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勇者
報酬
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時刻は既に昼になっていた。
パオの沢山入った包みを持ってギルドへと走る。
エレがお腹が空いて走れないと言うのでパオを二つ取り出して渡すと走りながらあっという間に食べ終えて元気になった。
走りながらって、よく食べられるわね。
行儀が悪いけど仕方ない、ギルドに急いで向かった。
ギルドホールの隅でテーブルを囲んで座っているセロ達とジェイドを見つけて駆け寄る。
「遅くなってごめんなさい」
「ゴメンなさい!」
「ハルさん達が遅刻なんて珍しいね」
「まあ、今日はオフみたいなものだから遅れても構わないけどな」
セロとジェイドは笑いながら許してくれた。
昨日の食堂で手伝っていて遅れた事を説明する。
「そうだったんだ。店のおじさんに気に入られてたもんね」
「休みの日なのに働くなんて、ハルさん達は本当に働き者なんですね」
リンとミラには感心していた。
「それで食堂の新商品をいただいたんです。良かったらお一つどうぞ」
四人にパオを一つずつ渡す。私と芽依も一つずつ。エレに二つ渡したら袋は空になった。
「こりゃあ美味いな……」
「初めて食べる味だ」
「フカフカで美味しいね」
「本当……」
四人にも好評だった。
そういえばこのパオ、中華まんはどこで作り方を教わったのだろうか?
ウルゼイドにいた数年で様々な料理を食べさせてもらったが、今までにこれは見た事がない。
食については食糧事情が豊かならば発展しやすいものだろう。
きっと何処かの誰かが思い付いたものだと信じたいところだ。
気が付くと全員が私を見ていた。
「どうしたの?」
「お母さんって美味しいものを食べてる時もあまり表情変わらないよね」
「そう?芽依みたいにもっとニコニコした方がいいかしら」
顔の筋肉が硬直してしまうかしらね。
「お母さんはそのままでいいと思うよ。お人形さんみたいでカワイイし」
娘に可愛いと言われるのも何だか照れてしまうわ。
「そうだね。凛々しい感じが素敵だと思うよ」
セロが言うとリンとミラが僅かに反応する。
「へ~セロってハルさんみたいな女の子が好みなんだ?」
「いや、そこまでは……いや……」
リンに言われて否定しようとして、今度は私に気を遣って口籠もるセロ。
そこはハッキリと否定しなくちゃダメよ。
「セロさんは優しいから私にも気を遣ってくれただけですよね?」
「あ、ええと……」
「セロよ、時には選ぶ事も大切だぞ。俺はそれで失敗した口だからな」
みんなでセロを揶揄いながらパオを食べて、受付に並ぶ事に。
「ジェイドさん、セロさん達も、昨日はご苦労様でした。報酬の件ですね。奥で話しましょう」
今日はバルドルがいなかったのでリフィナのところで対応してもらった。
奥の会議室に入って報酬のやり取りをする。
「今回は街の危機を救ってくれたという事で領主様からも特別報酬が出ています」
そう言いながら書面を読み上げていく。
逮捕報酬と同額は出るそうで、更にヴァンパイアという凶悪な魔物の討伐と、民間人の救助に対する追加報酬が出るらしい。
「合計で五十万エルズになります。分配についてはどうされますか?」
「均等に分けると七万千四百エルズと端数ね」
「…計算早いなハル。俺は今回助けてもらった側だから五万も貰えればいいぜ。あとはみんなで分けてくれよ」
「いえ、ジェイドさんが誘ってくれなければこの仕事は俺達に回ってこなかったので多めにもらってください」
セロがジェイドに言う。
「それなら私達六人は均等に七万エルズ、ジェイドさんは八万エルズでどうですか?」
「賛成」「はい」「それでいいよ!」
私が提案したらみんながそれを支持してくれた。
「本当にいいのかよ?そこまで言うなら貰っておくけど、このままじゃ俺の気が収まらないから今晩の飯は俺に奢らせてくれ」
「でもラティーシアさんがご飯を作ってると思いますよ」
「それならラティーシアの所で俺が奢るよ」
