181 / 453
冒険者
吸血樹
しおりを挟む
私はイシュリアのそばに残る事にしてエレには他の皆を連れてきてもらう事にする。
エレはすぐに仲間達を連れて戻ってきた。
残る二方向は取り逃してしまったそうで、私達を探していたらしい。
私はイシュリアを紹介して全員で話を聞く。
「ちょっと待て、ミルドソールって言ったか?と言う事は君はヴァンパイアなのか?」
イシュリアの話を遮ってジェイドが聞く。
「そうだ」
私と芽依とエレ以外の全員が距離を取る。
ヴァンパイアというのは吸血鬼……?
人の血を吸ったり昼間は棺桶で眠っていたりニンニクが嫌いだったりするあの吸血鬼かしら?
「昼間に出歩いていて大丈夫なの?」
「よく他の種族には誤解されがちだが、私達ヴァンパイアは日中は能力が大幅に制限されるだけで日に当たっても灰になったりはしない」
「でも血を吸う為に人を襲うだろ?」
「確かに生き物から血を貰うのが一番効率が良いが、普通に食事をしても生きていける。君達は我々を誤解している」
どうやら本物のヴァンパイアと私やジェイド達の知っているものとは随分違う様だ。
「じゃあ人に噛み付くことでヴァンパイアに変えるというのは?」
「普通に噛んでも相手をヴァンパイアにする事はない。眷属にする場合は自身の血を相手の体内に送り込むのだ」
ジェイドの質問にイシュリアは淡々と答えていく。
「俺達の認識が間違っている事はよく分かった。しかし大体の人間の街では、ヴァンパイアは害のある者として扱われている。冒険者ギルドで討伐報酬が出るくらいだ」
「だから君達に捕まる訳にはいかなかったのだ。私にはまだやらなければならない事がある」
イシュリアの決意は堅い。
「ジェイドさんはイシュリアさんを討伐して報酬をもらうの?」
芽依がジェイドに聞く。
「俺はこの街の変死事件を解決したいだけだぜ。犯人じゃないなら戦うつもりはない」
「セロさん達は?」
「俺達もそんなつもりはないよ」
「じゃあ大丈夫だね。イシュリアさんは協力者。それだけだよ」
芽依はニコリと笑いながら言った。
変な蟠りが出来る前にスッキリさせてくれて助かるわ。
「それでは話を聞かせてもらいましょう」
「分かった」
イシュリアは自分達がミルドソールから持ち出されたヴァンパイアソーンを追っている事を説明する。
ヴァンパイアソーンとは生き物の血を吸って実をつける植物で、その実は緊急時の栄養補給に使われていた。
ミルドソールに一株だけ生えていたものを国が滅ぶ前に何者かが運び出したらしい。
「あれはミルドソールで管理されていたから無害だったが、こんな所に植えたら大変な事になる」
「どうなるんだ?」
「血を求めてどこまでも根を伸ばして人を襲う様になる」
それは大変だ。
「干からびて発見された遺体はヴァンパイアソーンにやられたの?」
「あれは血を摂る為の道具を使ったのだろう。ミルドソールでヴァンパイアソーンを管理していた時には自分達の血をその道具で吸い上げて与えていた」
自分達の血を少しずつ抜いて非常時の食料を生産していたらしい。
道具は指輪の形をしており、対象を傷つける事なく吸血出来る物だという。指輪は《ストレージ》の魔法と連動していて吸い取った血液を溜めておく事ができる。
つまり所持している者を探すのはとても難しいと。
「なぜヴァンパイアソーンを人間の街に根付かせようとするの?」
「この地を第二のミルドソールにしようとしているのだろう。ここを選んだのは恐らく……」
「ラティーシアね?」
「そうだ」
彼女を新しい女王に仕立てようとしているのだろう。本人にそのつもりはないだろうに。
「あなたの仲間にロザリアという女性はいる?」
「いや、陛下の腹心で姫様の教育係だったロザリアなら、ルドガイアとの戦で亡くなったと聞いているが」
それが突然現れた。不自然ね。
「昨日ロザリアという女性がラティーシアの所に来ていたわ。彼女がヴァンパイアソーンを持ち出した犯人ではないかしら?」
「可能性は高い……何処にいるかは分からないか?」
「私達は知らないけど、ラティーシアさんなら何か知っているかもしれないわね」
私達は『白い蝙蝠亭』に聞きに行く事にした。
エレはすぐに仲間達を連れて戻ってきた。
残る二方向は取り逃してしまったそうで、私達を探していたらしい。
私はイシュリアを紹介して全員で話を聞く。
「ちょっと待て、ミルドソールって言ったか?と言う事は君はヴァンパイアなのか?」
イシュリアの話を遮ってジェイドが聞く。
「そうだ」
私と芽依とエレ以外の全員が距離を取る。
ヴァンパイアというのは吸血鬼……?
