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勇者
魔物
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ゼンの足の再生が終わるまでここで防御に徹する。
泉の水で触手を攻撃する事も考えたが、私が無理して攻撃に出なくても手数は足りている様だ。
トコヤミが前に出て狼に体当たりを加える。
触手を突き刺していたのが仇になり避ける事が出来ずに吹き飛ばされる狼。
二転三転と転がって起き上がる。
かなり距離が離れているので森に逃げ込むかと思ったが、こちらに向かって突進してきた。
狙いは私達……いや、私か。
『やらせんぞ!!』
トコヤミがブレスを吐く。
光線の様に真っ直ぐに飛んでいく炎はここからでも熱を感じる程の熱さだった。
狼の左前脚に命中して脚を半分消しとばした。
勢いがついていた事で前のめりに倒れる狼。
そこにマイの光線魔法が命中、首元を焼いた。
たたみ掛ける様にセロ、エレ、ギル、バルが攻撃に出る。
狼は動きを止めているが、触手の方は狼の腹部から分離して地面に落ちた。
黒い毛並みに隠れる様に黒く硬い表皮に覆われた触手の本体は亀の甲羅の様な丸みを帯びていて周囲に生えた触手を巧みに操って動き始める。中々動きが早い。
「触手の魔物を集中攻撃してください!」
セロ達は触手の魔物を取り囲む様に回り込んで逃げ道を塞ぐ。
触手の魔物は動きを止めてクルクルと回り様子を伺っていた。
『まさか俺を追い詰めるとはなぁ』
くぐもった声が聞こえてくる。
驚いた。まさか喋るとは思っていなかった。
丸い甲羅の様な身体をゆっくりと起こすと、裏側のほとんどは口だった。
口は閉じる様には出来ておらず、周囲にはビッシリとギザギザの牙がついていて、それで宿主になるものの身体に食らい付いてきせいするのだろう。
目玉上側のかなり離れた所に二つあり、瞼は無くギョロギョロと動いていた。
「うわぁ……気持ち悪っ」
芽依は見た目が苦手みたいね。
ゼンが完全に回復したので私達も包囲に加わった。
声が届く距離まで来たので聞いてみる。
「その姿で知性があるとは思わなかったわ。あなたは何者です?」
『俺はモールドーテ。この美しい姿を見て知性がないと思うとは、ニンゲンというのは愚かだな』
普通に会話ができるのね。
「私は泉の精のハルよ。長く生きているけどあなたの様な生き物は見た事がなかったの」
『長く生きている?お前の様な小さな者がか。どれ程長生きかは知らんが己の価値観でしか物事を測れぬのは無知蒙昧の証だな』
……知性のかけらも無い容姿の癖に口は良く回るわね。
「それで、あなたはどこからきたの?」
『俺は竜の王の命でこの地にやって来た』
「それはルドガイアの王の事かしら?」
『そうだ』
モールドーテはこの地にやって来る騎士団の壊滅を狙っていたそうだ。
『俺は単体では大した力は無いが、一度ゾンビを作って仕舞えば全て俺の忠実な僕になるのだ』
その力で騎士団を壊滅させるのが目的という事は、間違いなくこの国はルドガイアの標的になっている。
戦力を削る為にモールドーテ一体だけをここに配置したのだとしたらこちらは陽動で、本命が何処かに現れるかも知れない。
「ルドガイアはこの国を攻め落とすつもりなのね。あなたの知っている事を話しなさい」
『残念だが俺は何も知らないぞ。だが俺を見逃せばお前達は殺されない様に進言してやろう』
ここに来て自分が助かる為の交渉か。中々図太いわね。
……いや、違うわね。
モールドーテの無数に生えている触手の下側の四本が地面に突き刺さっている。
「全員足元に気を付けて!触手が来るわ!」
言うとほぼ同時に四本の触手が襲ったのは芽依だった。
芽依は武器を抜いていないが足元から飛び出して来る触手をスレスレで躱していた。
「メイさん!」
セロが物凄い勢いで走って行き触手を斬り裂いてくれた。
『ちっ……お前の目の動きからその娘が大切なのは分かっていたから狙ったのだがな』
そこまで洞察力があるのに残念だったわね。
芽依の運動能力を見誤っているわ。
この不気味な魔物には私の水が効く。