それでみんな納得したので、リフィナに頼んで報酬を分配してもらった。
パオの沢山入った包みを持ってギルドへと走る。
エレがお腹が空いて走れないと言うのでパオを二つ取り出して渡すと走りながらあっという間に食べ終えて元気になった。
走りながらって、よく食べられるわね。
行儀が悪いけど仕方ない、ギルドに急いで向かった。
ギルドホールの隅でテーブルを囲んで座っているセロ達とジェイドを見つけて駆け寄る。
「遅くなってごめんなさい」
「ゴメンなさい!」
「ハルさん達が遅刻なんて珍しいね」
「まあ、今日はオフみたいなものだから遅れても構わないけどな」
セロとジェイドは笑いながら許してくれた。
昨日の食堂で手伝っていて遅れた事を説明する。
「そうだったんだ。店のおじさんに気に入られてたもんね」
「休みの日なのに働くなんて、ハルさん達は本当に働き者なんですね」
リンとミラには感心していた。
「それで食堂の新商品をいただいたんです。良かったらお一つどうぞ」
四人にパオを一つずつ渡す。私と芽依も一つずつ。エレに二つ渡したら袋は空になった。
「こりゃあ美味いな……」
「初めて食べる味だ」
「フカフカで美味しいね」
「本当……」
四人にも好評だった。
そういえばこのパオ、中華まんはどこで作り方を教わったのだろうか?
ウルゼイドにいた数年で様々な料理を食べさせてもらったが、今までにこれは見た事がない。
食については食糧事情が豊かならば発展しやすいものだろう。
きっと何処かの誰かが思い付いたものだと信じたいところだ。
気が付くと全員が私を見ていた。
「どうしたの?」
「お母さんって美味しいものを食べてる時もあまり表情変わらないよね」
「そう?芽依みたいにもっとニコニコした方がいいかしら」
顔の筋肉が硬直してしまうかしらね。
「お母さんはそのままでいいと思うよ。お人形さんみたいでカワイイし」
娘に可愛いと言われるのも何だか照れてしまうわ。
「そうだね。凛々しい感じが素敵だと思うよ」
セロが言うとリンとミラが僅かに反応する。
「へ~セロってハルさんみたいな女の子が好みなんだ?」
「いや、そこまでは……いや……」
リンに言われて否定しようとして、今度は私に気を遣って口籠もるセロ。
そこはハッキリと否定しなくちゃダメよ。
「セロさんは優しいから私にも気を遣ってくれただけですよね?」
「あ、ええと……」
「セロよ、時には選ぶ事も大切だぞ。俺はそれで失敗した口だからな」
みんなでセロを揶揄いながらパオを食べて、受付に並ぶ事に。
「ジェイドさん、セロさん達も、昨日はご苦労様でした。報酬の件ですね。奥で話しましょう」
今日はバルドルがいなかったのでリフィナのところで対応してもらった。
奥の会議室に入って報酬のやり取りをする。
「今回は街の危機を救ってくれたという事で領主様からも特別報酬が出ています」
そう言いながら書面を読み上げていく。
逮捕報酬と同額は出るそうで、更にヴァンパイアという凶悪な魔物の討伐と、民間人の救助に対する追加報酬が出るらしい。
「合計で五十万エルズになります。分配についてはどうされますか?」
「均等に分けると七万千四百エルズと端数ね」
「…計算早いなハル。俺は今回助けてもらった側だから五万も貰えればいいぜ。あとはみんなで分けてくれよ」
「いえ、ジェイドさんが誘ってくれなければこの仕事は俺達に回ってこなかったので多めにもらってください」
セロがジェイドに言う。
「それなら私達六人は均等に七万エルズ、ジェイドさんは八万エルズでどうですか?」
「賛成」「はい」「それでいいよ!」
私が提案したらみんながそれを支持してくれた。
「本当にいいのかよ?そこまで言うなら貰っておくけど、このままじゃ俺の気が収まらないから今晩の飯は俺に奢らせてくれ」
「でもラティーシアさんがご飯を作ってると思いますよ」
「それならラティーシアの所で俺が奢るよ」
それでみんな納得したので、リフィナに頼んで報酬を分配してもらった。
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