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冒険者
冒険者登録
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彼女が手にしていたハンマーはウォーハンマーといって、歴とした武器らしい。
てっきり鍛治の道具かと思っていたけど、よく考えたら店に置いておくわけがない。
その他に小剣を一本。籠手と鉄で補強されたブーツを購入した。
「ハル様、買っていただきありがとうございます。大事に使います」
「それはあなたと私達の命を守る為の物だから、遠慮せずに使っていいのよ」
「はい!」
装備も整って、冒険者ギルドに登録に行く。
ホールに入ると今日はバルドルが受付に立っていた。
「おはようございますバルドルさん。彼女の冒険者登録とパーティへの加入手続きをしたいんですけど」
「おう、セロか。そっちの娘は初めてだな、俺はコイツらの担当のバルドルってんだ。よろしくな」
「エレネージュです。よろしくお願いします」
礼儀正しくお辞儀をするエル。
バルドルの顔を緩む。
「お母さん、バルドルさんが気持ち悪い顔してるよ」
「気持ち悪いとはなんだよ!美人を見れば大抵の男はこんな顔になるもんだ」
「セロさんはそんな気持ち悪い顔しないよ?」
そう言われて返答に困って頭を掻くセロ。
「それよりも、手続きをお願いします。バルドルさん」
「お、おう」
笑顔で話しかけたらバルドルは顔を引き攣らせながら書類を取りに行った。
「私何か変でしたか?」
心配そうに聞いてくるエレ。
「大丈夫よ。好感を持たれたのだと思っておいて。でも油断はしては駄目よ」
「はい」
そんなやり取りをしながらエルの着ているシャツのボタンを止め直しておく。
お辞儀をした時、バルドルの目線はエルの胸元にいっていた。
男の習性みたいなものだから気にする必要はないだろうけど、エレは人間の事をよく知らないのだから色々教えておく必要があるだろう。
書類の手続きを終えて、次は訓練場で戦闘力の判定をする事に。相手はバルドルだ。
「よし、俺は木剣でやるが、お前は自前の武器でかかって来い」
「いいんですか?」
「素人なんだろ?それくらいのハンデはやるよ。ただし、俺が認めなければ冒険者にはなれんぞ。全力で来い」
「はい!よろしくお願いします!」
元気よく返事をしてウォーハンマーを構えるエレ。
「おい、ちょっと待て」
「はい?」
「そいつぁ鉄製だよな?」
「はい、多分」
「何で片手で構えてるんだ?」
「何でと言われても……構え方を知らないので?」
エルは両手持ちするウォーハンマーをナイフでも構えるかの様に片手で持っていた。
「えっ……!まさか不合格ですか?」
「いや、そうじゃない。……まあいい続けるぞ」
何だか調子が狂ってしまうわね。
しかしバルドルは大丈夫かしら?
エレが全力で攻撃したら木剣なんかでは受け止められないと思うけど。
「行きます!」
「おう、来い!」
ウォーハンマーを振りかぶってパタパタと走っていくエレ。
その様子を見てニヤリとするバルドル。
「えーい!」
振り下ろされるウォーハンマー。
バルドルは余裕を持って躱せると踏んだのだろうが、実際は違った。
彼の身体スレスレを重たいハンマーが掠めて地面に突き刺さる。
ズシン、と大きな音が響き渡り、私達が反動で飛び上がりそうな程の威力だった。
訓練場の地面は踏み固められた土だが、大きく陥没してしまっている。バルドルはそこで尻もちをついていた。
「はずしちゃいました……次は当てます!」
「ちょっ!?待て待て待て!!」
「はい?」
今度は野球のバットの様に構えていたエレが首を傾げて聞いている。
「合格、合格だ!」
「え?いいんですか?まだ一発も当ててないんですけど」
「そんなもん食らったら月まで飛んで行っちまう。俺はまだ死にたくねぇ」
流石のバルドルも強がりは言わなかった。
「やって!ハル様、合格しました!」
