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冒険者
交戦
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「ハル様、私が前に出ます!」
エレがウォーハンマーを構えて相手との距離を詰める。
「待ちなさい。危険だわ」
「大丈夫です!」
その自信はバルドルを呆気なく降参させた所から来るのか、物怖じする事なく前に出ていく。
「……ドラコニアンか!」
そう言うとエレに飛び掛かって来た。
声は女性。武器は持っておらず、長く伸びた爪で喉を狙っている。
エレは迎え討とうとハンマーを振りかぶるが間に合っていない。
僅かでも気を逸らせばエレでも反撃が出来るだろう。
エレの真後ろで手の中で集めた光を放つ。
驚いた女性は顔を手で覆って攻撃をやめた。そこにエレのフルスイングが胴体に突き刺さる。
グシャリと嫌な音を立てて弾け飛んでいく女性は壁にぶつかり、二転三転と転がっていき、うつ伏せに倒れたまま動かなくなった。
凄まじい威力だ。しかしあれでは即死ではないだろうか?
駆け寄って様子を見る。
……呼吸をしている。まだ生きている様だ。しかし左脇腹の辺りが陥没しかなり酷い状態だ。既に意識は無く口から血を吐き出している。
このままでは直ぐに死んでしまうだろう。
《過剰分泌》させた泉の水を生成して女性に掛けるとすぐに傷は癒えた。
「うぅ……ぐっ……」
女性は意識は戻らず呻いている。
フードは既に外れており、銀の髪の女性だと分かる。髪の色の印象が強いせいか、ロザリアに似ている気がする。
「やりました!」
「エレ、あなたは加減というものを知らなくては駄目ね。でも良くやったわ」
一瞬怒られると思ったのだろう、表情を曇らせたが、最後の言葉を聞いて笑顔になる。
「次は私の指示を聞いて頂戴ね」
「はい!」
元気に返事をするエレ。
「……ここは?」
「先程のやり取りを覚えていますか?」
意識を取り戻したので問いかけると、口をつぐんで横を向く女性。
逃げようという気はない様だ。
「私は冒険者のハル。こっちはエレよ。あなたの名前は?」
「ルドガイアの犬め。お前達に名乗る名は無い。殺せ」
私達を睨み吐き捨てる様に言う。
「私はルドガイアとは無関係です」
「ではなぜドラコニアンと共にいる?」
「この子は私が引き取ったんです」
「私はあの国の侵略行為が嫌で逃げてきました。たまたまハル様に拾っていただいたんです」
「偽物の竜め……デタラメを言うな」
信用してくれそうにない。
どうしたものか……そうだ、一つ試してみたい事がある。ただの勘違いだったら申し訳ないが。
「あなたはラティーシアの命で動いているの?何も言わないなら彼女に直接聞くしかないわね。多少手荒でも……」
「姫様は関係ない!」
しまった、と口をつぐむがもう遅い。
やはり同郷か。
しかしラティーシアはお姫様だったのか。
「私達はラティーシアさんの所でお世話になっているの。あなたが話してくれないのなら彼女にも話を聞かせてもらう事になるわ。勿論手荒な事はしないけど」
事件に関わりがなければの話だが。
「分かった、話す」
彼女は力なく項垂れて小さな声で告げた。
「私はイシュリア。ルドガイアに滅ぼされたミルドソールという国の出身だ」
「ラティーシアさんと同じ国なのですね?」
「そう。ラティーシア様はミルドソールの第一王女。女王陛下はルドガイアとの戦で命を落とされ、ラティーシア様を国の外へと逃した。陛下の遺言で、ラティーシア様は敵討ちなどせず、静かに穏やかに暮らすようにと仰っていた。だからこそ我々が防がねばならないのだ……」
ラティーシアの生い立ちは大体分かった。次に気になる事を聞いてみる。
「あなた達が防がなければならないものとは何かしら?」
「ヴァンパイアソーンという植物の復活阻止だ。この街のどこかにある筈なのだ。我々はそれを探している」
聞いたことのない植物。危険なものだと言うのは彼女の口ぶりで分かる。
「私達は街の治安を守るために行動しているの。協力するから知っている事を話して」
「……分かった」
仲間を集めて全員に話を聞かせたいと言うとイシュリアは了解してくれた。
エレがウォーハンマーを構えて相手との距離を詰める。
「待ちなさい。危険だわ」
「大丈夫です!」
その自信はバルドルを呆気なく降参させた所から来るのか、物怖じする事なく前に出ていく。
「……ドラコニアンか!」
そう言うとエレに飛び掛かって来た。
声は女性。武器は持っておらず、長く伸びた爪で喉を狙っている。
エレは迎え討とうとハンマーを振りかぶるが間に合っていない。
僅かでも気を逸らせばエレでも反撃が出来るだろう。
エレの真後ろで手の中で集めた光を放つ。
驚いた女性は顔を手で覆って攻撃をやめた。そこにエレのフルスイングが胴体に突き刺さる。
グシャリと嫌な音を立てて弾け飛んでいく女性は壁にぶつかり、二転三転と転がっていき、うつ伏せに倒れたまま動かなくなった。
凄まじい威力だ。しかしあれでは即死ではないだろうか?
