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冒険者
攫われた姫
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宿に着くといつもと様子が違う事に気付く。
「お母さん、何か変じゃない?」
「ええ。いつもと様子が違うわ」
見たところ変化はない様に見えるが、何処となく様子がおかしいのだ。
扉を静かに開ける。鍵は掛かっていない。
中は真っ暗だ。こんな事は今まで一度も無かった。
「まさか既にロザリアが?」
「ラティーシアさん!いるー?」
芽依は食堂の方に向かいながら大声で呼びかける。周囲を警戒して剣の柄に手を掛けていた。
私は光の球を出して天井近くに放り投げる。
暗くて見えなかったが、壁には血糊がベッタリと付いていて、テーブルの幾つかは破壊されていた。
「これは……姫様の血だ」
「わかるの?」
「我々は匂いに敏感なのだ。個人の匂いの違いを嗅ぎ分けることが出来る」
そう言いながらイシュリアは俯き顔を曇らせる。
「私が姫様を保護していればこんな事にはならなかったのに……」
「そんな事を後悔したって何にもならないよ!ラティーシアさんを探さないと!」
「あ、ああ。そうだな」
芽依に叱咤されて顔を上げるイシュリア。
「探す方法はあるのか?」
「匂いである程度は探せるかもしれないが、その能力も日中はかなり制限されてしまう。ロザリアめ……それを見越して昼間に姫様を攫ったのか」
イシュリアはどうすればラティーシアを見つけられるか必死に考えている。
「ラティーシアさんを攫った理由は何かしら?」
「新たな女王として……いや、ヴァンパイアソーンを従えるためか」
「どういう事?」
「ヴァンパイアソーンは王家の血に従順だと聞いた事がある。かつてミルドソールに根付かせる時に女王陛下が血を与えて制御したと……」
「同じ事をするつもりなのね。ヴァンパイアソーンの特徴を教えて」
「日の光に弱い為地下に植えられている筈だ。まだ根付いていないとして、血液を供給し続けなければすぐに枯れてしまうだろう」
血液を奪っていたのはその為として、根付かせるための場所が必要な筈だ。
「ジェイドさんはこの街に地下道がある事は知ってますか?」
「ああ、住人の避難用の地下通路がいくつもあるな。他にもお偉方が人目につかない様に移動する時に使う為のものとか、結構穴だらけだぜ?」
「普段使わない通路とか知りませんか?」
ジェイドは腕を組んで考えている。
「血が集まりそうな所ってありませんか?」
「血が集まるって、そんな都合の良いところがあるわけ……いや、あるぞ。南の処刑場だ」
この数日で駐屯兵団の内乱処理の為に大量に処刑が行われたらしい。
「あそこの地下にも通路があった筈だ」
「ではそこを探してみましょう。近くに行けば匂いも分かりやすくなりますよね?」
「勿論だ」
すぐに行動を開始しよう。
「これはもう俺達だけじゃ手に負えないかも知れないな。ギルドに応援を貰おう。リンとミラで連絡に行ってもらえるか?」
「はい!」「分かりました」
私達はリンとミラと別れて南の処刑場に向かう。
「イシュリアさんの仲間の人達に連絡はつきますか?」
「今は無理だ。しかしこちらにきてもらう事は出来る」
集合を促す為の匂いを出す袋があるらしい。刑場の近くに来たら使ってもらう。
「あとは相手方の戦力等、手掛かりになるものはありませんか?」
走りながらイシュリアに聞く。
「そうだな……ロザリアの派閥の生き残りなら、確認できている限りで六人。どれも私以上の実力者だ」
ロザリアを含めてヴァンパイアが七人はいる可能性があるという事か。
「応援を要請して正解でしたね」
「ああ。俺だけだったらもう手を引いちまってるけどな」
「やめますか?」
「馬鹿言え。ハル達が行くのに俺だけ帰れるかよ」
ジェイドは鼻で笑いながら言ってくる。
「それに土地勘がある奴がいた方がいいんだろ?」
「はい。宜しくお願いします」
刑場の近くに来たのでイシュリアが匂い袋を使い仲間を呼ぶと、すぐに集まってきた。路地で会った二人のみだ。