ウォーハンマーをグルグル振り回しながら喜ぶエレ。
こうして彼女は無事に冒険者になる事が出来た。
てっきり鍛治の道具かと思っていたけど、よく考えたら店に置いておくわけがない。
その他に小剣を一本。籠手と鉄で補強されたブーツを購入した。
「ハル様、買っていただきありがとうございます。大事に使います」
「それはあなたと私達の命を守る為の物だから、遠慮せずに使っていいのよ」
「はい!」
装備も整って、冒険者ギルドに登録に行く。
ホールに入ると今日はバルドルが受付に立っていた。
「おはようございますバルドルさん。彼女の冒険者登録とパーティへの加入手続きをしたいんですけど」
「おう、セロか。そっちの娘は初めてだな、俺はコイツらの担当のバルドルってんだ。よろしくな」
「エレネージュです。よろしくお願いします」
礼儀正しくお辞儀をするエル。
バルドルの顔を緩む。
「お母さん、バルドルさんが気持ち悪い顔してるよ」
「気持ち悪いとはなんだよ!美人を見れば大抵の男はこんな顔になるもんだ」
「セロさんはそんな気持ち悪い顔しないよ?」
そう言われて返答に困って頭を掻くセロ。
「それよりも、手続きをお願いします。バルドルさん」
「お、おう」
笑顔で話しかけたらバルドルは顔を引き攣らせながら書類を取りに行った。
「私何か変でしたか?」
心配そうに聞いてくるエレ。
「大丈夫よ。好感を持たれたのだと思っておいて。でも油断はしては駄目よ」
「はい」
そんなやり取りをしながらエルの着ているシャツのボタンを止め直しておく。
お辞儀をした時、バルドルの目線はエルの胸元にいっていた。
男の習性みたいなものだから気にする必要はないだろうけど、エレは人間の事をよく知らないのだから色々教えておく必要があるだろう。
書類の手続きを終えて、次は訓練場で戦闘力の判定をする事に。相手はバルドルだ。
「よし、俺は木剣でやるが、お前は自前の武器でかかって来い」
「いいんですか?」
「素人なんだろ?それくらいのハンデはやるよ。ただし、俺が認めなければ冒険者にはなれんぞ。全力で来い」
「はい!よろしくお願いします!」
元気よく返事をしてウォーハンマーを構えるエレ。
「おい、ちょっと待て」
「はい?」
「そいつぁ鉄製だよな?」
「はい、多分」
「何で片手で構えてるんだ?」
「何でと言われても……構え方を知らないので?」
エルは両手持ちするウォーハンマーをナイフでも構えるかの様に片手で持っていた。
「えっ……!まさか不合格ですか?」
「いや、そうじゃない。……まあいい続けるぞ」
何だか調子が狂ってしまうわね。
しかしバルドルは大丈夫かしら?
エレが全力で攻撃したら木剣なんかでは受け止められないと思うけど。
「行きます!」
「おう、来い!」
ウォーハンマーを振りかぶってパタパタと走っていくエレ。
その様子を見てニヤリとするバルドル。
「えーい!」
振り下ろされるウォーハンマー。
バルドルは余裕を持って躱せると踏んだのだろうが、実際は違った。
彼の身体スレスレを重たいハンマーが掠めて地面に突き刺さる。
ズシン、と大きな音が響き渡り、私達が反動で飛び上がりそうな程の威力だった。
訓練場の地面は踏み固められた土だが、大きく陥没してしまっている。バルドルはそこで尻もちをついていた。
「はずしちゃいました……次は当てます!」
「ちょっ!?待て待て待て!!」
「はい?」
今度は野球のバットの様に構えていたエレが首を傾げて聞いている。
「合格、合格だ!」
「え?いいんですか?まだ一発も当ててないんですけど」
「そんなもん食らったら月まで飛んで行っちまう。俺はまだ死にたくねぇ」
流石のバルドルも強がりは言わなかった。
「やって!ハル様、合格しました!」
ウォーハンマーをグルグル振り回しながら喜ぶエレ。
こうして彼女は無事に冒険者になる事が出来た。
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