人の血を吸ったり昼間は棺桶で眠っていたりニンニクが嫌いだったりするあの吸血鬼かしら?
「昼間に出歩いていて大丈夫なの?」
「よく他の種族には誤解されがちだが、私達ヴァンパイアは日中は能力が大幅に制限されるだけで日に当たっても灰になったりはしない」
「でも血を吸う為に人を襲うだろ?」
「確かに生き物から血を貰うのが一番効率が良いが、普通に食事をしても生きていける。君達は我々を誤解している」
どうやら本物のヴァンパイアと私やジェイド達の知っているものとは随分違う様だ。
「じゃあ人に噛み付くことでヴァンパイアに変えるというのは?」
「普通に噛んでも相手をヴァンパイアにする事はない。眷属にする場合は自身の血を相手の体内に送り込むのだ」
ジェイドの質問にイシュリアは淡々と答えていく。
「俺達の認識が間違っている事はよく分かった。しかし大体の人間の街では、ヴァンパイアは害のある者として扱われている。冒険者ギルドで討伐報酬が出るくらいだ」
「だから君達に捕まる訳にはいかなかったのだ。私にはまだやらなければならない事がある」
イシュリアの決意は堅い。
「ジェイドさんはイシュリアさんを討伐して報酬をもらうの?」
芽依がジェイドに聞く。
「俺はこの街の変死事件を解決したいだけだぜ。犯人じゃないなら戦うつもりはない」
「セロさん達は?」
「俺達もそんなつもりはないよ」
「じゃあ大丈夫だね。イシュリアさんは協力者。それだけだよ」
芽依はニコリと笑いながら言った。
変な蟠りが出来る前にスッキリさせてくれて助かるわ。
「それでは話を聞かせてもらいましょう」
「分かった」
イシュリアは自分達がミルドソールから持ち出されたヴァンパイアソーンを追っている事を説明する。
ヴァンパイアソーンとは生き物の血を吸って実をつける植物で、その実は緊急時の栄養補給に使われていた。
ミルドソールに一株だけ生えていたものを国が滅ぶ前に何者かが運び出したらしい。
「あれはミルドソールで管理されていたから無害だったが、こんな所に植えたら大変な事になる」
「どうなるんだ?」
「血を求めてどこまでも根を伸ばして人を襲う様になる」
それは大変だ。
「干からびて発見された遺体はヴァンパイアソーンにやられたの?」
「あれは血を摂る為の道具を使ったのだろう。ミルドソールでヴァンパイアソーンを管理していた時には自分達の血をその道具で吸い上げて与えていた」
自分達の血を少しずつ抜いて非常時の食料を生産していたらしい。
道具は指輪の形をしており、対象を傷つける事なく吸血出来る物だという。指輪は《ストレージ》の魔法と連動していて吸い取った血液を溜めておく事ができる。
つまり所持している者を探すのはとても難しいと。
「なぜヴァンパイアソーンを人間の街に根付かせようとするの?」
「この地を第二のミルドソールにしようとしているのだろう。ここを選んだのは恐らく……」
「ラティーシアね?」
「そうだ」
彼女を新しい女王に仕立てようとしているのだろう。本人にそのつもりはないだろうに。
「あなたの仲間にロザリアという女性はいる?」
「いや、陛下の腹心で姫様の教育係だったロザリアなら、ルドガイアとの戦で亡くなったと聞いているが」
それが突然現れた。不自然ね。
「昨日ロザリアという女性がラティーシアの所に来ていたわ。彼女がヴァンパイアソーンを持ち出した犯人ではないかしら?」
「可能性は高い……何処にいるかは分からないか?」
「私達は知らないけど、ラティーシアさんなら何か知っているかもしれないわね」
私達は『白い蝙蝠亭』に聞きに行く事にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
433
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる