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勇者
視察
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ジェイドとは夜に『白い蝙蝠亭』で会う約束をして、私達はエレの武器を買いに鍛冶屋へと向かった。
「昨日の今日でまた来るなんて、武器が合わなかったのかい?」
「いえ、打撃武器だと倒せない敵がいたのでもう少し違う武器を探しに来ました」
ハンクの売ってくれた物が悪かった訳ではない。
打撃武器も良いけど斬る動作が出来た方がいいという結論に達したのでエレが使いやすい剣を探しにきただけなのだ。
「これがいいです!」
そう言って持って来たのはとんでもなく大きな剣だった。
「おいおい……そいつは流石に無理だろう」
柄の部分だけでも芽依のショートソードより長い。
形はかろうじて剣だが、刀身は太く肉厚で長さはエレの身長程はあった。
「エレさんそれ振れるの?」
芽依がエレの持つそれを手に取ろうとしたけど重過ぎて持ち上げる事すら出来ない。
「はい。良い重さだと思います。片手だとバランスを崩してしまいそうですけど」
そう言って片手で持ち上げて見せるエレ。
「驚いたな……ソイツは昔冗談で作った代物なんだが。まさか扱える人間がいるなんてな」
「昔って、大丈夫なのですか?」
「少し手入れをすれば普通に使えるぞ。ちょっと預かるからな」
エレから鉄柱の様な剣を受け取ると引きずって奥へと運んでいくハンク。
研いだり油を差したりと手際良く整えていく。
「ところでこれって幾らになりますか?」
「あー…材料費だけ貰えればいいから、八千でどうだ?」
「それでお願いします」
私が払っておく。
「ハル様、お金なら私が」
「いいのよ。あと念の為長剣も買っておきましょうね」
長剣もオーソドックスな物を購入。両方で一万エルズにしてくれた。
エレは大剣を受け取り、背中に背負うかたちで固定する。
「幅が広いから盾にもなりそうだね」
「地面に突き刺して身を隠せば防御壁になりそうです」
「あんなものを持って動けるなんてエレさん凄い」
セロ、ミラ、リンもエレの大剣を見ながらそれぞれ話していた。
この大剣を使えない場所では長剣かウォーハンマーを使ってもらう事になる。
どちらも私が指輪の中にしまっておいた。
買い物も済んだので鍛冶屋を後にして街の中を散策する。
「今日の訓練はお休みでいいですよね?」
「そうだね。昨日が大変だったからゆっくりしよう」
「賛成!」
「じゃあ服を見に行きませんか?」
「いいね!」
ミラの提案で服を見に行く事に。
セロが顔を引き攣らせているが、前回かなり待たされていたからそれを思い出したのだろう。
「折角報酬も出たんだし、今日はもう少しいいお店に行ってみましょうよ」
リンの案内で前回とは違う店に行く事になった。
大通りを歩いていると、通りの真ん中を豪華な馬車がゆっくりと走ってくる。
「伯爵かな?」
「いや……あれは、王家の紋章だ!」
セロが興奮気味に言う。馬車は煌びやかな装飾が施されていて、紋章の入った旗を掲げていた。前後は馬に乗った騎士が隊列を組んで護衛しており、先頭には騎馬戦車が二台いた。
「王家ってライアッド王家?」
「そうだよ。でも何でこんな所に?」
芽依が聞くとセロが答えてくれていた。
「内乱があったから視察に来たのでは?」
「それはあり得るね」
それが一番有力だろう。
私達は他の人達と同じように隅に寄って隊列を眺めていた。
私達のいる位置を通り過ぎた所で紋章をつけた馬車が突然止まる。
後ろについていた騎士達も驚いて止まった。
何事かと一人の騎士が馬から降りて馬車の扉の前で何かを話している。
「どうしたんだろ?」
「さあ?」
「私、お腹が空きました。何か食べに行きませんか?」
そういえばパオを食べただけで昼食をとっていない。セロ達もだった。
「そうだね。服を見る前にどこかでご飯を食べよう」
セロがそう言うと、私達は馬車の見学はやめて食堂を探しに行く。
「おい!そこの、青髪の少女!」
騎士が大声を出しながらこちらに走ってくる。
私に何か用かしら?
