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勇者
一件落着
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ハーツには全てを話しておく。
街で攫われそうになった事、伯爵の屋敷での取引、ギルドでの制裁と王都へ行って国王に苦情を言った事。
最後は国王とエリオットも反省してくれたも話すと、暫く固まっていたが「そうか……無事で良かった」とだけ返して来た。
理解が追いついていないみたいね。
ハーツは私が服従の首輪をされているのを見て本気で怒ってくれていた。
あの時周りの兵士達が止めなければ本当に斬りかかっていたかも知れない。
もう心配を掛けたくないし、そこまで思ってくれているのなら誠意を持って全てを話さなければならないと思った。
「ハル、あまり無理をするんじゃない。困った事があったら何時でも俺の所に来い。いいな?」
「はい。そうさせてもらいます」
彼は何故こんなにも私達に優しいのだろうか?聞いてみたくなったが、皆の前で聞くのも野暮だろう。いずれ機会があれば聞かせてもらおう。
ハーツへの説明も済んだので駐屯所を後にする。
帰り道、街を歩いていると角からジェイドが現れる。
そういえばギルドホールには居なかったわね。
「会いたいかと思って探して連れてきたぜ」
続いて出てきたのはドルフだ。両手を拘束されている。
「わ、私が間違っていた。どうか許してほしい……」
私を見るなり謝罪してくるドルフ。
バルドルに言われた事を真に受けている様だ。
「エリオット殿下に取り入って伯爵を追い落とそうとしていたのは事実ですか?」
「事実だったら私を殺すか?」
「殺しませんよ。それはあなたと伯爵の事でしょう?私には関係ありません」
思わぬ答えに驚き固まるドルフ。
「それから私はあなたに制裁を加えるつもりもありません。私はただ抗議したかっただけです。自分の部下が殺されるかもしれないのに何もしなかったのが許せなかったのですよ」
「……そうか。どうやらバルドルや他の者に一杯食わされたのだな」
ガクリと項垂れるドルフ。口元は笑っている様に見えた。
「冒険者ギルドに戻りますか?」
「いや、他の者の信用も地に落ちた私に居場所はない。リフィナ達に任せて私は退くとしよう」
ジェイドが拘束を解く。
「私が言えた事ではないが、リフィナ達の事を頼む」
そう言うと私達に頭を下げてから去って行くドルフ。
「何か余計な事をしちまったかな?」
「いいえ、聞きたかった事も聞けたし良かったと思います。ありがとうございましたジェイドさん」
彼が連れて来てくれなければドルフと話す機会はもう無かっただろう。
ドルフにとっても私に怯えて暮らさなくてよくなるのだから互いに良い結果になった筈だ。
時刻は夕暮れ。一人去って行くドルフの影が長く伸びて寂しそうに見えた。
「ハル様、お腹が空きました」
クゥーと可愛くお腹を鳴らしながらエレが言う。芽依達は昼食を取らずに私の帰りを待っていたらしい。
「昨日は半端なところで食事会が終わっちまったからな。今から続きをやるか?」
「はい!いっぱい食べます!」
ジェイドの誘いにエレが即答する。
それを見て皆が笑う。
「今日もジェイドさんの奢りで良いんですか?」
「おう、いいぜ。好きなだけ食えよ」
「やったー!」
大喜びするエレ。ほどほどにしてあげなさいよ。
『白い蝙蝠亭』に戻り、ラティーシアとイシュリアに無事に解決した事を報告する。
「良かったです。私達も服従の首輪を安全に取り外す方法を探していたのです」
どうやら二人にも苦労を掛けてしまっていた様だ。
「私達二人が全力で魔力を一点に集めれば首輪をオーバーロード出来るだろうと話していたんです。外してもらえたのですか?」
「お母さん、自分で壊しちゃったんだよ」
「一人で……?あの首輪を?」
「ええ。元々大した物ではなかったし、少し魔力を注いだら壊れたのよ」
