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勇者
力試し
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ブランが手にした武器は木製ではなかった。
「俺達の力試しって事ですか。それでやるんですか?」
「怪我が怖くて冒険者が出来るか。お前らは自分の武器を使え」
そう言って素振りを始めるブラン。
「一人ずつですか?」
「それだと魔法使いの嬢ちゃん達が可哀想だろ。全員一度にかかって来い」
セロが聞くと肩に金棒を担いでニヤリと笑う。
「やめておいた方がいいですよ。あなたがどれだけ強くてもそれだと戦いにならないわ」
「成る程。確かに泉の精霊がいたんじゃ戦いにならねえか」
前回来た時に私の事を見たのね。
「じゃあお嬢ちゃんは見ていてくれ。それ以外はまとめてかかって来い!」
確かに私が指示を出さなければマイとエレを充分に戦わせる事が出来ないかも知れない。しかし自力の差があるのはセロ達三人だけだ。
私は芽依一人でもこの男に勝つ事が出来るかも知れないと思っているのだが。
「分かりました。私は万一の為の救護員をやりましょう。みんな頑張って」
「うん!任せておいてよ!」
「私達の実力を見せちゃいますよ!」
「はいです!」
芽依、エレ、マイはやる気満々だ。
セロ達も武器を抜いて準備を始める。
「よし、こっちはいつでもいいぜ」
「はい!お願いします!」
元気よく返事をしてセロは真正面から斬り込んでいくがそれを金棒の一振りで軽々と弾き飛ばす。
「なんだ?その程度か?」
小馬鹿にしたように言うブラン。
セロと入れ替わる様にエレが大剣を大上段に構えて斬り込んでいく。
ブランはそれを金棒を両手に持ち直し横にして受け止めた。
エレの重たい攻撃を受け止めるなんて凄い腕力だわ。
動きを止めたブランの背後には芽依が回り込んでいた。
それをチラリと見るブラン。
「攻撃が見え見えだな!」
ブランはエレの襟首を掴むと斬り込んできた芽依に向かって投げつける。
エレを受け止めて転がる芽依。
「今なら撃てるわ!」
「ええ!」
リンがミラに声を掛けるとミラは矢を三本素早く発射する。ブランはそれを難なく金棒で叩き落とした。
そこに放たれたのはマイの魔法。
光の槍を生成して投げつけられたが流石に防ぐ事ができないらしくギリギリで身を翻して躱していた。
「おお、危ねえ危ねえ。流石にそいつは食らう訳には行かねえな」
余裕のブラン。
良くないわね。
連携がバラバラで攻撃が直線的過ぎる。せめて一度体勢を立て直して一斉攻撃に切り替えるべきよ。
指示を出そうかと思ったけど敢えて声は掛けずに見届ける事にした。
エレが芽依を助け起こして構え直す。
セロは今度は慎重に間合いを詰めている。
今度はブランからセロに攻撃に出た。金棒を水平に構えて突きを繰り出す。
セロはそれを盾で左側に受け流す。
勢いが殺しきれずに体勢を崩したセロの首に左腕巻きつけてぶら下げると振り回して、後ろから攻撃に来ていた芽依とエレを牽制する。
「魔法が撃てないです……」
「セロが離れないと援護のしようがありません」
「私も前に出るよ」
マイとミラは攻撃が出来ず様子を見るだけ。リンは痺れを切らして前進した。
セロは首に巻きついた丸太の様な腕を外そうともがいているけどビクともしない。
ブランのデタラメな動きに全員が翻弄されている。
しかし当のブランは視線をしきりに動かして周囲の状況を冷静に確認しながら立ち回っているのが分かる。
つまりあの動きは計算尽くでやっているのだ。
連携を取れなくするためにタイミングを外させたり、虚を衝いて行動をして阻害している。上手い立ち回りだ。
しかしセロを盾にしたまま立ち回るのには限界があるだろう。芽依は隙を窺いながら弧を描く様に動き始めているし、エレはセロを捕まえて動きを止めようとしている。そこにリンがやってくれば対処に苦慮するはずだが……セロの様子がおかしい。
「ブランさん、セロさんが落ちてます。すぐに放して!」
「お?しまった……やり過ぎちまったか……」
