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冒険者
アルザハーン謁見
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再会の挨拶を終えて、改めてウルゼイド国王アルザハーンと謁見する。
「使者殿の前で大変失礼した。改めて名と用件を聞こう」
「はい。お初にお目にかかります、私はライアッド王国ソリムド伯爵配下の騎士、フリッツ・ヴィンヤードと申します」
「同じく、エドワード・アレクシアです」
二人は跪いて名を名乗る。
「本日はライアッド王国と不可侵協定を結んでいただきたく参りました。こちらにバークス・ソリムド伯爵の書状を持参しております」
配下の騎士が書状を預かりアルザハーンが確認する。
「なるほど。ソリムド伯爵は我々ウルゼイドが侵攻してくるとお考えなのだな」
「我々はあなた方と商取引はあっても信頼関係はありません。そこで伯爵はウルゼイド国王と会談の席を設けたいと考えております」
アルザハーンの言葉にエドワードが答える。
しかし王国の一伯爵と相手国の国王との会談では釣り合いが合わないのではないだろうか?ウルゼイドとアルザハーンに対しては無礼ともとれる。
だがアルザハーンは懐の広い男だ。この程度では動じない。
「いいだろう。ソリムド伯爵との会談、互いの民の平穏の為に行おうではないか」
「ありがとうございます。日時については日を改めてで宜しいですか?」
「そちらに併せよう」
ウルゼイドが完全に譲歩する形になっている。
「ただ一つだけ理解してもらいたい。今回の申し出を受けるのは、ライアッド王国にハル様とメイ様がおられるからである。お二人の存在がなければこの様な無礼は到底許し難い。その事を伯爵にはくれぐれもよく伝える様に」
「ありがとうございます」
私達がいる為にアルザハーンには迷惑を掛けてしまっているわね。
「今日はこちらにご宿泊してください」
「ありがとう」
王城に止めてもらう事になる。
アルザハーンは国賓扱いで歓待したいと言ってくれていたが、隣国の使者として扱って貰わなくてはいけない。
彼の申し出を丁重に断って普通に扱ってもらった。
「お母さん、アルザハーンおじさんに物凄く迷惑を掛けちゃったんじゃない?」
「そうね。ソリムド伯爵側の条件を聞いておくべきだったわ」
私達五人は客室で話をする。
「ウルゼイドよりも上だということを示したいのだろうね。何だか申し訳ない……」
「セロさんが謝る必要はないわ。ただ、ソリムド伯爵とライアッド王国の外交能力が分かった気がするわ」
「ハルさん達が居なかったら話にもならなかったんじゃない?」
「そうですね……ハルさん達の価値をよく理解して交渉しているのなら外交手腕としては優れているともとれますが」
リンとミラも不満そうだ。
無論私達もだ。
「アルザハーンには何かお礼を考えなくちゃいけないわね」
「うん」
今度リクエストを聞いておこう。
☆★☆★☆★☆★
次の日にはセイランに戻り伯爵に報告。
日程の調整を行ってウルゼイドの間を何回か往復する。
五日後、無事に会談の準備が整った。
打ち合わせの結果、伯爵がウルゼイドに出向くことになった。
会談ではなく謁見の形にする事で、互いの合意を得ることが出来た。
問題は伯爵をトコヤミに乗せる所だろうか。
「実は、初めて乗った時は気を失いかけていた」
フリッツはトコヤミに脅されて萎縮していたのではなく、竜の背に乗って空を飛ぶのが恐ろしかっただけらしい。
「普通の人間はこれには十分恐ろしい体験だ」
エドワードもだったみたいだ。
「でも慣れちゃえば平気でしょ?」
「そうだが、伯爵はどうだろうか」
芽依とエドワードはよく言い争いをしていたけど、何だかんだで仲良くなっている。この子の特技だ。
当日、伯爵はフリッツ達の案内でトコヤミの背中に乗る。
伯爵以外には側近の騎士四名と兵士が二十名。
全員数日前の戦闘よりも緊張している様だった。