掌に《過剰分泌》させた泉の水を溜めて槍状に形を変えて撃ち出した。
泉の水で触手を攻撃する事も考えたが、私が無理して攻撃に出なくても手数は足りている様だ。
トコヤミが前に出て狼に体当たりを加える。
触手を突き刺していたのが仇になり避ける事が出来ずに吹き飛ばされる狼。
二転三転と転がって起き上がる。
かなり距離が離れているので森に逃げ込むかと思ったが、こちらに向かって突進してきた。
狙いは私達……いや、私か。
『やらせんぞ!!』
トコヤミがブレスを吐く。
光線の様に真っ直ぐに飛んでいく炎はここからでも熱を感じる程の熱さだった。
狼の左前脚に命中して脚を半分消しとばした。
勢いがついていた事で前のめりに倒れる狼。
そこにマイの光線魔法が命中、首元を焼いた。
たたみ掛ける様にセロ、エレ、ギル、バルが攻撃に出る。
狼は動きを止めているが、触手の方は狼の腹部から分離して地面に落ちた。
黒い毛並みに隠れる様に黒く硬い表皮に覆われた触手の本体は亀の甲羅の様な丸みを帯びていて周囲に生えた触手を巧みに操って動き始める。中々動きが早い。
「触手の魔物を集中攻撃してください!」
セロ達は触手の魔物を取り囲む様に回り込んで逃げ道を塞ぐ。
触手の魔物は動きを止めてクルクルと回り様子を伺っていた。
『まさか俺を追い詰めるとはなぁ』
くぐもった声が聞こえてくる。
驚いた。まさか喋るとは思っていなかった。
丸い甲羅の様な身体をゆっくりと起こすと、裏側のほとんどは口だった。
口は閉じる様には出来ておらず、周囲にはビッシリとギザギザの牙がついていて、それで宿主になるものの身体に食らい付いてきせいするのだろう。
目玉上側のかなり離れた所に二つあり、瞼は無くギョロギョロと動いていた。
「うわぁ……気持ち悪っ」
芽依は見た目が苦手みたいね。
ゼンが完全に回復したので私達も包囲に加わった。
声が届く距離まで来たので聞いてみる。
「その姿で知性があるとは思わなかったわ。あなたは何者です?」
『俺はモールドーテ。この美しい姿を見て知性がないと思うとは、ニンゲンというのは愚かだな』
普通に会話ができるのね。
「私は泉の精のハルよ。長く生きているけどあなたの様な生き物は見た事がなかったの」
『長く生きている?お前の様な小さな者がか。どれ程長生きかは知らんが己の価値観でしか物事を測れぬのは無知蒙昧の証だな』
……知性のかけらも無い容姿の癖に口は良く回るわね。
「それで、あなたはどこからきたの?」
『俺は竜の王の命でこの地にやって来た』
「それはルドガイアの王の事かしら?」
『そうだ』
モールドーテはこの地にやって来る騎士団の壊滅を狙っていたそうだ。
『俺は単体では大した力は無いが、一度ゾンビを作って仕舞えば全て俺の忠実な僕になるのだ』
その力で騎士団を壊滅させるのが目的という事は、間違いなくこの国はルドガイアの標的になっている。
戦力を削る為にモールドーテ一体だけをここに配置したのだとしたらこちらは陽動で、本命が何処かに現れるかも知れない。
「ルドガイアはこの国を攻め落とすつもりなのね。あなたの知っている事を話しなさい」
『残念だが俺は何も知らないぞ。だが俺を見逃せばお前達は殺されない様に進言してやろう』
ここに来て自分が助かる為の交渉か。中々図太いわね。
……いや、違うわね。
モールドーテの無数に生えている触手の下側の四本が地面に突き刺さっている。
「全員足元に気を付けて!触手が来るわ!」
言うとほぼ同時に四本の触手が襲ったのは芽依だった。
芽依は武器を抜いていないが足元から飛び出して来る触手をスレスレで躱していた。
「メイさん!」
セロが物凄い勢いで走って行き触手を斬り裂いてくれた。
『ちっ……お前の目の動きからその娘が大切なのは分かっていたから狙ったのだがな』
そこまで洞察力があるのに残念だったわね。
芽依の運動能力を見誤っているわ。
この不気味な魔物には私の水が効く。
掌に《過剰分泌》させた泉の水を溜めて槍状に形を変えて撃ち出した。
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