セロをその場に寝かせるブラン。
私が駆け寄って泉の水を掛けると咳き込んだ。どうやら無事の様だ。
「俺達の力試しって事ですか。それでやるんですか?」
「怪我が怖くて冒険者が出来るか。お前らは自分の武器を使え」
そう言って素振りを始めるブラン。
「一人ずつですか?」
「それだと魔法使いの嬢ちゃん達が可哀想だろ。全員一度にかかって来い」
セロが聞くと肩に金棒を担いでニヤリと笑う。
「やめておいた方がいいですよ。あなたがどれだけ強くてもそれだと戦いにならないわ」
「成る程。確かに泉の精霊がいたんじゃ戦いにならねえか」
前回来た時に私の事を見たのね。
「じゃあお嬢ちゃんは見ていてくれ。それ以外はまとめてかかって来い!」
確かに私が指示を出さなければマイとエレを充分に戦わせる事が出来ないかも知れない。しかし自力の差があるのはセロ達三人だけだ。
私は芽依一人でもこの男に勝つ事が出来るかも知れないと思っているのだが。
「分かりました。私は万一の為の救護員をやりましょう。みんな頑張って」
「うん!任せておいてよ!」
「私達の実力を見せちゃいますよ!」
「はいです!」
芽依、エレ、マイはやる気満々だ。
セロ達も武器を抜いて準備を始める。
「よし、こっちはいつでもいいぜ」
「はい!お願いします!」
元気よく返事をしてセロは真正面から斬り込んでいくがそれを金棒の一振りで軽々と弾き飛ばす。
「なんだ?その程度か?」
小馬鹿にしたように言うブラン。
セロと入れ替わる様にエレが大剣を大上段に構えて斬り込んでいく。
ブランはそれを金棒を両手に持ち直し横にして受け止めた。
エレの重たい攻撃を受け止めるなんて凄い腕力だわ。
動きを止めたブランの背後には芽依が回り込んでいた。
それをチラリと見るブラン。
「攻撃が見え見えだな!」
ブランはエレの襟首を掴むと斬り込んできた芽依に向かって投げつける。
エレを受け止めて転がる芽依。
「今なら撃てるわ!」
「ええ!」
リンがミラに声を掛けるとミラは矢を三本素早く発射する。ブランはそれを難なく金棒で叩き落とした。
そこに放たれたのはマイの魔法。
光の槍を生成して投げつけられたが流石に防ぐ事ができないらしくギリギリで身を翻して躱していた。
「おお、危ねえ危ねえ。流石にそいつは食らう訳には行かねえな」
余裕のブラン。
良くないわね。
連携がバラバラで攻撃が直線的過ぎる。せめて一度体勢を立て直して一斉攻撃に切り替えるべきよ。
指示を出そうかと思ったけど敢えて声は掛けずに見届ける事にした。
エレが芽依を助け起こして構え直す。
セロは今度は慎重に間合いを詰めている。
今度はブランからセロに攻撃に出た。金棒を水平に構えて突きを繰り出す。
セロはそれを盾で左側に受け流す。
勢いが殺しきれずに体勢を崩したセロの首に左腕巻きつけてぶら下げると振り回して、後ろから攻撃に来ていた芽依とエレを牽制する。
「魔法が撃てないです……」
「セロが離れないと援護のしようがありません」
「私も前に出るよ」
マイとミラは攻撃が出来ず様子を見るだけ。リンは痺れを切らして前進した。
セロは首に巻きついた丸太の様な腕を外そうともがいているけどビクともしない。
ブランのデタラメな動きに全員が翻弄されている。
しかし当のブランは視線をしきりに動かして周囲の状況を冷静に確認しながら立ち回っているのが分かる。
つまりあの動きは計算尽くでやっているのだ。
連携を取れなくするためにタイミングを外させたり、虚を衝いて行動をして阻害している。上手い立ち回りだ。
しかしセロを盾にしたまま立ち回るのには限界があるだろう。芽依は隙を窺いながら弧を描く様に動き始めているし、エレはセロを捕まえて動きを止めようとしている。そこにリンがやってくれば対処に苦慮するはずだが……セロの様子がおかしい。
「ブランさん、セロさんが落ちてます。すぐに放して!」
「お?しまった……やり過ぎちまったか……」
セロをその場に寝かせるブラン。
私が駆け寄って泉の水を掛けると咳き込んだ。どうやら無事の様だ。
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