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勇者
森林の村
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夕方、村に到着すると、大勢が出迎えてくれた。
「ようこそお越しくださいました。私は村長のアードと申します」
そう言ってきたのは白髪混じりの男性。
顔の皺を見る限りかなりの高齢なのだろうけど、体格は良く背筋もまっすぐ伸びている。
「セイラン冒険者ギルドから来ました。暫くお世話になります」
ジェイドが代表して挨拶している。
今回の依頼はギルド員が同行していない。一番経験のあるジェイドが冒険者のリーダーとして選ばれていた。
本人曰く「柄じゃない」そうだが、選ばれた以上はしっかりと役割を果たしている様だ。
「皆さんに提供できる家は村外れの二軒だけになります。大変心苦しいのですが、そちらをお使いいただきたい」
「見せていただいても?」
「ええ。ご案内します」
申し訳なさそうに言うアード。ジェイドはその様子を不審に思ったのか家を見せて欲しいと言い、案内してもらう事になった。
馬車を誘導しながら村外れに移動する。
村は西から東へと伸びる道と、南北に伸びる道が交差している所を中心に家々が立ち並び、村長の家は北側にある様だ。
それから気になったのは、北側の一角に騎士と思しき格好の者が見えた事。
こちら側に騎士は来ないのではなかったのではないだろうか?
その質問は後だ。今は私達が拠点に使わせてもらう家を見せてもらおう。
「こちらです……」
「これは……」
一つは土壁でできた建物だが、壁が至る所が崩れており中が見える。
もう一つは完全に木造の家。こちらはなんと屋根がなかった。
「これって家なの?廃屋じゃなくて?」
「申し訳ありません!この様な建物しか用意できなくて……」
芽依が聞くとアードは平謝りだった。
何やら事情がありそうだ。
「理由を聞かせて頂く事はできますか?」
「それは……」
私が聞くと口籠もるアード。
「力になれるかも知れません。話してください」
「分かりました……実は──」
アードが言うには、この家を冒険者に提供する様に言ってきたのは駐留している騎士らしい。
「騎士はこちら側には来ないのではなかったのですか?」
「何やら事情がある様で、一個分隊相当の十二名がやって来て私の家とその周りの数件を接収されました。その際に孫娘を世話係に寄越すように言われてしまい、孫娘に手を出さない代わりにそれ以外の事は全て指示通りにすると約束してしまいました」
また横暴な事を。
「お聞きしたいのですが、私達の事を知っている感じでしたか?泉の精霊がどうとか話してはいませんでした?」
「いえ、そんな話は聞いておりません。到着した時から機嫌が悪くて、話を聞きに近付いた私の息子が斬られてしまいました」
どうやら私に恨みがあってこの村に来ているわけではなさそうだ。
大方王都内での権力争いの関係でここに配置された騎士とその配下だろう。
「息子さんはご無事ですか?」
「はい。何とか一命は取り留めましたが深傷で……」
「案内してください。治療します」
アードの息子の居る家に行こう。
「俺達はこの家を使える様に整備してみるぜ。セロ達はハルについて行け」
「分かりました」
南側には小さな診療所もあるが、騎士がやって来て息子に危害を加えるかも知れないと思って更に南の民家に匿っているそうだ。
私達が行くとアードの息子はベッドに寝かされ上半身に包帯が巻かれていたが、縫合が甘いのか血が滲んでいた。意識は無く苦しそうに呻いている。
ベッドの横には同年位の女性がいて、吹き出す汗を拭き取っていた。
「これが息子のリックと、その妻のエルゼです」
エルゼは私達を見て小さくお辞儀をする。
「治療します」
私は泉の水を生成してリックの身体に振り掛ける。
苦しそうに呻いていたリックは穏やかな表情になり、ゆっくりと目を開いた。
「ここは……?」
「あなた……!良かった……本当に……」
さて、騎士の方はどうしようか。
「ようこそお越しくださいました。私は村長のアードと申します」
そう言ってきたのは白髪混じりの男性。
顔の皺を見る限りかなりの高齢なのだろうけど、体格は良く背筋もまっすぐ伸びている。
「セイラン冒険者ギルドから来ました。暫くお世話になります」
ジェイドが代表して挨拶している。
今回の依頼はギルド員が同行していない。一番経験のあるジェイドが冒険者のリーダーとして選ばれていた。
本人曰く「柄じゃない」そうだが、選ばれた以上はしっかりと役割を果たしている様だ。
「皆さんに提供できる家は村外れの二軒だけになります。大変心苦しいのですが、そちらをお使いいただきたい」
「見せていただいても?」
「ええ。ご案内します」
申し訳なさそうに言うアード。ジェイドはその様子を不審に思ったのか家を見せて欲しいと言い、案内してもらう事になった。
馬車を誘導しながら村外れに移動する。
村は西から東へと伸びる道と、南北に伸びる道が交差している所を中心に家々が立ち並び、村長の家は北側にある様だ。
それから気になったのは、北側の一角に騎士と思しき格好の者が見えた事。
こちら側に騎士は来ないのではなかったのではないだろうか?
その質問は後だ。今は私達が拠点に使わせてもらう家を見せてもらおう。
「こちらです……」
「これは……」
一つは土壁でできた建物だが、壁が至る所が崩れており中が見える。
もう一つは完全に木造の家。こちらはなんと屋根がなかった。
「これって家なの?廃屋じゃなくて?」
「申し訳ありません!この様な建物しか用意できなくて……」
芽依が聞くとアードは平謝りだった。
何やら事情がありそうだ。
「理由を聞かせて頂く事はできますか?」
「それは……」
私が聞くと口籠もるアード。
「力になれるかも知れません。話してください」
「分かりました……実は──」
アードが言うには、この家を冒険者に提供する様に言ってきたのは駐留している騎士らしい。
「騎士はこちら側には来ないのではなかったのですか?」
「何やら事情がある様で、一個分隊相当の十二名がやって来て私の家とその周りの数件を接収されました。その際に孫娘を世話係に寄越すように言われてしまい、孫娘に手を出さない代わりにそれ以外の事は全て指示通りにすると約束してしまいました」
また横暴な事を。
「お聞きしたいのですが、私達の事を知っている感じでしたか?泉の精霊がどうとか話してはいませんでした?」
「いえ、そんな話は聞いておりません。到着した時から機嫌が悪くて、話を聞きに近付いた私の息子が斬られてしまいました」
どうやら私に恨みがあってこの村に来ているわけではなさそうだ。
大方王都内での権力争いの関係でここに配置された騎士とその配下だろう。
「息子さんはご無事ですか?」
「はい。何とか一命は取り留めましたが深傷で……」
「案内してください。治療します」
アードの息子の居る家に行こう。
「俺達はこの家を使える様に整備してみるぜ。セロ達はハルについて行け」
「分かりました」
南側には小さな診療所もあるが、騎士がやって来て息子に危害を加えるかも知れないと思って更に南の民家に匿っているそうだ。
私達が行くとアードの息子はベッドに寝かされ上半身に包帯が巻かれていたが、縫合が甘いのか血が滲んでいた。意識は無く苦しそうに呻いている。
ベッドの横には同年位の女性がいて、吹き出す汗を拭き取っていた。
「これが息子のリックと、その妻のエルゼです」
エルゼは私達を見て小さくお辞儀をする。
「治療します」
私は泉の水を生成してリックの身体に振り掛ける。
苦しそうに呻いていたリックは穏やかな表情になり、ゆっくりと目を開いた。
「ここは……?」
「あなた……!良かった……本当に……」
さて、騎士の方はどうしようか。
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