「昨日の今日でまた来るなんて、武器が合わなかったのかい?」
「いえ、打撃武器だと倒せない敵がいたのでもう少し違う武器を探しに来ました」
ハンクの売ってくれた物が悪かった訳ではない。
打撃武器も良いけど斬る動作が出来た方がいいという結論に達したのでエレが使いやすい剣を探しにきただけなのだ。
「これがいいです!」
そう言って持って来たのはとんでもなく大きな剣だった。
「おいおい……そいつは流石に無理だろう」
柄の部分だけでも芽依のショートソードより長い。
形はかろうじて剣だが、刀身は太く肉厚で長さはエレの身長程はあった。
「エレさんそれ振れるの?」
芽依がエレの持つそれを手に取ろうとしたけど重過ぎて持ち上げる事すら出来ない。
「はい。良い重さだと思います。片手だとバランスを崩してしまいそうですけど」
そう言って片手で持ち上げて見せるエレ。
「驚いたな……ソイツは昔冗談で作った代物なんだが。まさか扱える人間がいるなんてな」
「昔って、大丈夫なのですか?」
「少し手入れをすれば普通に使えるぞ。ちょっと預かるからな」
エレから鉄柱の様な剣を受け取ると引きずって奥へと運んでいくハンク。
研いだり油を差したりと手際良く整えていく。
「ところでこれって幾らになりますか?」
「あー…材料費だけ貰えればいいから、八千でどうだ?」
「それでお願いします」
私が払っておく。
「ハル様、お金なら私が」
「いいのよ。あと念の為長剣も買っておきましょうね」
長剣もオーソドックスな物を購入。両方で一万エルズにしてくれた。
エレは大剣を受け取り、背中に背負うかたちで固定する。
「幅が広いから盾にもなりそうだね」
「地面に突き刺して身を隠せば防御壁になりそうです」
「あんなものを持って動けるなんてエレさん凄い」
セロ、ミラ、リンもエレの大剣を見ながらそれぞれ話していた。
この大剣を使えない場所では長剣かウォーハンマーを使ってもらう事になる。
どちらも私が指輪の中にしまっておいた。
買い物も済んだので鍛冶屋を後にして街の中を散策する。
「今日の訓練はお休みでいいですよね?」
「そうだね。昨日が大変だったからゆっくりしよう」
「賛成!」
「じゃあ服を見に行きませんか?」
「いいね!」
ミラの提案で服を見に行く事に。
セロが顔を引き攣らせているが、前回かなり待たされていたからそれを思い出したのだろう。
「折角報酬も出たんだし、今日はもう少しいいお店に行ってみましょうよ」
リンの案内で前回とは違う店に行く事になった。
大通りを歩いていると、通りの真ん中を豪華な馬車がゆっくりと走ってくる。
「伯爵かな?」
「いや……あれは、王家の紋章だ!」
セロが興奮気味に言う。馬車は煌びやかな装飾が施されていて、紋章の入った旗を掲げていた。前後は馬に乗った騎士が隊列を組んで護衛しており、先頭には騎馬戦車が二台いた。
「王家ってライアッド王家?」
「そうだよ。でも何でこんな所に?」
芽依が聞くとセロが答えてくれていた。
「内乱があったから視察に来たのでは?」
「それはあり得るね」
それが一番有力だろう。
私達は他の人達と同じように隅に寄って隊列を眺めていた。
私達のいる位置を通り過ぎた所で紋章をつけた馬車が突然止まる。
後ろについていた騎士達も驚いて止まった。
何事かと一人の騎士が馬から降りて馬車の扉の前で何かを話している。
「どうしたんだろ?」
「さあ?」
「私、お腹が空きました。何か食べに行きませんか?」
そういえばパオを食べただけで昼食をとっていない。セロ達もだった。
「そうだね。服を見る前にどこかでご飯を食べよう」
セロがそう言うと、私達は馬車の見学はやめて食堂を探しに行く。
「おい!そこの、青髪の少女!」
騎士が大声を出しながらこちらに走ってくる。
私に何か用かしら?
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