それを聞いてラティーシアは微笑み、イシュリアは唖然としていた。
街で攫われそうになった事、伯爵の屋敷での取引、ギルドでの制裁と王都へ行って国王に苦情を言った事。
最後は国王とエリオットも反省してくれたも話すと、暫く固まっていたが「そうか……無事で良かった」とだけ返して来た。
理解が追いついていないみたいね。
ハーツは私が服従の首輪をされているのを見て本気で怒ってくれていた。
あの時周りの兵士達が止めなければ本当に斬りかかっていたかも知れない。
もう心配を掛けたくないし、そこまで思ってくれているのなら誠意を持って全てを話さなければならないと思った。
「ハル、あまり無理をするんじゃない。困った事があったら何時でも俺の所に来い。いいな?」
「はい。そうさせてもらいます」
彼は何故こんなにも私達に優しいのだろうか?聞いてみたくなったが、皆の前で聞くのも野暮だろう。いずれ機会があれば聞かせてもらおう。
ハーツへの説明も済んだので駐屯所を後にする。
帰り道、街を歩いていると角からジェイドが現れる。
そういえばギルドホールには居なかったわね。
「会いたいかと思って探して連れてきたぜ」
続いて出てきたのはドルフだ。両手を拘束されている。
「わ、私が間違っていた。どうか許してほしい……」
私を見るなり謝罪してくるドルフ。
バルドルに言われた事を真に受けている様だ。
「エリオット殿下に取り入って伯爵を追い落とそうとしていたのは事実ですか?」
「事実だったら私を殺すか?」
「殺しませんよ。それはあなたと伯爵の事でしょう?私には関係ありません」
思わぬ答えに驚き固まるドルフ。
「それから私はあなたに制裁を加えるつもりもありません。私はただ抗議したかっただけです。自分の部下が殺されるかもしれないのに何もしなかったのが許せなかったのですよ」
「……そうか。どうやらバルドルや他の者に一杯食わされたのだな」
ガクリと項垂れるドルフ。口元は笑っている様に見えた。
「冒険者ギルドに戻りますか?」
「いや、他の者の信用も地に落ちた私に居場所はない。リフィナ達に任せて私は退くとしよう」
ジェイドが拘束を解く。
「私が言えた事ではないが、リフィナ達の事を頼む」
そう言うと私達に頭を下げてから去って行くドルフ。
「何か余計な事をしちまったかな?」
「いいえ、聞きたかった事も聞けたし良かったと思います。ありがとうございましたジェイドさん」
彼が連れて来てくれなければドルフと話す機会はもう無かっただろう。
ドルフにとっても私に怯えて暮らさなくてよくなるのだから互いに良い結果になった筈だ。
時刻は夕暮れ。一人去って行くドルフの影が長く伸びて寂しそうに見えた。
「ハル様、お腹が空きました」
クゥーと可愛くお腹を鳴らしながらエレが言う。芽依達は昼食を取らずに私の帰りを待っていたらしい。
「昨日は半端なところで食事会が終わっちまったからな。今から続きをやるか?」
「はい!いっぱい食べます!」
ジェイドの誘いにエレが即答する。
それを見て皆が笑う。
「今日もジェイドさんの奢りで良いんですか?」
「おう、いいぜ。好きなだけ食えよ」
「やったー!」
大喜びするエレ。ほどほどにしてあげなさいよ。
『白い蝙蝠亭』に戻り、ラティーシアとイシュリアに無事に解決した事を報告する。
「良かったです。私達も服従の首輪を安全に取り外す方法を探していたのです」
どうやら二人にも苦労を掛けてしまっていた様だ。
「私達二人が全力で魔力を一点に集めれば首輪をオーバーロード出来るだろうと話していたんです。外してもらえたのですか?」
「お母さん、自分で壊しちゃったんだよ」
「一人で……?あの首輪を?」
「ええ。元々大した物ではなかったし、少し魔力を注いだら壊れたのよ」
それを聞いてラティーシアは微笑み、イシュリアは唖然としていた。
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