に来ていた騎士団が壊滅した経緯の説明を求められると言われたので来ました」
流石に情報が早い。
「それはご苦労様です」
「いえ、私の方からもお伺いしてもよろしいですか?」
「何でしょう?」
「エリオット殿下の事ですが、私の事を何と言われているのでしょう?」
「ああ、その事ですか」
マリオネルはニコリと笑って話してくれた。
何でも『勝手気ままに振る舞う自分を本気で叱ってくれた初めての女性』と言っていたらしい。
それで求婚までするかしら?
母親の愛情に飢えているだけなのでは?
芽依は隣でニヤニヤしているし。
「どうお聞きしたかは存じません、私はエリオット殿下を何十回と打ちました。手加減なしの全力でです」
「ええ、聞いております。あなたは自分の手が腫れ上がる程強く何度も打った事、そして自身の手を最後まで治さずに殿下の傷を癒した事も」
「それは……」
確かにそうだがあれはセロを刺された事で怒り、それどころではなかっただけだ。別にエリオットの痛みに付き合った訳ではない。
そもそも私のこの《実体化》で得た身体の痛覚はかなり鈍いのだ。あの時手に痛みを感じていた事すら覚えていない。
「なるほど」
「よく見ていますね」
リンとミラは感心した様に頷いている。
「殿下は洞察力が鋭く、勝手気ままに振る舞っていた時から自身の持っている財を商売という形で増やしておりました。昨日お渡ししたお詫びの品も殿下の個人資産から支払われているのですよ」
国の品を勝手に持ち出したのかと思っていたけど、そういう所はしっかりしているのね。
それに意外な才能を持っているのね。
「殿下はあなたのお陰で更正する事が出来ました。以前のあの振る舞いのせいで陛下からも見放されていたのですが、最近はとても関係が良くなっているのです」
親子が仲良くする事は良い事だわ。
だけど一つ気になる事がある。
「男爵様、この国には幾つ派閥がありますか?」
「そうですね……大きく分けるなら四つでしょう」
まず国王派。これは文字通り国王に付き従う貴族達。
長男ギルバート派。彼らは文武両道で政治にも長ける長男こそ次期国王だと言っている貴族達。
次男エリオット派。勝手な振る舞いをする彼であっても国王にしてしまえば操りやすいと思って近付いている貴族は多いそうだ。本人はそれを全て見抜いていて上手く扱っているらしい。
最後に三男フランシス派。三男は魔法に長け、戦が得意な者らしい。仲間を集めて冒険者の様な事をしているそうだが、その戦果は凄まじく今の世界情勢を鑑みるに彼の様な英雄を国王に立てるべきだと主張する貴族も多いそうだ。
「国王陛下はこの三人の中から次期国王を決めるおつもりですが、エリオット殿下はあの振る舞いが原因であとのお二人に随分と遅れをとっていました」
ここに来て私というカードを手に入れて株が急上昇したという事ね。
「誤解しないでいただきたいのですが、殿下は王位が欲しくてハルさんに近付いた訳ではありません。心から愛しておられるのです」
「そうですか……」
それは困ったわ。一層の事政治の道具として利用するつもりの方がマシだった気がする。
「愛って凄いのね」
「ロマンチックですね」
「そうだね!」
リンとミラは目を輝かせていた。
芽依まで同意しているし。
「一つお聞きしたいのですが、男爵様は何故エリオット殿下をそこまで……?」
「亡きお母上の遺言なのです」
長男ギルバートと三男フランシスの母親とエリオットの母親は違うらしく、エリオットを産んで直ぐに亡くなってしまったそうだ。エリオットは母親の愛情を受けずに育ってきた様だ。
なるほど我儘に育つわけだ。
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