『大人しくしていれば直ぐに着く。我の背で粗相をしたら振り落とすからな。心しておけ』
トコヤミ、余計なことを言わないの。
「使者殿の前で大変失礼した。改めて名と用件を聞こう」
「はい。お初にお目にかかります、私はライアッド王国ソリムド伯爵配下の騎士、フリッツ・ヴィンヤードと申します」
「同じく、エドワード・アレクシアです」
二人は跪いて名を名乗る。
「本日はライアッド王国と不可侵協定を結んでいただきたく参りました。こちらにバークス・ソリムド伯爵の書状を持参しております」
配下の騎士が書状を預かりアルザハーンが確認する。
「なるほど。ソリムド伯爵は我々ウルゼイドが侵攻してくるとお考えなのだな」
「我々はあなた方と商取引はあっても信頼関係はありません。そこで伯爵はウルゼイド国王と会談の席を設けたいと考えております」
アルザハーンの言葉にエドワードが答える。
しかし王国の一伯爵と相手国の国王との会談では釣り合いが合わないのではないだろうか?ウルゼイドとアルザハーンに対しては無礼ともとれる。
だがアルザハーンは懐の広い男だ。この程度では動じない。
「いいだろう。ソリムド伯爵との会談、互いの民の平穏の為に行おうではないか」
「ありがとうございます。日時については日を改めてで宜しいですか?」
「そちらに併せよう」
ウルゼイドが完全に譲歩する形になっている。
「ただ一つだけ理解してもらいたい。今回の申し出を受けるのは、ライアッド王国にハル様とメイ様がおられるからである。お二人の存在がなければこの様な無礼は到底許し難い。その事を伯爵にはくれぐれもよく伝える様に」
「ありがとうございます」
私達がいる為にアルザハーンには迷惑を掛けてしまっているわね。
「今日はこちらにご宿泊してください」
「ありがとう」
王城に止めてもらう事になる。
アルザハーンは国賓扱いで歓待したいと言ってくれていたが、隣国の使者として扱って貰わなくてはいけない。
彼の申し出を丁重に断って普通に扱ってもらった。
「お母さん、アルザハーンおじさんに物凄く迷惑を掛けちゃったんじゃない?」
「そうね。ソリムド伯爵側の条件を聞いておくべきだったわ」
私達五人は客室で話をする。
「ウルゼイドよりも上だということを示したいのだろうね。何だか申し訳ない……」
「セロさんが謝る必要はないわ。ただ、ソリムド伯爵とライアッド王国の外交能力が分かった気がするわ」
「ハルさん達が居なかったら話にもならなかったんじゃない?」
「そうですね……ハルさん達の価値をよく理解して交渉しているのなら外交手腕としては優れているともとれますが」
リンとミラも不満そうだ。
無論私達もだ。
「アルザハーンには何かお礼を考えなくちゃいけないわね」
「うん」
今度リクエストを聞いておこう。
☆★☆★☆★☆★
次の日にはセイランに戻り伯爵に報告。
日程の調整を行ってウルゼイドの間を何回か往復する。
五日後、無事に会談の準備が整った。
打ち合わせの結果、伯爵がウルゼイドに出向くことになった。
会談ではなく謁見の形にする事で、互いの合意を得ることが出来た。
問題は伯爵をトコヤミに乗せる所だろうか。
「実は、初めて乗った時は気を失いかけていた」
フリッツはトコヤミに脅されて萎縮していたのではなく、竜の背に乗って空を飛ぶのが恐ろしかっただけらしい。
「普通の人間はこれには十分恐ろしい体験だ」
エドワードもだったみたいだ。
「でも慣れちゃえば平気でしょ?」
「そうだが、伯爵はどうだろうか」
芽依とエドワードはよく言い争いをしていたけど、何だかんだで仲良くなっている。この子の特技だ。
当日、伯爵はフリッツ達の案内でトコヤミの背中に乗る。
伯爵以外には側近の騎士四名と兵士が二十名。
全員数日前の戦闘よりも緊張している様だった。
『大人しくしていれば直ぐに着く。我の背で粗相をしたら振り落とすからな。心しておけ』
トコヤミ、余計なことを言わないの。
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