イシュリアが事情を説明し、彼女達にも探索に加わってもらう事になった。
「お母さん、何か変じゃない?」
「ええ。いつもと様子が違うわ」
見たところ変化はない様に見えるが、何処となく様子がおかしいのだ。
扉を静かに開ける。鍵は掛かっていない。
中は真っ暗だ。こんな事は今まで一度も無かった。
「まさか既にロザリアが?」
「ラティーシアさん!いるー?」
芽依は食堂の方に向かいながら大声で呼びかける。周囲を警戒して剣の柄に手を掛けていた。
私は光の球を出して天井近くに放り投げる。
暗くて見えなかったが、壁には血糊がベッタリと付いていて、テーブルの幾つかは破壊されていた。
「これは……姫様の血だ」
「わかるの?」
「我々は匂いに敏感なのだ。個人の匂いの違いを嗅ぎ分けることが出来る」
そう言いながらイシュリアは俯き顔を曇らせる。
「私が姫様を保護していればこんな事にはならなかったのに……」
「そんな事を後悔したって何にもならないよ!ラティーシアさんを探さないと!」
「あ、ああ。そうだな」
芽依に叱咤されて顔を上げるイシュリア。
「探す方法はあるのか?」
「匂いである程度は探せるかもしれないが、その能力も日中はかなり制限されてしまう。ロザリアめ……それを見越して昼間に姫様を攫ったのか」
イシュリアはどうすればラティーシアを見つけられるか必死に考えている。
「ラティーシアさんを攫った理由は何かしら?」
「新たな女王として……いや、ヴァンパイアソーンを従えるためか」
「どういう事?」
「ヴァンパイアソーンは王家の血に従順だと聞いた事がある。かつてミルドソールに根付かせる時に女王陛下が血を与えて制御したと……」
「同じ事をするつもりなのね。ヴァンパイアソーンの特徴を教えて」
「日の光に弱い為地下に植えられている筈だ。まだ根付いていないとして、血液を供給し続けなければすぐに枯れてしまうだろう」
血液を奪っていたのはその為として、根付かせるための場所が必要な筈だ。
「ジェイドさんはこの街に地下道がある事は知ってますか?」
「ああ、住人の避難用の地下通路がいくつもあるな。他にもお偉方が人目につかない様に移動する時に使う為のものとか、結構穴だらけだぜ?」
「普段使わない通路とか知りませんか?」
ジェイドは腕を組んで考えている。
「血が集まりそうな所ってありませんか?」
「血が集まるって、そんな都合の良いところがあるわけ……いや、あるぞ。南の処刑場だ」
この数日で駐屯兵団の内乱処理の為に大量に処刑が行われたらしい。
「あそこの地下にも通路があった筈だ」
「ではそこを探してみましょう。近くに行けば匂いも分かりやすくなりますよね?」
「勿論だ」
すぐに行動を開始しよう。
「これはもう俺達だけじゃ手に負えないかも知れないな。ギルドに応援を貰おう。リンとミラで連絡に行ってもらえるか?」
「はい!」「分かりました」
私達はリンとミラと別れて南の処刑場に向かう。
「イシュリアさんの仲間の人達に連絡はつきますか?」
「今は無理だ。しかしこちらにきてもらう事は出来る」
集合を促す為の匂いを出す袋があるらしい。刑場の近くに来たら使ってもらう。
「あとは相手方の戦力等、手掛かりになるものはありませんか?」
走りながらイシュリアに聞く。
「そうだな……ロザリアの派閥の生き残りなら、確認できている限りで六人。どれも私以上の実力者だ」
ロザリアを含めてヴァンパイアが七人はいる可能性があるという事か。
「応援を要請して正解でしたね」
「ああ。俺だけだったらもう手を引いちまってるけどな」
「やめますか?」
「馬鹿言え。ハル達が行くのに俺だけ帰れるかよ」
ジェイドは鼻で笑いながら言ってくる。
「それに土地勘がある奴がいた方がいいんだろ?」
「はい。宜しくお願いします」
刑場の近くに来たのでイシュリアが匂い袋を使い仲間を呼ぶと、すぐに集まってきた。路地で会った二人のみだ。
イシュリアが事情を説明し、彼女達にも探索に加わってもらう事になった。
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