駆け寄って様子を見る。
……呼吸をしている。まだ生きている様だ。しかし左脇腹の辺りが陥没しかなり酷い状態だ。既に意識は無く口から血を吐き出している。
このままでは直ぐに死んでしまうだろう。
《過剰分泌》させた泉の水を生成して女性に掛けるとすぐに傷は癒えた。
「うぅ……ぐっ……」
女性は意識は戻らず呻いている。
フードは既に外れており、銀の髪の女性だと分かる。髪の色の印象が強いせいか、ロザリアに似ている気がする。
「やりました!」
「エレ、あなたは加減というものを知らなくては駄目ね。でも良くやったわ」
一瞬怒られると思ったのだろう、表情を曇らせたが、最後の言葉を聞いて笑顔になる。
「次は私の指示を聞いて頂戴ね」
「はい!」
元気に返事をするエレ。
「……ここは?」
「先程のやり取りを覚えていますか?」
意識を取り戻したので問いかけると、口をつぐんで横を向く女性。
逃げようという気はない様だ。
「私は冒険者のハル。こっちはエレよ。あなたの名前は?」
「ルドガイアの犬め。お前達に名乗る名は無い。殺せ」
私達を睨み吐き捨てる様に言う。
「私はルドガイアとは無関係です」
「ではなぜドラコニアンと共にいる?」
「この子は私が引き取ったんです」
「私はあの国の侵略行為が嫌で逃げてきました。たまたまハル様に拾っていただいたんです」
「偽物の竜め……デタラメを言うな」
信用してくれそうにない。
どうしたものか……そうだ、一つ試してみたい事がある。ただの勘違いだったら申し訳ないが。
「あなたはラティーシアの命で動いているの?何も言わないなら彼女に直接聞くしかないわね。多少手荒でも……」
「姫様は関係ない!」
しまった、と口をつぐむがもう遅い。
やはり同郷か。
しかしラティーシアはお姫様だったのか。
「私達はラティーシアさんの所でお世話になっているの。あなたが話してくれないのなら彼女にも話を聞かせてもらう事になるわ。勿論手荒な事はしないけど」
事件に関わりがなければの話だが。
「分かった、話す」
彼女は力なく項垂れて小さな声で告げた。
「私はイシュリア。ルドガイアに滅ぼされたミルドソールという国の出身だ」
「ラティーシアさんと同じ国なのですね?」
「そう。ラティーシア様はミルドソールの第一王女。女王陛下はルドガイアとの戦で命を落とされ、ラティーシア様を国の外へと逃した。陛下の遺言で、ラティーシア様は敵討ちなどせず、静かに穏やかに暮らすようにと仰っていた。だからこそ我々が防がねばならないのだ……」
ラティーシアの生い立ちは大体分かった。次に気になる事を聞いてみる。
「あなた達が防がなければならないものとは何かしら?」
「ヴァンパイアソーンという植物の復活阻止だ。この街のどこかにある筈なのだ。我々はそれを探している」
聞いたことのない植物。危険なものだと言うのは彼女の口ぶりで分かる。
「私達は街の治安を守るために行動しているの。協力するから知っている事を話して」
「……分かった」
仲間を集めて全員に話を聞かせたいと言うとイシュリアは了解してくれた。
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