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勇者
誘拐未遂
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周りには私の他に青い髪の者はいない。
間違いなく私に用があってこちらに来ている。
「何か御用ですか?」
「喜ぶがよい。お前は殿下に気に入られた」
……何を言っているのかしら?
「それで?」
「それでって……まあいい、馬車に乗りなさい」
「これから食事に行くのでお断りします」
そう言って背を向けると肩を掴まれた。
「無礼者め。殿下にお招き頂いたのだぞ。早く来るんだ!」
乱暴に引っ張られたので、肩を掴んでいる手を掴んで《栄養吸収》を使う。
「無礼者はどちらですか。さっきから殿下殿下って、どちらの殿下ですか?あなたの名前は?招くと仰いましたが名も知らぬ同士ですよ。拉致ではありませんか」
「ううっ……ぐっ……」
私に手を掴まれたまま跪きグッタリしている騎士の男。
少し吸い過ぎたかしら?もう少し強いと思っていたのだけど見た目だけの様ね。
「貴様ァッ!!」
「騎士に歯向かうとは!」
他の騎士達も馬から降りて駆け寄ってくる。
「お母さん!」
「剣を抜いては駄目よ」
「だけど……」
騎士達は私達を取り囲む様にして逃げ道を塞いだ。
セロはリンとミラを庇う様に立ち、二人は身を寄せ合いながら騎士を睨んでいた。
……エレが居ないわ。
エレはいつの間にか馬車を牽く馬の所に行って鼻を撫でながら何かを囁いている。
突然暴れ出す馬。御者が止めようと必死に手綱を引くも、馬車は勢いよく走り出してしまう。
「殿下の馬車が!」
「何という事だ!馬車をすぐに止めろ!!」
騎士達は慌てて馬車を追い掛けていく。
「今のうちに逃げましょう」
「うん!」
近くの路地に入って身を隠す。少ししたらエレもやって来た。
「エレありがとう。注意を引きつけてくれたのね」
「ええと、美味しそうな馬がいたので……竜に戻って食べたかったけど我慢しました」
どうやらエレは自分の食欲に負けそうになり馬の所に行っただけの様だ。
「私、動物と話が出来るんですよね。『美味しそう』って言ったら暴れ出して。すみませんでした」
「いいのよ。結果的に助かったわ、ありがとうエレ」
言われた馬の気持ちは如何程のものか。
しかしあのままだったら戦闘になっていたか、私だけあの馬車に乗せられていたか……とにかく助かったわ。
「みんな、ごめんなさい。変な事に巻き込んでしまったわ」
「あのまま素直に従っていたら何をされていたか分からないわ。あれで良かったと思うわよ」
リンは私の手を取って言う。その手は冷たく、震えていた。
怖い思いをさせてしまった。ミラは大丈夫だろうか?
ミラも頷いてくれていたが顔色は良くなかった。
騎士達が探しに戻ってきたら面倒なので、大通りから離れている『白い蝙蝠亭』に戻ってきて昼食をとる事にした。
ラティーシアに事情を説明するとすぐに食事を用意してくれたので助かった。
「服を見に行くのはどうしますか?」
食後のお茶をいただきながらミラが聞いてくる。
「今日はもうやめておかないか?まだ探されていたら厄介だ」
セロは買い物に付き合わされるのが嫌だから言っている訳ではない。
私としてもこれ以上皆に迷惑を掛けたくない。
「そうだね。服は明日でもいいしね」
リンも賛成だったので今日の予定は変更。出歩くのは危険かも知れないので、ここでのんびりと過ごす事になった。
「そんな輩がいたのですか……」
「大変でしたね。話を聞く限り相当横暴な者が乗っていたのでしょう」
食堂でのんびりさせて貰う事にしたら、ラティーシアとイシュリアも話に加わってきた。
「平民をそこら辺に生えてる草花くらいにしか思ってないんじゃない?キレイだから摘んでいこうみたいな」
芽依が怒りながら言う。
「名乗りもしないし、本人が出てくるわけでもない。碌な者ではないでしょうね」
もし芽依が連れていかれそうになっていたら、手加減してあげられる自信がないわ。
間違いなく私に用があってこちらに来ている。
「何か御用ですか?」
「喜ぶがよい。お前は殿下に気に入られた」
……何を言っているのかしら?
「それで?」
「それでって……まあいい、馬車に乗りなさい」
「これから食事に行くのでお断りします」
そう言って背を向けると肩を掴まれた。
「無礼者め。殿下にお招き頂いたのだぞ。早く来るんだ!」
乱暴に引っ張られたので、肩を掴んでいる手を掴んで《栄養吸収》を使う。
「無礼者はどちらですか。さっきから殿下殿下って、どちらの殿下ですか?あなたの名前は?招くと仰いましたが名も知らぬ同士ですよ。拉致ではありませんか」
「ううっ……ぐっ……」
私に手を掴まれたまま跪きグッタリしている騎士の男。
少し吸い過ぎたかしら?もう少し強いと思っていたのだけど見た目だけの様ね。
「貴様ァッ!!」
「騎士に歯向かうとは!」
他の騎士達も馬から降りて駆け寄ってくる。
「お母さん!」
「剣を抜いては駄目よ」
「だけど……」
騎士達は私達を取り囲む様にして逃げ道を塞いだ。
セロはリンとミラを庇う様に立ち、二人は身を寄せ合いながら騎士を睨んでいた。
……エレが居ないわ。
エレはいつの間にか馬車を牽く馬の所に行って鼻を撫でながら何かを囁いている。
突然暴れ出す馬。御者が止めようと必死に手綱を引くも、馬車は勢いよく走り出してしまう。
「殿下の馬車が!」
「何という事だ!馬車をすぐに止めろ!!」
騎士達は慌てて馬車を追い掛けていく。
「今のうちに逃げましょう」
「うん!」
近くの路地に入って身を隠す。少ししたらエレもやって来た。
「エレありがとう。注意を引きつけてくれたのね」
「ええと、美味しそうな馬がいたので……竜に戻って食べたかったけど我慢しました」
どうやらエレは自分の食欲に負けそうになり馬の所に行っただけの様だ。
「私、動物と話が出来るんですよね。『美味しそう』って言ったら暴れ出して。すみませんでした」
「いいのよ。結果的に助かったわ、ありがとうエレ」
言われた馬の気持ちは如何程のものか。
しかしあのままだったら戦闘になっていたか、私だけあの馬車に乗せられていたか……とにかく助かったわ。
「みんな、ごめんなさい。変な事に巻き込んでしまったわ」
「あのまま素直に従っていたら何をされていたか分からないわ。あれで良かったと思うわよ」
リンは私の手を取って言う。その手は冷たく、震えていた。
怖い思いをさせてしまった。ミラは大丈夫だろうか?
ミラも頷いてくれていたが顔色は良くなかった。
騎士達が探しに戻ってきたら面倒なので、大通りから離れている『白い蝙蝠亭』に戻ってきて昼食をとる事にした。
ラティーシアに事情を説明するとすぐに食事を用意してくれたので助かった。
「服を見に行くのはどうしますか?」
食後のお茶をいただきながらミラが聞いてくる。
「今日はもうやめておかないか?まだ探されていたら厄介だ」
セロは買い物に付き合わされるのが嫌だから言っている訳ではない。
私としてもこれ以上皆に迷惑を掛けたくない。
「そうだね。服は明日でもいいしね」
リンも賛成だったので今日の予定は変更。出歩くのは危険かも知れないので、ここでのんびりと過ごす事になった。
「そんな輩がいたのですか……」
「大変でしたね。話を聞く限り相当横暴な者が乗っていたのでしょう」
食堂でのんびりさせて貰う事にしたら、ラティーシアとイシュリアも話に加わってきた。
「平民をそこら辺に生えてる草花くらいにしか思ってないんじゃない?キレイだから摘んでいこうみたいな」
芽依が怒りながら言う。
「名乗りもしないし、本人が出てくるわけでもない。碌な者ではないでしょうね」
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